46話:第1王女と決闘
私(俺)はカイトとの話が終わり、それぞれ自分の部屋へ戻った。自分の部屋の扉を開けると思っても見なかった客がいた。
「ラピス、おかえり」
扉を開けた瞬間、アテナに抱き着かれキャッチする。アテナの他にアテナの姉である
「ただいま。それとリリ王女殿下、改めましてアテナ王女殿下の護衛を仰せ付かりましたラピスと申します」
「あなたの戦いを見てたわ。強いのね」
「光栄でございます」
アテナが、このまま成長したらこんな風になると容易に想像出来る美女だ。アテナも成長したら何処とは言わないが大きくなるのだろうか?
「それにしても貴族ではないのでしょう?礼儀正しいわね」
「お褒め頂きありがとうございます。お父上の知り合いに先生がおりまして、教わりました」
「あなたのお父上様というと総隊長だったかしら」
「はい、その通りでございます」
家では私(俺)にメロメロなパパが今だに騎士を束ねる総隊長だとは信じられない。まぁ今の私(俺)よりも剣の腕は上なのは認めてるけども。
「どうりで年齢の割には気も座ってると思っていたのよね?ねぇ、アタシとも戦わない?」
「…………!」
リリ王女からの申し出に口から言葉が出なかった。
「リリ姉様!ラピスは今日、職業認定の儀を行ったばかりですよ」
「でも、カイトを負かしたのでしょう?」
「それは運が良かっただけでござきます」
「運が良かっただけで勝てる程、カイトは甘くないわよ?」
でも、運が良かったのは本当だ。運良く銃武装を展開出来【小火玉】を放つ事が出来たに過ぎない。
それに私だけなら完璧に負けていただろう。ラズリの緻密な魔力制御によるサポートがあってこそだ。
「お、お断りしたら」
「良いわよね?」
「お断り」
「良いわよね?」
「あの〜」
「良いわよね?」
「…………分かりました」
やれば…………やれば…………やれば良いんでしょ!これは私(俺)が了承しない限り永遠と続くやつだ。
仮にも王族だから、まだ生まれ変わった時代の情勢には疎い部分もあるが噂くらいは嫌でも耳に入ってくる。
黄昏であるカイトのパートナーにして、とんでもない戦闘狂だと。自分より強い者を探すために自ら冒険者となり、その強い者と添い遂げるために。
「うふふふふっ、楽しみだわ」
「ラピス、ごめんなさい。リリ姉様を止められなくて」
「アテナは悪くない」
噂を知ってて対応出来なかった私(俺)の落ち度だ。カイトの場合は、私(俺)の武装を見たいがための模擬戦であった。
だが、この人…………リリ王女は違う。ただただ強い人と戦いために戦う。本気で向かって来るだろう。
「そうね、明日太陽が真上に登り切る前にやりましょう」
つまりは、AM10時から12時前当たりにやるという事か。もう覚悟は決まった。この際、リリ王女を倒してアテナに格好良いところを見せ付けてやる。
「うふふふふっ、明日が楽しみね」
鼻歌とスキップでリリ王女は颯爽と部屋から出て行ってしまった。まるで嵐みたいなお人だ。カイトの苦労が容易に想像出来てしまう。
「プハッ」
フラフラと床に座り込んだ。あっははは、強がっていたけど明日勝てるかな?
「ラピス!大丈夫?」
「ははっ、緊張の糸が切れたみたい」
カイトは隠すのが上手いが、リリ王女はそもそも強者の気というか殺気みたいなものを隠す素振りが全くない。腕に自信がある者なら気付く。
口が裂けても言えないが、何時でも全力全開という言葉が、ピッタリ合うとラピスは思う。
「ワタクシのベッドに座って」
「アテナ、ありがとう」
どうにかして明日までにリリ王女に勝てる策を考えないと。恐らく小細工は通用しないだろう。そもそも身長差があり、リーチ的にもステータス的にもあちらが上だ。
『ラピスなら勝てます』
(ラズリ、それ本当なの?)
『ラピスが、まだ本当に自分の力を知らないだけです。我に秘策アリです』
今、一番安心する言葉だ。ラズリが勝てるというなら100%勝てる。これで今夜は、グッスリと眠れる。