49話:第1王女と決闘その4
「何時でも魔法使いの戦い方は決まってます。【水龍の咆哮】」
空を飛ぶリリ王女の横ギリギリを通す形で放つ。観客席には障壁が張ってあるので、そこで霧散した。
「魔法使いの戦い方は中遠距離と決まってます。コロシアムの広さ程度なら空を飛ぼうが余裕で届きます」
それ故に魔法使いの倒し方は詠唱を完成する前に倒すのがセオリーだ。詠唱中は無防備になりやすい。だから、前衛の他に防衛する仲間がいて安心して詠唱が唱えられる。
だけど、1人だけでも騎士数百人〜数千人の戦力になる例外はいる。
それは宮廷魔法使いなどの選ばれし魔法使いか詠唱をしない無詠唱を出来る魔法使いに限られる。ラピスの場合は両方といえよう。
「ワザと外したわね」
「そんな事はない。様子見で放っただけですので」
「「……………」」
ガキン
無言のまま数秒見詰めた後、リリ王女の姿が消えラピスの前へ現れ大剣で斬り伏せられたと誰もが思った。
だが、ラピスは防いだ。杖の先端上に水の剣を形成させ、炎の大剣と交差させた。
「水の剣か。面白いものを作るわね」
「いえ、危なかったです。一瞬遅かったら首と胴体がサヨナラしてました」
本来なら炎に水は弱点のはずだが、ラピスが押され気味になってる。たまにだが相性が逆転する事がある。
例えば、炎属性の場合だと高温過ぎて逆に水を蒸発させてしまい水属性を無効化してしまう時がある。
今まさにそういう現象が起こってる。ラピスの水の剣が徐々に蒸発され短くなってきてる。
「ワタシの炎が水で止められるものですか」
「くっ!」
身長差があるからか?ステータスでは勝っていてもグイグイと力負けしてしまう。その代わりに経験は、前世を合わせて私(俺)の方が長い。
だから、一瞬の隙を見逃さない。もう勝負がついたと思った時が1番の隙が生じ易いもの。
「誰が水の剣と言いました?」
「?!」
炎の大剣を起点として水の剣らしき物体が、グニャリと90度曲がり切っ先がリリ王女の頬に直撃、そのまま真横へ吹き飛んだ。
「これは剣ではありません。水の鞭です」
リリ王女の様に実態のある剣に、そのまま纏わすなら曲がらずに力負けして押し潰されていた。
だが、ラピスは杖の先端に水を付着させ、水だけで構築させている鞭を曲がる方向を計算入れ見事にぶつけた訳だ。
「ぺっ、やるわね」
瞬時に炎の翼を生やして姿勢を正しから、くるんと地面に着地した。頬を強く打ったせいか、口内を少し切ったらしい。血を唾のように吐き出した。
「次は私からです。【泡爆弾】」
ラピスが杖を縦に回すとシャボン玉みたいな泡が次から次へと現れ、まるで意思がありようにリリ王女の周囲にだけ取り囲むように漂い浮かんでいる。
一見、普通のシャボン玉。触っても害はなさそうな見た目。だけど、これは魔法で生み出したもの。そんな単純な事ではないはずだとリリ王女は思ってるようで中々動こうとしない。
魔法で生み出してる以上、誰でも何かしらの仕掛けが必ずあると踏むのが常識。それはリリ王女も例外ではない。
「面妖な魔法を」
「来ないの?来ないなら、こっちから行くよ?」
パチン
ラピスが指を鳴らすと、リリ王女の近くにある1つのシャボン玉が割れた。それと連動するように次々と割れていく。
ドォォォォン
爆弾を思わせる様な衝撃波と音を生み出し、リリ王女を襲う。この衝撃波と音が厄介なもので、ただの回避や障壁を張っただけでは防げない。
特殊な防音壁の効果がある障壁を張らなければ、防げるものではない。まして、このコロシアム内では何処にいたって全部が範囲内。まして、衝撃波と音は人間が避けられる反応速度よりも速い。回避は不可能。
「ぐっ……………これしき」
「無理はしない方が良いですよ?」
爆音で鼓膜が破れ、平衡感覚を司る器官である三半規管を滅茶苦茶に揺さぶった。本当なら立っているのもやっとのはず。
「ハァハァ、こ…………………のぉ」
フラフラと剣を構え、私(俺)に向かって斬りかかって来るが、もう最早スローモーションみたいに遅すぎる。
魔法を使わなくても杖術で、杖の先端でつけば倒れるくらいにはリリ王女は限界であった。




