43話:炎の銃
私(俺)の訓練として固有武装でのみ戦うという事だったが、固有武装を変形させちゃダメとは言われてない。
それにあちらだって、複数の技能や魔法を使ってるのだ。私(俺)も使っても良いはずだ。
「銃武装展開」
「なにっ!」
剣からクラケット銃ぽい銃に変わり、意表を突いた形となった。銃の先端から【小火玉】が出てカイトに命中したが、炎属性のDランク魔法という事もあり多少火傷を負わせる程度で済んでしまった。
「銃武装は炎属性なんだね」
『その通りです』
だんだんと分かって来た。おそらく〇〇武装一種に付き属性も1つ付与されている。
残りの属性は5つという事は、武装も5つあることになる。色々試したい気持ちが湧き上がってくる。
「驚いたよ。まさか剣から銃とは。本来、固有武装が出来るのは1系統のはずだが…………いやはや未知な職業なだけに興味深い」
「まだやりますか?」
「いいや、もう充分だろう。これ以上、手の内をさらけ出すのは良くない。今の状況から察するに、まだあるのだろう?」
「さぁどうでしょう?」
使った事ないのに分かるか!
ラズリに質問すれば、答えてくれるだろうが、それでは詰まらない。試行錯誤してこそ、魔法や技能が延びていくというものだ。
「それに一撃を喰らったのだから、俺の負けだ」
「あ、ありがとうございました」
「君なら国立魔法騎士学園へ余裕で合格するだろうな」
まだ5歳だから受けられないが、10歳になったら受験する積りだ。アテナ様……………いや、アテナは王族なため必須で国立魔法騎士学園へ通う事になる。
因みに平民で戦闘系の職業なら冒険者に貴族とその従者は国立魔法騎士学園へ入学するのが通例となっている。たまに平民が入学する事があるが、あまりオススメしない。
ラピスはアテナの従者として通う事になる。
「俺も臨時で講師をしているから会う事もあるだろう」
「フフフフッ、カイトは教えるのが上手いから引っ張りダコなのよ」
「その話は良いだろ」
「照れちゃって可愛い」
なんだろ?なんか二人がイチャイチャしてイライラしてくる。一発撃ってもバチは当たらないよね?
「痛っ!何をするんだ」
「いえ、なんかイラっと来たもので」
ケガをしない程度に威力を絞って撃った。まぁ小石が当たった程度だろ。
「ラピスが勝った。ラピス凄いの」
「ちょっ!アテナ」
アテナが小走りから私(俺)に抱き着いて来た。ギュッとホールドされて離れない。5歳児ながらアテナも力強い。戦闘向けの固有武装持ちだと、身体能力を上昇する傾向がある。
それ故に中々引き離されない。それと………無理矢理に引き離すと泣かれる可能性がある。いや、絶対に泣く。
ほぼ2年間一緒に過ごしたから分かる。王族だから幼いながらも凛々しくいおうという姿勢はあるが、私(俺)が適当にあしらったり、無視したりすりと悲しい顔をする。
「クスクス、そっちこそやってるではないか」
先程の仕返しと言うのか、私(俺)が困ってるというのにひやかしてきた。
「ワタクシとラピスは仲良しなのですのよ」
『分かっているな?』
『お前が元男だとはナイショにしとく』
ラズリと同じように【念話】を飛ばして見たが上手くいったようだ。だけど、会う度に弄られそうで怖い。
「ラピス、今日もウチに泊まるのよね?」
「えっ?そうしようかな」
「やったー」
ちらっとカイトを見ると、クスクスと笑っている。チクショー、めちゃくちゃ恥ずかしい気持ちになってくる。
だけど、ここで嫌と言えば、アテナが悲しむ。それだけは避けたい。
「あらぁ、それじゃぁ私達も折角だし泊まろうかしら。ねぇっ、カイト」
「リリ、ここは君のお家なのだろ?好きにするが良いさ」
「リリ姉様も泊まるんですか?」
「えぇ、そうよ」
「冒険の話聞かせて下さい」
「良いわよ」
アテナの瞳がキラキラと輝いている。まぁアテナの部屋には冒険譚を記した本が結構あるからなぁ。
私(俺)が泊まると高確率で冒険譚の話をウキウキしながら聞かせて来る。大抵創作物だが、なかには史実を元にした物語も混じってるため歴史の勉強になったりする。
「取られちゃいましたね」
「それはお前もだろ」
「後でお話しませんか?自己紹介も含めて」
「何なら、俺の固有武装を説明する代わりに中を案内するか」
固有武装の中?何を言ってるのか分からないが、この人の強さの秘密が知れるのではないかと内心ワクワクしていた。