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11話:家庭教師アルル

 私(俺)のドレスを取りに行き帰ってからが大変であった。第三王女の誕生日会が終わるまで一旦剣の修行は中断し、その代わりに貴族としての様々なマナーやダンスのレッスンをしなきゃならなくなった。

 そのための家庭教師を家にお招き頂いている。


「この度、ラピス様の家庭教師を勤めるアイルでございます。お見知り置きを」


 何処かの貴族のように優雅であり、それでいて目付きがキリッとしていで真面目そうで厳しそうな女性だ。だけど、子供の私(俺)から見てもキレイな方で、つい見惚れてしまいそうだ。

 年齢は外見上、私(俺)のパパやママと近いか同じ位に見える。もしかしたら、パパとママの昔の知り合いか?


「アイル久し振りだな。元気にしてたか?」

「はっ!ガイス様もお変わりないようで、このアイル嬉しく思います」


 アイルという家庭教師は、まるで騎士のように敬礼をパパに向かってした。


「ラピスは初めてだったな。彼女はアイル、俺の元部下だ。今は騎士を辞めて家庭教師をやってる。騎士を辞めると宣言した時は、みんな驚いたものだ。《閃光》と呼ばれる程の剣技の使い手だったのにな」

「それは昔の話です。今は、しがない家庭教師をしながら、あっちこちと転々しています」


 ラピスは、《閃光》という名に覚えがあった。家の書斎に《閃光》という騎士の英雄譚が描かれている本が置かれていた。

 前世で男だったとしても、今はやはり幼くても女なのだ。英雄というワードに興味津々で、こっそりとパパに内緒で読んだ事がある。

 シリーズ物で全10刊だったと記憶している。創作物だと思っていたが、本当に実在してる人物だとは思いもしなかった。

 それに女性だとは、英雄譚では男のように書かれていたから男だと、ずっと勘違いしていた。


「さぁ、ラピス挨拶しなさい」

「ガイス・グレィープニルが娘、ラピス・グレィープニルです。かの《閃光》様にお会い出来、光栄でございます」


 カーテシーをしながらお辞儀をする。最近になって、ようやく噛まずに発音が出来るようになった。

 前世でカーテシーなんぞ、男であった俺(私)にはやる機会なんてあるはずもない。

 だから、羞恥心に堪えながら披露したが、これが様になっていたようだ。初対面のはずのアイルは、私(俺)を見詰めながら感心してるようだった。


「確かラピス様は、まだ三才のはずですわね。三才児で、これだけ披露出来れば、私なんていらなかったのでは?」

「いえ、私はまだまだです。アイル先生に、教えて欲しい事は山ほどあります」


 物語上の人物だったと思ってた人が目の前にいるのだ。今教えを乞わなければ、何時教わるのだ。それは、今しかない。


「アイル先生は、土龍アースドラゴン火龍レッドドラゴンを《閃光》の名に相応しく討伐されたとか、そんな方が私の家庭教師で不満かと存じ上げますが、よろしくお願い致します」

「なっ!そんな昔の事を知っておられるのですか!流石、隊長のご息女であらせられる。とても博識だ」

「わっははははは、そうか。しかし、何処で知ったのか?」


 あっ………………や、ヤバい。つい、興奮して要らぬ事を話し過ぎたと思ったが、口から出た言葉は飲み込めない。こっそり書斎に入り込んだ事をバレないか、内心ドキドキであった。

 アイルが龍種討伐した事実を普通の三才児が知るには、あまりにも古過ぎる過去の出来事で、とうのラピスはそんな事を、まだ知る由もなかった。


「さぁ、今日は再会出来たこの日を祝ってウチで食べて行くだろ?アリアも張り切って作ってるからな」

「はっ!お言葉に甘え、ご相伴を預かります」

「うわぁ、アイル先生と一緒にご飯を食べれるなんて、とても感激です」


 中身は中年男性のはずだが、外見が子供ながらはしゃぐラピス。今からどんな話をするかワクワクが止まらない。


「では、お食事のマナーを勉強しながらお召し上がりますか?」


 えっ?!それって、今日の夜からですか?!口は災いの元って言うけど、今がまさにそれだと思ってしまう。

 普通、明日からだとか思うじゃん。や、ヤバいかもしれない。食事のマナーは全然知らない。

 前世でも、食事と言ったら街中では酒場か宿屋の料理、街外やクエスト中だと途中で獲物を見つけ解体し、そのまま焼いて食すサバイバル料理がほとんどだ。

 だから、前世では食事のマナーとは無縁仏もいいところで、前世の記憶を探れば探る程に出来る気配が微塵もない。


「わっははははは、ラピス頑張れよ。パパが側で見守ってやるからな」


 ちょっと、その言い方だと死んで来いって言われてる気がしてならない。会った当初はやる気に満ちていたが、パパの笑い声から不安の方が勝ってしまってる。

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