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騎士団長からの甘すぎる溺愛  作者: 有栖川 すず
3/5

騎士団長


チュンチュン──────。


鳥の鳴く声がして、だんだんと意識が浮上してくる。


「・・・ん」


体を少し動かせば、肌触りの良い感触が頬に当たる。



もう、朝?

今日はいつもよりぐっすり寝られた気がする。


それもこれもきっとこの布団のお陰だ。


いつも使っていた布団よりも遥かに素材が良いのが触るだけでも分かる。


でも、ジェームズの家にこんなにいい布団があったんだろうか?

昨日まではもっと違う物を使っていたはずなのに・・・・・・。



『婚約を解消して欲しい』


ん?


『好きな人ができた』


あれ?


『とっとと出ていけ』


「っ!?」


脳内で再生されたその音声が夢ではないと分かり、飛び起きる。


「・・・ここ、は・・・・・・」


当たり前だけどそこはジェームズの家ではなくて。


だけどこの場所に心当たりは全くない。


ひと家族が余裕で住めそうなくらい広い部屋。


家具や飾られている絵画などはどれも高そうで、天井を見上げれば、大きくて豪華なシャンデリアが吊るされている。


そして何よりも、5人くらいなら川の字でも寝れそうな大きすぎるベッド。


どこ、ここ・・・?


とりあえずベッドから出れば、足元には銀色のヒールが置いてある。

他に履くものが無かったため、恐る恐る足を入れる。


と、サイズがぴったりな事に驚いた。



・・・・・・ん?


ヒールにばかり目を奪われていたけど、服も変わっていることに気づく。


確かあの時は、ブラウスとスカートだったのに、今は淡いピンク色の膝上のワンピースを着ている。


え?

これもサイズぴったりなんだけど・・・・・・。


て言うか、誰が着替えさせてくれたんだろう?


そもそも、ここはどこなんだろう?


頭の中にいっぱいのハテナマークを浮かべながら、ドアに向かう。


今まではヒールが無いものばかり履いていたから、足取りが覚束ず、ドアに辿り着くまでに時間がかかった。


「・・・・・・ふぅ・・・」


部屋の中ですらこんなに凄いんだから、外に出たらきっと想像もしていないような光景が広がっているんだろう。


心臓の音がドクドクと早くなる。



深呼吸をしてドアを開けた──────。



ドアの向こう側は想像していたよりもキラキラしていた。


広い廊下には真紅の絨毯がひかれていて、いたる所に高級そうな骨董品や絵画が飾られている。


そして何よりも、壁一面が窓になっているため、視界いっぱいに広がる緑や色とりどりの花が目に入る。


うわぁ・・・ここはお庭かな?


どこを見てもこの家がとんでもないということが分かる。


とりあえずは、ここがどこか確認しないと。


でも、右と左どっちに行けばいいのか・・・。

『迷ったら左』って言葉があるし、その言葉を信じて左に進み始める。


ドアが一定の間隔が並んでいるが、人様の家のドアを勝手に開けるわけにもいかず・・・。


しばらく進めば、突き当たりになり、またしても右と左に分かれている。


また、右と左・・・・・・。


でも、『迷ったら左』だもんね!


自分の心の声に頷き左へ向かおうとした瞬間、


トンっと肩に手が置かれた。



足音なんて聞こえなかったはずなのに・・・・・・。


それともただ単に私が聴き逃していただけかもしれないけど。



「キャァ!?」


悲鳴と同時に肩が震え上がる。


そして弾かれたように振り返れば、男の人が立っていた。


・・・・・・人?


チラッと足元に目を向ければ透明感は全くない。


人、だよね?


良かったぁ・・・・・・。


とりあえずはホッと安堵の息をついた。


「申し訳ありません。まさかそんなに驚かれるとは・・・」


「いえ、こちらこそ・・・・・・申し訳ありません」


バクバクと大きくなっていた心臓の音が落ち着きを取り戻してきたため、改めて男の人を見上げる。


私よりも数十センチは高い身長、漆黒の髪、スカイグレーの瞳。

そして、立派な衣服に腰には剣をさしている。


「わたし、ルーカス・ネルソンと申します。この、ラフタリア国に仕える騎士団の副団長をしております」


恭しく頭を下げられ、釣られるように私も頭を下げる。


この国には第1から第5までの騎士団が存在していると聞いたことがある。

武術や剣術に優れている人のみしか入隊できず、特に第1騎士団にはその中でも選りすぐりの騎士が所属しているらしい。

それに、第1騎士団の団長をしている人は、過去最年少での団長らしく、周りからは一目置かれている存在らしい、という噂を耳にしたことがある。


この人はどこの騎士団に所属しているんだろう?


でも、騎士団に選ばれる実力を持っている人なんだから、相当の腕前の持ち主なんだと言うことは言われなくても分かる。


「わ、私はエマ・ウォーカーと申します」


「存じておりますよ」


にこやかな表情で頷いたルーカスさん。


え!?

存じております!?


私、この場所に来てから誰かに名乗った記憶なんかないけど・・・・・・。


というか、目が覚めてから初めて人に会った気がするのに・・・・・・。



「ではこちらへ」


頭の中が混乱している私の背中を、ポンッと優しく押しながら歩き始めたルーカスさん。


え?

こちらって・・・どこへ?


ルーカスさんは広すぎる建物の中を迷う色すらみせず、右へ、左へ。

そして・・・ひとつの扉の前で足を止めた。


「あ、あの・・・・・・」


「お会いになられれば、分かります」


悪戯そうな顔をしたルーカスさんは、私の困惑の声なんて聞こえていないかのようにドアを開けた。



窓から射し込む眩しい光。


うっと思わず顔を下に向ける。


「目が覚めた?」


光の方からどこかで聞いたことのある声が聞こえてきて、目を向ければ、


慣れてきた視界に映るシルエット。


高級そうな衣服、腰には剣がさしてある。


ここまではルーカスさんと同じ。


だけど、金髪にホリゾンブルーの瞳、整った顔立ち。


ルーカスさんも整っているなと思ったけど、この人の顔立ちは格別。



「・・・あ、あなたは・・・・・・」


村の出入口で助けてくれた男性がそこにはいた───。



「わたしは、ウィリアム・ローレン・スミス。スミス家の当主であり、ラフタリア国に仕える第1騎士団の団長をしている」



確かに彼の口からそう聞こえた───。












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