31話:女神の間
アテナに案内されたところは、《女神の宝珠》が保管されてる女神の間と呼ばれる職業判定するだけの部屋だ。
既にパパを筆頭に厳重に警備されており、関係者以外入れない様目を光らせている。
「パパ」
「おぉ、ラピス良く来たな。さぁ中に入りなさい。国王様がお待ちだ」
女神の間の中には、国王様と教会から派遣された神父様が既に待機しており、数名の騎士が壁沿いに沿って周囲を警戒している。
「父様、お連れ致しました」
「おぉ、アテナとラピス来たか」
玉座の間とは違うベクトルで、女神の間は壁から床、天井に至るまで少し汚れもない白一色といった目を奪われてしまう程に美しい部屋だ。
「ここが女神の間」
「職業選定の儀以外は、我ら王族とて出入りを禁じておる部屋だ」
つまり、王族でない私(俺)は普通なら入れない場所にいる事になるのか。何か感慨深さを感じる。
「これより職業選定の儀を執り行う。女神の加護をあらんことを」
これで初めて自分の職業が本来なら分かる。だが、私(俺)は既に自らステータスを見て分かってる。
「アテナ様、前へ」
「はい」
「ここにお手をお触れてください」
アテナが呼ばれ神父の前へ進み、《女神の宝珠》に手を置いた。そうすると、目映い光が部屋中に充満する。部屋中が白色なので反射するから余計に眩しく感じる。
「おめでとうございます。アテナ様の職業は、姫騎士でございます。属性は風、素晴らしい。おぉ、何と固有武装まで授けられております」
姫騎士という職業は、王族の女性にのみ発現するレア職業である。そのため、この職業自体が王族の証となる。
風属性は、炎属性に次いで攻撃力があり速度もある切れ味抜群の属性だ。
それに炎属性よりレア度が高い。
「アテナおめでとう」
「ラピスありがとう」
そして、アテナのステータスは以下の通りである。
・名前:アテナ・エリュン
・性別:女
・種族:人間
・職業:姫騎士・風
・レベル:1
・年齢:5歳
・HP:F
・MP:C
・攻撃:E
・防御:E
・魔攻:C
・魔防:C
・俊敏:B
・運:E
・固有武装:風妖精の細剣
・技能:開示、剣能
・魔法:風
・称号:エリュン王族第二王女
・加護:剣神、魔法神
「流石は余の娘じゃ。固有武装所持者とは将来が楽しみじゃ」
私(俺)も固有武装を…………ラズリを所有している。固有武装を持つ者は一万人に一人とも百万人に一人とも言われている程に貴重だ。
それ故に国の一大戦力と数えられる場合がある。アテナが成長すれば、将来パパと同じく騎士隊の隊長を務めるか冒険者でSランクを取得するのも夢ではない。
それ程のポテンシャルが固有武装には秘められている。
「お次は、ラピス様前へ」
「はい!」
自分のステータスが判明していてもドキドキする。違ってたらどうしようと不安に駆られる。
「ここにお手をお触れてください」
ラピスが《女神の宝珠》へ触れたところ世界が一瞬暗転した。どうやら転移したようで部屋は、先程の女神の間に似ているが広さが段違いで端が見えない。
私(俺)以外は来ていない。私(俺)の十数m前には、白い円盤形のテーブルが鎮座している。
そこに座ってる七人の男女が、こちらを見詰めて来てる。何だろうか?この懐かしい気持ちになるのは?
「ようやく来たか」
一番上座に座ってる如何にも一番偉そうなヒゲを生やしてる老人の声が身体の芯にビリッと響き渡る。
本能的にこの人達は、私(俺)…………いや、地上で住むどの生物達との上位的存在である神様達だと理解してしまった。
「待ちくたびれたのよ。前世では、全く魔法の才能が無かったから神界に呼び出す事は出来なかったからね」
「カッカカカカ、そのお陰で前世では英雄になれたから良いではないか」
上座に座る老人から左側に座る三人の内二人は、加護を持ってるからか?誰なのか理解出来た。ため息をついてる女性は魔法神で、高笑いしてる男性は剣神だ。
「フォッホホホホ、二人共彼が来た事にはしゃぐのは良いが少しは静かにせんか。そう思うじゃろう、ガロウ・ステルバン…………いや、桜井湊よ」
「…………!!」
上座に座ってる老人が誰かの名前を言うと、私(俺)の頭に何かが流れ込んで来る。ズキズキと頭が痛い。一気に情報が流れ込んだ影響による負荷で一時的に頭痛がする。
これは、1人の男の産まれて死ぬまでの一生。そうだ、思い出した。私(俺)は、地球の日本という国で死んだんだ。
「ハァハァ」
「どうやら思い出したようじゃのぉ」
あぁ思い出した。