30話:城へ遊びに行く
ラピスが初めて王城に登城してから凡そ2年が経った。ラピスは5歳の誕生日を迎え、とうとうあの日を向かえるのであった。
「うわぁー、楽しみ」
自分の胸に手を当てて見ると心臓の音がドクンドクンと何時もより五月蝿く鳴り響いている。
これが緊張するなって言う方が無理だ。これから王城にてアテナと一緒に《女神の宝珠》を使い職業を見るのである。
自分の職業は既に魔法少女と判明してるが、それでも一生で一回のイベントなのだ。
「それにしてもなんて…………華蓮なんだ」
姿見に映る自分の容姿にうっとりとしていた。私(俺)が成長するに連れ美しく綺麗になって行く様を見るのは心地良い。
別にナルシストではないが、私(俺)がこうも美しいと将来が楽しみで、ついうっとりとしてしまう。
「あらあらラピスは本当に鏡が好きなのね」
「はい、ママ。ラピス、自分の姿を見るのが好きです」
クルクルとその場でバレリーナのように回る。その様子は、まるで妖精のようだ。
「ラピス、自分の姿にメロメロになるのも良いけど、早く着換えなさいね」
時計はないから、正確な時間は不明だが、もうそろそろ王城でアテナと一緒に《女神の宝玉》による儀式がある時間帯だ。
これに遅れたらパパが怒られる羽目になる。遅れずに来るようにと昨日耳にタコが出来るくらい言われた。
私(俺)は、壁に掛けてあるドレスに袖を通して着る。再び鏡を見ると寝間着よりも美しい。
「むふっ、ねぇラズリどう?」
『イエス、マスターは綺麗です』
何処か棒読みのような気がするけど、まぁいいや。
「パパは?」
「もう城へ行ってるわよ。《女神の宝珠》の警備を任させられてるから会えるかもね」
《女神の宝珠》は国宝に指定されており、それを売るだけでも一生遊んで暮らせるだけのお金が手に入る。
だから、普段から教会には警備に就く兵士が常に在住している。
「ほら、お迎えが来てるわよ」
家の門の前にアテナの誕生日会時に乗った馬車と同じ王族御用達の馬車が止まっていた。
執事らしき男の人が馬車の扉を開け、こちらにお手を突き出してる。その手に自分の手を重ねて馬車に乗る。
うん、何回乗っても馴れない。普通、馬車の座る部分はこんなに柔らかくない。それに前よりも揺れない気がする。
「ラピス様はご聡明であられます。この馬車は、最新式で御座います」
最新式。流石は王族と言ったところか。よく見ると、内装も所々高級感を出すために前よりも装飾が増えてる気がする。
「錬金術師ギルドと鍛冶師ギルドの合作と聞いております」
『錬金術師ギルドは錬金術師が、鍛冶師ギルドは主に土精族がいるギルドであります』
それくらいは知ってる。だが、錬金術師は最底辺の職業だ。そことプライドが高い土精族が組むとは少し考え辛い。
でも、何事にも例外は存在するものだ。そう例えば、錬金術師の最上位職業を持つ者が現れた事だ。
それならプライドが土精族共も従うはず。名前は忘れたが、何か伝説染みた名前だったような気がする。
『錬金術師の最上位職業は、黄昏であります。同じ時代に1人しか発現しないとされてます』
黄昏……………それは、いつか会ってみたいものだ。そういえば、魔法少女にも上位、最上位職業は存在するのだろうか?
『それは不明であります。ラピスが史上初の魔法少女のため、この後どう成長するか皆目検討つきません』
それもそうか。前世の記憶を掘り起こしても魔法少女という職業聞いた事がない。ラピスと【念話】で話してたところ、時間過ぎるのは早く感じ、いつの間にか王城に着いた。
「ラピス様、足元にお気をつけを」
「ありがとうございます」
執事のお手を拝借して馬車を降りた。まだ、5歳の女の子である私(俺)には馬車の段差は高い。
だけど、普通なら怖がるところだが難なく私(俺)は降りて見せた。まぁ何回も馬車に乗っていれば馴れるものだ。
なにせ最低でも週一回はアテナへ会いに王城へ登城してるのだ。馴れない方がおかしい。
最初の内は、国王様から貰った認証許可証を見せていたが、いつの間にか顔パスで入れるようになっていた。
「あっ、ラピス」
「アテナ!」
王城の玄関口である門前までアテナが迎えに来てくれていた。アテナもドレスで身を包み、私(俺)が男に転生してたら惚れ直してるところだ。