10話:ラピス、ドレスを取りに行く
セバスチャンぽいオジサンに私の裸を見られると、思いきや違った。ちゃんと女性従業員が対応し、私の体の寸法を計ってくれた。
まぁ寸法を測るとして、今の私(俺)は三歳児なのでバストからヒップまで、ほぼ同じ数値で丸太だった。
身長も大体三歳児の平均と変わらない。ただ一つだけ除けば普通の子供と変わらない。そう、ステータスが異常に高い点を除けば普通の子供だ。
「アリア様、お待たせ致しました。ラピス様のドレスは3日後に出来上がる予定でございます」
「3日後ね、間に合いそうで助かったわ」
「こちらこそ、またのご来店をお待ちしています」
私(俺)が寸法を計ってる間にドレスに使う生地を選んでいたようだ。どんな生地にしたのか聞いてみると「それは出来上がりまでのお楽しみよ」と教えてくれなかった。
でも、出来上がるまでは3日後なので、剣と魔法の訓練に夢中になってる間に3日という時間は、あっという間に過ぎていった。
「ラピス、ドレスを取りに行きましょうか」
「はい、ママ」
「今日は、俺も行くぞ」
ドレスが出来上がり店に取りに行くとママが言った瞬間、私(俺)のドレス姿を早く見たいがため、今日はパパも来ると立ち上がった。
「アナタ、家でも見れるじゃないの」
「俺は、早くラピスのドレス姿が見たいだ」
パパは、まるで大きいな子供のように駄々を捏ねている。そんなパパを見ると、私(俺)は恥ずかしい思いになる。騎士隊総隊長のパパなら尊敬するけど、今のパパはダサく見える。
「もう、しょうがないわね。ラピス、パパも行くけど良いかしら?」
「うーん、しょうがないでちゅね。良い子にしてるのでちゅよ」
「ありがとう、ラピス」
あまりの嬉しさにラピスを抱き掲げるパパ。そんなパパの頭を良い子良い子と小さな手で撫でている。
どっちが子供で、どっちが大人なのか分からない状況を見てるママが、クスクスと肩を揺らしながら微笑んでいる。
「パパ苦しいでしゅ」
鍛え上げられたパパの腕に抱き上げられて、三歳児の私(俺)の体は悲鳴をあげていた。いくら前世で鍛え抜いたとしても転生したら、リセットされてしまう。
短い私(俺)の腕では、パパにペチペチと叩く事もままならず、意識を手放す寸前までいった。
「アナタ、ラピスを離してあげて」
「はっ!すまん、ラピス」
「ゲホゲホ、パパは来ないでくださいでしゅ」
自業自得だがラピスに拒否されたパパは、ガーンと床に両膝と両手を付き、誰でも分かる落ち込み様だ。この様子を見ると、本当に騎士隊を率いる総隊長だと疑問に思えてしまう。
「ら、ラピスはパパの事が嫌いなのかい?」
「嫌いでしゅ」
ラピスが放った言葉による鋭利な剣に心臓を貫けたように床に倒れ、大の大人が両手で顔面を覆い泣いてる。
「シクシク、パパが嫌い。ラピスがパパの事が嫌い」
「………………ラピス行きましょうか?」
「はいでしゅ」
ブツブツと小声で呟き続けているパパを、そのまま放置し服飾店へ直行した。
私(俺)とママが来る事が分かってたらしく、服飾店の店長に奥内の部屋へ通された。その部屋の壁には、子供用のドレスが数点掛けられている。
一着だけかと想像していた私(俺)は驚いた。トラブルがあった時のために予備をまとめて作るのが普通のだそうだ。
私(俺)は、今まで自覚なかったがウチは例外的に両親の代までだが貴族と同じ扱いらしい。そういえば、いつも肉や魚が食卓に並んでいたような気がする。
ほぼ毎日のように商人の方が食材や日用品等を置いて行くのを端から見掛けていた。いつもの事だから普通だと思っていた。
一般的な平民が、毎日のように肉や魚を食す事は経済的に無理がある。聞いた話によると、一般的な平民の食卓は薄味のスープと黒パンに加え果物の実数粒のみだ。
そう考えると、ウチは恵まれてる方なんだと私(俺)は思う。前世を思い返すと、子供の頃は薄味のスープと黒パンを食べる事も怪しかった。
なので、パパとママの娘として産まれ来て幸せだと改めて噛み締めていた。
「ラピス様、準備が出来ましたので奥の部屋へお願い致します」
幸せを噛み締めていると、準備が出来たらしく呼ばれた。
「ママ行って来ます」
「いってらしゃい」
奥の部屋に入ると、前回に私(俺)の寸法を計ってくれた女性店員がいた。恥ずかしいので一人で着てみたいが、流石に前世でもドレスを着用した記憶はない。
自分では着れる自身がないので仕方なく、素直に女性店員のなされるままにドレスの着用を手伝ってもらった。
数分後、ドレスを着る事が出来ママがいる部屋に戻ると、何故か簡易的なファッションショーが始まっていた。