32話:前前世の記憶を思い出す
まだ混乱してるが、前々世の私(俺)の名前は桜井湊。地球の日本で、そう呼ばれていた。
何で忘れていたんだろう?前世で地球から転生された当時は、まだ覚えていた気がする。
それが、日が経つに連れて前々世の記憶が薄れて行き、いつの間にか忘れてしまった。
「…………!!」
「落ち着いたかの?」
「はい、どうやら私…………いや、俺は地球の日本で死んで転生したようですね」
「フォッホホホホ、こちらの手違いでのぉ。お主が死んだのは儂らのせいじゃ。前世で呼ぼうと思ったんじゃが、魔法の適正が低くてのぉ。呼ぶ事は叶わんかった」
「…………」
えっ?つまり、本来なら地球で私(俺)は死ぬ事は無かったって事?だが、ラノベで良くある異世界転生が出来て私(俺)的には運が良かった。
向こうでは、ろくに友達はいないし、父と母も小さい頃に亡くなって天涯孤独の身だ。だから、向こう側には未練はない。
「いえ、前世では素晴らしき人生を歩む事が出来ました」
「そうか、そう言って貰えると儂らも心が安らぐというもの。よし、そんなソナタに頼みたい事がある」
「私に…………いえ、俺にですか?」
神様が、私(俺)に頼みたい事とはなんだろ?
「今直ぐの事ではない。邪神を倒して欲しいのじゃよ」
「邪神でございますか?」
邪神とは、たまに神界から好奇心の方が勝り降りてしまう下級神の内、いつの間にか邪悪な心を秘めてしまった総称だ。
その形は様々で、動物の時もあれば何か道具の場合もある。最悪人間に化けている時もあり、その時は大抵独裁の国王や大盗賊の頭等になってる可能性が大だ。
「そうじゃ、儂らは地上に干渉出来ないのでな。この通りよろしく頼む」
「…………」
神様が私(俺)に頭を下げている。一瞬拒否する選択肢が頭を過るが、それはここに呼ばれてる時点で初めから無いに等しい。
それに楽しそうだ。邪神?魔王でもドラゴンでも何でも来い。私(俺)が倒してやる。
「分かりました。えぇっと」
「おぉ済まん済まん。儂は創造神じゃ。それでこっちに座っておるのが」
「カッカカカカ、俺は剣神だ。お前に加護を与えた1人であるぞ」
「剣神は、全ての武器と武術を司っておる」
やはり剣神であった。剣神の加護があるからか、本能的にこの神が剣神だと見た瞬間に理解した。
剣神の加護を持っているといっても全ての武器や武術が得意にはならない。その人の体質によるところが大きい。
と、すると隣に座っているのが…………。
「私は、魔法神よ。待ちくたびれたわよ。前世のアナタにどうしても加護を与える事が出来なかったから」
「それはすみませんでした」
「魔法神はな、全ての魔法を司っておる」
私(俺)が謝る事ではないが、つい謝ってしまった。それにしても魔法神が着用してる衣服は下着だと思わせる位に露出が激しい。
目のやり場に困る。つい、目を反らしてしまう。
「魔法神の隣に座っているのは運命神」
「よろしく、アナタ可愛い顔をしてるわね」
「運命神は、死と生を司っておる。奏を転生させたのも運命神よ」
魔法神がお姉さんと言うなら運命神はギャルだ。魔法神程でないにしろ、際どい谷間を強調してるような衣服を着ている。
肌は薄黒く髪も茶髪で、女神じゃなかったら遊んでると言われそうな容姿だ。
次に創造神から右側に座ってる三柱の神様。
「儂の右側に座っておるのが錬成神」
「よろしくな。オレっちの加護は、錬金術が扱えるようになる代物や。まぁ錬金術が底辺に見られてる今の世界では、あんま歓迎されてないな」
「そう卑屈になるでない。お前と仲が良いあの子が世界を変えるかもしれないじゃろ?」
「あぁ、カイトくんな。あの子はえぇ子や。マジで涙が流れてしまうんや」
なんか、チャラいエセ関西人みたいな神様だ。細目でヘラヘラしてる。他の女神を口説いてそうな。
でも、錬金術か。確かに私(俺)の前世でも最底辺な職業だと認識がある。
「奏くん…………いや、今はラピスくんか。カイトくんに会ったら、よろしゅうと伝えてや」
「あっはい、伝えておきます」
「まぁその内、会うと思うんよ」
カイトと言ったか。どんな人だろう。錬成神みたいにチャラくなければ、それで良い。
「因みにな。カイトくんもラピスくんと同じで転生者やから、よろしゅう」
「はいぃっ?!」
ここで一番変な声を出したかもしれない。