48話:第1王女と決闘その3
「あなたも展開しなさい」
「今やるところよ」
ラズリを手の平に乗せ、【変身】を発動させた。昨日見せたヒラヒラな魔法少女衣装に、手にはラピスの身長と同じ位の杖が握られている。
「杖?昨日は確か大剣だったはず。剣士なのに杖なんて使えるの?」
「杖武装、私の固有武装は使う属性によって武器が変化する」
杖武装の場合は、水属性となる。昨晩寝てる時に【睡眠学習】を発動しては、それぞれの武装を練習していた。
特に杖武装で水属性の制御の練習を努めた。水属性が一番汎用性が高く、回復も使える数少ない属性だ。
「そういえば、最後に炎属性を使ってたわね」
「無我夢中たったのでお恥ずかしい」
「まぁ良いわ。アタシを楽しめて頂ければね」
「善処します」
リリ王女が両手で持った大剣を構え走った。いや、少し宙に浮いてるように駆けてる。瞬時にラピスの距離を数mまで詰めた。
「いくわよ。【爆炎加速】、炎属性の加速魔法よ」
予想より早い!加速魔法なんて、風属性か光属性の専売特許みたいな魔法だ。それが攻撃特化みたいな炎属性が出来るなんて思いもしなかった。
「防げるかしら?はぁぁぁぁぁ【火炎剣】」
大剣を振り上げ、炎が纏った刃がラピスに襲い掛かると誰もが思ったが、そうならなかった。
「なっ!」
「【水障壁】、ふぅどうにか間に合った」
地面から勢い良く水が吹き出てラピスを囲い込むように壁を形成した。水の勢いで炎の刃は届かない。むしろ、リリ王女の方が水の勢いに負けて後退した。
「くっ!剣士じゃなかったの?」
「私は、魔法少女です。剣士ではありません」
剣士でも不得意であるが、魔法は使える者はいる。リリ王女もそれだと思ったのだろう。だが、今目の前で自分の剣を防ぐ程の水を生み出す事は、魔法が不得意な剣士では説明が出来ない。
「そうだったわ。ただの剣士にカイトが興味を抱く訳ないもの。ワタシも剣士じゃないのご存知?」
うん、知ってる。王族というだけで一般な職業に就けるはずはない。それは誰もが知ってる事。
「知らないです」
だが、敢えて知らないと答える。アテナが、こっそりと教えてくれた。暗黙のルールで、王族に質問されて知っていても知らないと答える事。
そうする事で上機嫌になりやすく、不敬にはならない対応の1つだと。
「そう、なら教えてあげる。ワタシの職業は姫騎士・炎なの。どう凄いでしょ」
「へぇー、凄いですね」
「今から姫騎士・炎の真の力を見せてあげるわ」
そうリリ王女が告げると背中に赤い羽根が生えて空中に浮かんで自由に飛んでいる。風属性で擬似的に浮かぶ事は多少訓練すれば、風属性に適正がある者ならば習得出来る。
だが、今リリ王女がやってるように飛ぶような事は出来ない。これが姫騎士・炎の実力を目にした瞬間である。
「飛行魔法だと!」
「馬鹿な!あり得ん」
「風魔法でも浮かぶ事が関の山だろ!」
ザワザワと観客席から驚きの声が響き渡る。でも、私(俺)からしたら何の驚きもない。何故なら私(俺)も違う属性でなら飛行魔法を行使出来るからだ。
「【炎龍の翼】、これを見せるとは思いませんでした」
【鑑定】を使用したところ、火・水・土・風の四台精霊の内、火属性の火精霊が憑依してる事が分かった。
憑依といってもこれは悪い事ではない。むしろ、祝福に近い。恐らく火に関する事柄ならリリ王女の味方になるはずだ。
「これは避けられるかしら?【炎龍の爪】」
炎を纏った飛ぶ斬撃。Bランク程度の魔物なら一撃で切り裂く程の威力を持ってる。だが、コントロールはそこまで良くなく真っ直ぐ飛ぶ事は稀らしい。
だが、数打てば命中率が低くとも100%に近くなる。数発は私(俺)へ向かって来た。
だけど、魔法にも相性というのもある。炎は水に弱く、水は雷に弱く、雷は土に弱く、土は風に弱く、風は炎に弱い。光と闇はお互いに弱点であり強味でもある。
それにより、いくらリリ王女の業が強力だろうとも今のラピスには弱体化され防がれてしまう。
「なっ!これを防ぐなんて、やるわね」
「お褒め頂き光栄です。次はこちらから行きます」
「飛べないのに、どうやって攻撃するっていうの?」
自分が飛んでるからと有頂天になってて魔法使いが、どんな戦い方をするのか忘れてしまっている。




