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騎士団長からの甘すぎる溺愛  作者: 有栖川 すず
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婚約解消


「婚約を解消して欲しい」



綺麗な水と豊富な食料、豊かな街並みに人々の幸せそうな笑顔で常に溢れているラフタリア国。


王都であるリアから数キロ離れたこの場所、ナーラ村。


人口は1万人ちょっと。

この村は、木や草が生い茂っていて、子供たちからしたら大きな庭みたいなもので、毎日のように笑顔で飛び跳ねている子供たちを見かける。


1万人という一見多そうな数に見えるかもしれないけど、村のネットワークがあり、今日の出来事が明日の朝には村のみんなに知れ渡っている、なんてことはざらにある。


そんな村の中では立派な建物であるだろう私が住んでいる家。


実際は私の婚約者の家だけど・・・。


その家の中で、これから寝ようとしていた瞬間、声が聞こえ時が止まった。



「・・・・・・え?」


「だから婚約を解消して欲しい。て言うか、するから」


「え?ちょっ・・・・・・そんな急に・・・」


「他に好きな人が出来て、その人と結婚したいから」


頭の中が真っ白になっている私を置いて、彼が淡々と理由を話す声が聞こえる。



エマ・ウォーカー。

それが私の名前。


私は、三姉妹の長女として生まれた。

最初は家族5人仲が良くて、決して裕福とは言えないけど、笑顔が溢れる毎日を送っていた。


でも、いつからか・・・私はひとりぼっちになっていた。


1歳下の次女ジェシカと3歳下の末っ子レイラは、私よりも顔立ちが整っていて、勉強も出来て、両親からしたらまさしく自慢の子供だった。


だけど私は・・・顔だって普通よりも下だし、勉強だって平凡。

人懐っこい性格の2人に比べ、私は人見知りをしてしまってなかなか人の輪に入っていけない。


圧倒的な差を感じ始めた頃、両親の関心は2人の妹に移り、私は完全に召使いのような扱いになった。


そんな私たち家族の変化も当たり前のようにネットワークで村全体に広がったけど、それを咎めるような人も現れず。


逆に今まで親しかった人達までも距離を取るようになり、この村の中に私の居場所は完全になくなったのが16の頃。


それから約1年間、召使いのような生活を送っていた中、私に婚約の話が持ち上がった。


恋愛結婚が主流である今にしては珍しい政略結婚だった。


相手は、ジェームズ・スペンサー。

私よりも3歳歳上で、貴族であるスペンサー家の次期当主になる将来が約束されている人だった。


彼の方から私と婚約したいと申し出があったらしく、私の答えを聞かずに両親は喜んで私を差し出した。


・・・きっと私が嫌だと言っても両親は聞かなかったとは思うけど・・・・・・。


きっと両親は妹たちでなく、私でホッとしていたと思う。


ジェームズ・スペンサーは、根っからの女好きで婚約をしてもすぐに破談になるのが定石だったから。


それを知っていてか、両親は家を出ていく私に言った。


『何かあっても帰ってこないでね』



それからたった半年。


いつかは来るだろうと思っていた。


だけど・・・こんなに早いとは思っていなかった。



「そういうわけだから、はい出てって」


「・・・・・・え?」


クローゼットの中に入れてあった旅行用の小さめなカバンを手に取った彼は、乱雑に荷物を入れると私の胸に押し付けた。


「待ってよ!今は夜だし・・・・・・」


せめて明日まで待って欲しい。

家族の元には帰れないんだから、これからどうするか考える時間が欲しい。


のに───・・・・・・。


「ムリ。好きでもない女と同じ屋根の下で寝れねぇ」


グイグイと私の背中を押して、玄関まで強制的に向かわされる。


「・・・・・・ちょっ・・・!!」


抵抗しながら顔だけ向けた瞬間、


バシッと乾いた音がした数秒後、頬にジーンと痛みが走る。


「とっとと出てけって言ってんだろっ!お前にもう用は無いんだよっ!」


玄関の扉をバンっと荒々しく開けたと思えば、背中を勢いよく押されて外に出される。


「まっ・・・・・・!」


手を伸ばした私を拒絶するように、再び大きな音をたてて閉められた扉。



・・・・・・別に好きだったわけじゃない。


そもそも好きって分かんないし・・・。


だけど最初の頃は優しくしてくれた。


お土産だといって髪留めを買ってきてくれたし、たまに外にも連れていってくれた。


でもそれも最初の2週間くらいだけで・・・・・・。


手を繋ぐ訳でもないし、キスをする訳でもない、それ以上のことなんて以ての外。


婚約者らしいことをこの半年間何もされなかった。


期待していたわけじゃない。仮にも婚約者なんだからするのかなって思っていただけ・・・・・・。


傍から見たら私たちの関係を婚約者だと思う方が難しいだろう。


でも、あの家から出られただけでもマシだと思っていた。


そう思っていた自分を殴りたい・・・・・・。


・・・結局、どこに行っても私は召使いだった。


女としての魅力を感じることがなく、暇つぶしの相手にと手を出されることもない。


・・・・・・こんな人生、もう辞めたい。















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