47話:第1王女と決闘その2
「ラピス大丈夫?」
「うん、アテナ行って来る」
あっという間に翌日の指定された時間となった。会場は、昨日カイトと戦った騎士の練習所とかじゃなく、賭け事がOKで他の国から貴賓客も来るというコロシアムで行われる事になった。
昨日の今日で良くコロシアムの使用許可が出たものだ。本来なら冒険者崩れや傭兵に剣闘士、借金奴隷となった者同士が戦うか犯罪奴隷となった者が高ランクの魔物と戦う事が多いようだ。
私(俺)は、まだ待機室にいるが観衆の声が部屋まで届いて来る。次の次位に出番のようだ。ルールとして待機室には、出場者しか入れないを
前世や前前世でもこんな大観衆の中で戦う事は無かった。今思うと緊張してくる。
恐らく私(俺)とリリ王女との模擬戦も賭け事の対象となっているだろう。私(俺)の前前世での日本にあった競馬やボートレースのように受け付けがあり、どちらが勝つか予想する。
一見、シンプルなギャンブルだが、これが民衆の間で流行ってる。
リリ王女と私(俺)の倍率だが、待機室に入る際に確認してきた。リリ王女が1.12倍、私(俺)が56倍と大穴になってる。まぁそれは仕方ない。職業選定の儀をやってからまだ2日しか経ってないのだから。
「どうやら出番のようね」
『ラピス大丈夫です。ラズリが着いています』
「そうだね。私にはラズリがいる」
昨晩、寝てる間にラズリが秘策を授けてくれた。それは【睡眠学習】、寝てる間でも訓練が出来たり勉強出来る魔法。
寝てる間なので身体は疲れない。ただし、寝てるので身体は鍛えられないが、魔法使いなら話は別。
寝てる間に魔力を動かし増幅させたり、詠唱を覚えるのに一躍かってる。実は、名を連ねる魔法使い達はほぼこの方法を取ってるという。
私(俺)が【睡眠学習】で得たのは固有武装の技能の取得。どんな事が出来るのか?実際にはやってないが、昔から覚えてるような感覚で身体に染み付いている。
『お待たせ致しました。今宵、最後の死合がやってまいりました。さーて、登場してもらいましょう』
バァンと煙幕が東門から噴出されると、リリ王女が可憐に手を振りながら歩いて登場した。流石、王女なだけはある。声援が耳を劈く程に響き渡る。
『我が国の第一王女、リリ・エリュン王女殿下ぁぁぁぁ』
わああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
『そしてぇぇぇぇ、対戦相手は何と!昨日、職場選定の儀を終えたばかりの5歳児、ラピス・グレィープニルぅぅぅぅぅ』
シーーーン
リリ王女と比べるもなく声援はない。全くない訳ではない。数人だが、拍手と声が聞こえて来る。
「ラピス頑張ってぇぇぇぇ」
アテナだ。王族という事もあり、VIPエリアに座ってる。声は挙げてないが、国王と王妃が手を軽く振ってる光景が見て取れる。
「ラピスぅぅぅぅぅ、俺の娘なら勝つんだぞ」
「あなた、恥ずかしいわ」
私(俺)のパパとママだ。恥ずかしいが、嬉しい。
『えぇぇ、情報によりますとラピス選手は、あの王国騎士団総隊長ガイス・グレィープニルの御息女だそうです。そして、固有武装持ちという情報も入っております』
ガヤガヤザワザワ
司会者の説明に観客もざわめき始めた。それもそのはず、私(俺)のパパはエリュン王国の英雄であり、国王と並ぶ位に有名人だ。知らないのは赤子くらいだろう。
「うふふふふっ、さぁ楽しみましょう」
「よ、よろしくお願いします」
ゴングが鳴った。
先ず、固有武装持ちがやる事は1つ。武装を展開する事から始まる。リリ王女の固有武装は、右手人差し指に嵌められた炎が燃えてると錯覚してしまう程に真っ赤な宝石がついた指輪。
王族の女性には、アテナもそうだったように指輪型の固有武装が多く顕現されるらしい。そして、その指輪を媒体にして武器と防具を召喚する。
大抵は、その個人の得意な属性に因んだ武器と防具(高確率でドレス型)が展開される。
「我が名に命じて答えよ、不死鳥の指輪よ」
キラーンと宝石が真っ赤に光ると、リリ王女を包み込み白いドレスから真っ赤に燃えるような胸元を大きく開けたドレスに早変わりした。
手に持つのは、リリ王女の身長よりもブレイドが長い大剣でフラーに真っ赤に燃えるような線が入っている。まるで戦乙女を思わせるような出で立ちだ。




