再犯措置
「えー、再犯者の犯罪数の多さを鑑みまして、この度法改正を行う事としました」
官房長官は、記者たちの前で原稿を読み上げる。
「再犯防止教育を行うんですか?」
記者の一人が尋ねる。
「いいえ」
「就労支援を強化し、経済的に安定させるんですか?」
「いいえ」
「ひょっとして、マイクロチップなどを埋め込んで、追跡監視するとか?」
「いいえ」
「お世話に……なりました」
四谷京作は、看守に深々と頭を下げる。
「今度こそ、真人間になって、今度こそ、二度と再びお世話になるような事は――」
「はいはい、期待してるよ、四十八号」
チョビ髭で言葉に茨城訛りのある看守は、出口の隣にあるドアのカギを開け始める。
「じゃ、出る前に、イタイのやるからね」
「いた……なに?」
「はい、すぐ済むからね」
「あの、何をやるって?」
「だからイタイの」
カギを開けながら、看守は応える。
「え? その、どういう?」
「だからイタイのやるのよ」
カギを開け終えた看守は、ドアを開き、手招きをする。
「さ、ここ入ってね」
「ちょっ、待って、さあって! 懲役終わった筈、だよねえ!?」
四谷は後じさりする。
「判決の時、懲役にプラスして再犯措置するって言われたでしょ」
「聞いたような、気はしますけど、具体的に何かをやるってのは知らされてなくて――でも、その」
「これやったら、もう二度と来る気にならないと思うな。ひょっとしたら無期懲役か死刑が良いって人が増えるかも知れないけどね、ハハハ」
爽やかに看守は笑う。
「笑い事じゃ、ちょっ、そんな事やんなくてももう二度と泥棒しないから、マジで、マジで!」
四谷の両脇を、手品のように現れた若い看守二人が、がっしりと抑える。
「この前懲役喰らった時もそう言といて、やっぱり再犯したでしょ。さ、入って。ほら、すぐ済むから」
「待てっ、ちょっ、ちょとっ!」
看守たちは四谷をひょいと持ち上げると、ドアの中へと運んで行く。
「痛覚神経を電気的にいい具合に刺激する事でイタくなるんだけど、一切身体に痕は残らないのよね。凄いね、今の技術」
「残酷な刑罰に当たらないの? ねえ、ねえっ!」
「だってこれ、刑じゃなくて措置だもん。それに安全性はもの凄い保証されてるよ。マッサージどころか肩たたきぐらいのもんだよね。ほーらすぐ済むから、イタイだけだから」
「せめて痛いは漢字で言って! カタカナ怖い、逆に怖い!」
「はーい、イタイですよー、ワン、ツー、スリー!」
読んでいただき、ありがとうございました。
看守はつまり、マジシャンのマギー司郎のイメージ。
主人公の四谷は、スターシステムなので通常は他作と別人です。
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