17話:王城
馬車に揺られて十数分、城が見え門を潜った。馬車というのは揺れがあり前世では長時間乗るにしては苦手意識を持っていた。
ただし、この馬車は快適であった。やはり、王族が所有してる物という事もあり金に物を言わせ作らせたのだろう。
良く見るとあちらこちらに、この時代では最新鋭の技術が使われているのが分かる。
いや、ちょっと待て!何で私(俺)は、そんな事が分かった?そんな知識あるはずもない。
そもそも前世よりも栄えてる時代の新しい技術なんて知る由もない。
そんな事を考えていたが、城内を進む馬車の中から景色を眺めていたら、そんな考えは吹き飛んでしまった。
私(俺)の家もそこそこ大きいが、城と比べると天と地程の差があり、自分一人だけなら迷子になる自身がある。
「さぁ、着きました。どうぞ、お嬢様足元にお気をつけて」
「あ、ありがとうございます」
やはりユリウスという従者は前世が男である私(俺)でもドキドキと胸が高鳴ってしまう。
まだ私(俺)は3歳なのに、何を考えてるんだ!このドキドキは、そう今日は暑いからだ。暑いから胸が高鳴ってるんだ!
「おい、ユリウス。俺のラピスはやらんぞ?」
「隊長は何を言ってるのですか?ワタクシには、既に婚約者がいるのです」
ハァ~、って私(俺)はため息をついて残念がってるんだ。そこは祝いの言葉とかを言うべきだろう。
「それは、おめでとうございます。きっと素敵なお嫁さんに違いないですわ」
「ハッハハハハ、お嬢様ありがとうございます。ワタクシには、勿体無い素敵な女性です」
「ホッ、ラピスはずっとお父さんと一緒にいてくれるよな」
気持ち悪い事を言われ、ついパパをジーッと見詰めてしまったではないか!
私(俺)が見詰めた事を、何を勘違いしたのか?ニコニコと微笑み返して来た。うん、本当に私(俺)のパパながら気持ち悪い笑顔だ。
「パパ、気持ち悪いです」
「ガーン、こんなにラピスの事を思ってるのに何で!」
「プックスクス、隊長をここまで落ち込ませるとは、流石は隊長のお嬢様だ」
褒めてるだろうが、その褒め言葉は全然嬉しくない。だって、こんな親バカ丸出しのパパの娘だとは思われたくない。
だけど、まだ話に聞いただけで直接見たことないが、普段の隊長をやってるパパは凛々しくて格好良いと噂で聞いている。
それが嘘か真かラピスには判断が付かない。むしろ、今の方が素だと内心では思っている。
「お着きになりました。こちらが第二王女アテナ様の誕生日の会場であります」
ユリウスが扉を緩やかに開くと、一番奥に玉座らしき豪華な椅子が鎮座しているのが見える。
既に賓客として呼ばれた貴族が何人かいるが、ラピスの年齢になる子供はいなかった。
最低でも10歳を越え、成人間近の子供しかいない。ちょっかいを出されても詰まらないので、ラピスはパパの足元にいた。
「ラピス、何か食いたいものはあるか?取ってあげよう」
ラピスの背丈では、料理が乗ってるテーブルの上を覗き見るのは無理だ。
「何があるのですか?私には見えないのです」
「そうだったね」
パパが料理の名前を教えてくれた。どれも聞いた事のない名前だったけど、直感的に美味しそうな名前のしてる料理を適当に盛り付けて貰った。
「どうだ?美味しいか?」
モグモグ
王族の開く誕生日会である。豪華な料理のはずなのにラピスの舌では、あんまり旨いと思えなかった。
ラピスが、まだ子供だからなのか?それとも味付けが変なのか?ラピスには判断付かないが、とにかく美味しくない。
「はい、美味しいです」
不味いと言ってしまえば、それだけで不敬として処刑されてしまうかもしれない。まだ子供でも例外はない。法律は絶対だ。
「これはこれはヘリウス卿、ご無沙汰しております」
「おぅ、ガイス卿か。久し振りだな」
パパは、他の貴族に挨拶回りをしてる。騎士隊の総隊長をしてるからか?意外にと顔は広いようだ。
ママと待ってる間、楽団による演奏が始まった。演奏が始まると、玉座よりも更に奥のカーテンが開き、此度の主役の登場だ。
「エリュン王国国王、オリバー王陛下。第二王女アテナ様のご登場となります」
パチパチと拍手が響き渡る。
オリバー王は、玉座の前で立ち止まり、アテナ第二王女はそのまま階段を降りカーテーシーをやる。
「この度はワタクシの誕生日会へいらした事に感謝致します。細やかですが、お料理をご用意致しました。最後までお楽しんで下さいませ」
再度、拍手が巻き起こり、オリバー王陛下の隣へと戻った。戻る際に、私(俺)の方へ視線を向けた気がする。