7
何か急にこの依頼受けようって言い出して苛立っていましたが、墓穴でした。国王様の性格が悪いのか恨まれているのか。拍手喝采。父上が“領主”ならばもう少し早く言って欲しいもの。
件の話に戻る。珍獣ゴブリンの住まいは、洞窟。金山・銀山なら国王軍も出たって思う。掘削で採算が合うか否かで枯れたかではないから。
略奪品が人間なら、酸素の供給が十分で、近くに水場がある。珍獣の食生活について水は同じく必要らしいのは観察で分かっている。毒でも撒けば楽に処分出来るが略奪品も……。
「穴という穴犯されて、珍獣孕まされた略奪品が村に戻って、夫は家族は愛してくれますか?」
両親は肯定でも否定でもなく沈黙していた。“前世”の記憶が騒ぐ。幼子が殺害されたから、親は自死したの? そう。待って、犯行は何分だっけ。何かで塗り潰して省略していない? 過呼吸。違う。記憶に矛盾はない、はず。はず?
「ソフィア?」
「はっ……、何でも、はっ……ありません。はっ……」
両親は“いつも”の発作だって思っている。落ち着け、私。記憶は嘘つく。“何か隠しているだろ?”誰の言葉? “××が自分で死ぬはずないだろ”。息が出来ない。母上に抱きしめられて、穏やかな鼓動で冷静になっていく。大丈夫、大丈夫、大丈夫……。
※※※
「ソフィアの言う通り、村人から忌み嫌われて村を追われた人も、……昔いた」
我が家の匂い。ちろちろ蝋燭の炎が煌めく。両親は隣の部屋で何やら会議中だった。もそもそベッドから抜け出し、節穴から覗く。
「どうしてあそこまで、巣が大きくなっちゃったの? まるで太らせたみたい」
「あの村は毎年、女の子の生け贄を3人“神”に捧げていた」
「あれが神? ただの獣じゃない」
母上は吐き捨てる。机には地図が広げられ、迷路のようなので洞窟の内部資料だって思う。
「軍は動いてくれないの?」
「征服地の小競り合いで、内政が混乱している。だから出せないって理屈じゃないかい」
「だったら、傭兵雇うのも一苦労よね」
「傭兵でも僕一人だって対処は十分出来る。でも、村人にも元は崇めていた神たちって、矛盾した気持ちがあって一枚岩じゃない。殺したら何て言われるか……」
私は両親の苦悩に触れ、やっぱ身の回りにある鉛の中毒が楽っぽい結論に至る。
「村人に討伐の説得はしているが、芳しくない。傭兵殺しもいるらしく反対派が庇ってる」
……あの村には殺人鬼も居るって話ですか。怖い。
「討伐して反対派が暴れたら鎮圧したら? 両方は立てられないし」
「反対派の中心は長老連中だからね、統制が崩れてしまう」
「爺婆の反対派が誰一人生け贄にならないのが、納得いかない」
父上も同感なのか反対派の擁護はしなかった。
「僕の命令で改宗してから5年が経つ、あの場所は早く制圧して放牧地帯にしたい」
お肉?
「あの村は特産品が全〜くなくて税が取れないから、早く誰かに売ったらいいのに」
「……牧草や水源が豊かで資産価値は高いから、もう少し考えよう」
父上、母上、私が生け贄になってゴブリンの巣に向かい、殺戮して帰ったら文句ないでしょう。