18話:第二王女の誕生日会
「陛下、この度はお招き頂き光栄でございます」
貴族や大商会の重鎮達は順番にオリバー王陛下とアテナ第二王女へ謁見している。アテナ第二王女に顔を覚えて貰おうと躍起になっている。
三才でも第二王女だ。そこそこの権力を持ち、将来的に顔を覚えて貰えていれば、何かしらお裾分けがあるかもしれない。
そこで、やっとパパの出番となった。パパの背後に着いて行き、オリバー王陛下とアテナ第二王女の前へと出向いた。
ママは、他の貴族の奥様方と話をしている。どうやら元宮廷魔導師だからか?尊敬してる者がいるそうで、話を伺ってるらしい。
「おぉガイスか!そなたの仲である。無礼講で構わん」
「はっ!仰せのままに」
王国の騎士隊総隊長を勤めてるから国王に知り合いかと思いきや、もっと深い仲のようだ。
そうでないと、いくら国王でも総隊長を勤めてるパパを呼び捨てにはしないだろう。
「オリバーも元気なようで何よりだ」
こんな大勢のいる場所で国王を呼び捨てにしたら普通不敬罪に囚われかねない。
だが、そこは他に声が漏れないよう風属性の障壁を張っている。これで聞き耳は立てられない。
「あっはははは、国王も楽ではないわ」
「お察しします。アテナ様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。ガイス卿の活躍は度々お耳に入ってきておりますわ」
三才児が言う台詞ではない。これが王族というものなのか?!私(俺)の中はアラフォーのオッサンだが、こんな子供見た事はない。
「その隣にいるのはガイスの娘か?」
「ガイス・グレィープニルの娘、ラピス・グレィープニルでございます。この度は、オリバー王陛下に謁見出来た事に感謝致します」
「くっわはははは、ガイスよ。瞳はお前に、口元がマリアに良く似ているが、中身は全然似ておらんな」
複雑だが、国王にそう言われてめっちゃ嬉しい。まぁ元々アラフォーのオッサンが入ってるのだから、似るはずは消してない。
「オリバー、オレもそう思うぞ。内面はオレに似ずに聡明で嬉しいのだ」
パパまでも喜んでる?!まさか、同じような考えを持ってるなんて信じられない。
はっ!驚いてる暇はない。アテナ様に誕生日プレゼントを渡さないと。
「アテナ様、お誕生日おめでとうございます。詰まらない物ですが、プレゼントを持って参りました」
既にプレゼントの山が玉座より奥に隠すように鎮座している。最初からパパの順番が来るまで全員がプレゼントを用意し、謁見していた。
「まぁ、ありがとうございます」
ラピスが直接アテナ様にプレゼントを手渡した。同じ年の女の子からプレゼントを貰った事が、よっぽど嬉しかったのか?ニコニコと眩しい笑顔が輝く。
「ラピスの手作りお菓子でございます」
「なに?菓子じゃと?!ふぉふぉふぉ、プレゼントに菓子を選ぶとは余達大人だと考えつかん思想じゃ」
大抵、貴族間の贈り物だと宝石や貴金属があしらわれた指輪やブレスレット等の装飾品か宝石が散りばめられたドレス等が一般的だ。
「そうだ、ここで食すとしよう」
「陛下、毒味を致します」
「ガイスは、余の友人である。その娘が毒を盛ると言うのか?」
「いえ、ですが」
王族には必ず毒味役がいる。朝食から夕食に至るまで御用意された料理を先に一口食し、毒が入ってないか確認する。
云わば、影武者みたいな職業といえる。職業の都合上、技能に毒耐性~毒無効という毒が利き難い技能持ちが選ばれる。
「余が良いと言ってるのだ」
「う、承りました」
国王の発現は重い。これ以上、引き留めても逆に毒味役の者が不敬罪に囚われかねない。
仕方なく毒味役は、国王から一歩下がり待機するしかない。
「箱を開けてくれぬか」
「はっ、どうぞ」
従者がラピスから受け取ったプレゼント箱を開けると、そこには悠然と輝く黄色な菓子が並べてある。
「これは美しい」
「まぁキレイです」
「このお菓子の名は、プリンという名でございます」
「プリン、良い名だ」
プリンを紹介したガイス自身も実は良く知らないでいる。ラピスが、どうやって思いつき作ったのか検討が付かない。
それに、まだ味わった事がない。拝見しただけで、プレゼント箱にラピスが仕舞い込んだからだ。
騎士隊総隊長からの直感から察するに絶対に美味しい。国王様とアテナ様が食べるため、内心で食せないのが悔しいと感じてる。