20話:中華大衆食堂「悠」
アテナの誕生日会があってから三日後、エリュン王国王都の隣にある古都グリーデンを訪れていた。
古都グリーデンにて最近に突然と出店し人気店となった飲食店があると噂を聞き、遅めのラピスの誕生日をお祝いしようとラピス、ガイス、アリアの三人で中華大衆食堂「悠」に訪れていた。
少し値段が張るが個室に出来ると言われ個室にした。個室には貴族や王族でも使えるような豪華な
「変わった店だな」
「あなた素敵な店じゃないの。ラピスもそう思うわよね」
「ママ、私もそう思います」
いや、アリアが思ってる以上にラピスの瞳はキラキラと輝き、この店に来て本当に連れて来て貰って感謝してる。
ラピス自身も良く説明出来ないが、何故か昔にここと良く似た雰囲気を持つ店と他の客が食べてる料理に懐かしさを感じる。
既視感とはまた違う。頭では覚えてないだけで体が覚えてる。おそらく前世で似たような雰囲気の店に入ったのだろうと無理矢理に納得する。
「それで何にするか?」
メニューを開くが、ガイスとアリアにはどれも見た事のない料理ばかりで悩む。
「私これにします」
ラピスが指差したメニューは、炒飯だ。迷わず躊躇なく炒飯を選び、早く食いたくてウズウズしてる。
「チャーハン?聞いた事ないな?お前はどうだ?」
「いいえ、ないわ」
懐かしい気持ちが溢れて来るけども食べた記憶はない。似た店なら探せばあるかもしれないが、料理は別だ。
料理には、その地域ならではがあり、国が違えば料理文化も違って来る。態々他国に渡って自国の料理を広めようとする物好きなんかいない。
海路で行くにも陸路で行くにも国を回るのは命掛けだ。魔物や盗賊に襲われる可能性があるからだ。
だけど、それでも他国に行くのは冒険者か行商人のどちらかが大半だ。
ラピスは、まだガイスとアリアに言ってないが冒険者になる積もりだ。
冒険者になるには2つ方法がある。一つ目は冒険者ギルドで試験を受け合格する事。
2つ目は、冒険者の学校に通い卒業する事。だが、その2つ共に10歳以上にならないとしょうがない。
だから、今は炒飯を食べてから特訓をする積もりだ。そして、ソフィアに会いに行く。
「パパは、どれにしようかな?」
「パパはこれ」
パパにピッタリな料理を見つけた。それは〝麻婆豆腐だ。それも星5だ。
知らない料理のはずだが、辛い料理だと知っている。だけど、ラピス自身辛い料理を食べた事がない。
そもそも香辛料なんて高い食材を買う財力がウチにある訳がない。香辛料は物好きな貴族が買う食材の一つとされる。
前世でも口に入れた事はない。前世でも同じく貴族が買っていた。東方の国で採れ、危険な航海で運ばれるから余計に高い。
そんな香辛料をたくさん使われた料理の一つが麻婆豆腐だ。何故知ってるのかは、ラピスも分からない。
「麻婆豆腐?これも知らない料理だな。辛さ星5?もしかして、香辛料を使ってるのか?」
香辛料を見た事なくとも辛味と言ったら先ず思い付くのは香辛料だ。
「でも、あなた値段はお手頃よ」
麻婆豆腐の値段を見ると驚愕を隠せないでいる。下手したら子供の小遣いでも食べれる値段設定となっている。
「こ、こんなに安いのか?」
香辛料をふんだんに使用していたなら、この百倍や千倍はするはずだ。
もしかして、辛さ星5も名前なのか?紛らわしいが、きっとそうなんだろう。
「ママにはこれ」
「塩拉麺?これも聞いた事のない名前ね。それに拉麺と付く料理がたくさんあるのね?」
「ママ、拉麺は色々味や具材を応用が利く料理なのです。その中で塩拉麺はサッパリして美味しいのです」
「ラピス、良く知ってるわねぇ」
ママに褒められ自然と笑顔となる。中身はアラフォー男のはずだが、美人な女性に褒められると嬉しくなってしまう。
前世なら褒められても特段に嬉しく感じなかったが、この体に転生してみてから感情が豊かになった風に思える。
もしや、この体に前世の魂が引っ張られてるのか?でも、前世よりかは幾分マシだと思える。何故なら、前世は独りぼっちだったからだ。