彼女への疑念
首無し騎士が倒されたのは良い……来斗にとって、それは勿論、喜ばしい事だ。だが、問題なのはその倒し方だった。
なぜ、不死者の王と言われる吸血鬼の彼女が、聖(光)属性の魔法が扱えるのか……。本来は不死者の属性は先ほどのように、闇属性である事が通例である。
むしろ……聖属性は苦手とする属性なのではないか。そんな彼女がなぜ、平然と聖属性の魔法を使う事ができたというのか……。
「不死者である吸血鬼は本来は闇属性のはずだ……。ティア……吸血鬼であるはずの君がなぜ、本来使えないはずの聖属性の魔法を使えるんだ?」
「それは……」
ティアは口籠もった。
「別に、言いたくないならいいさ。俺達は仲間と言っても、知り合ったばかりの関係なんだ。 それに仲間だからって何でも打ち明けなければならない事はない……。秘密がある事と信用してないという事は=(イコール)じゃない……と、俺は思う」
来斗はそう語る。知らない方が良い事というのは確実にある。特に味方の弱点や癖なんかはそうだ。本人が鉄の心で語らないように心がけていても、相手がテレパシーなどのスキルを保有している場合、読まれる事もあるだろうし。洗脳のようなスキルで、自分の意思すら相手に屈服されてしまうかもしれない。
一部の職業や種族はそう言ったスキルを有していた。そう……ティアのような吸血鬼もまた、そういった、あいてを洗脳して、自身の洗脳下に置くようなスキルを持ち合わせている事も多かった。
そういった危険を避ける為にも、仲間には敢えて情報を伝えないという方法はよくある事だった。
仮に捕らえられ、尋問されたり、先ほどのようにテレパシーや洗脳のような手段を使われたとしても。
そもそもの話として重要な情報自体を知らなければ、聞き出す事は不可能なのだ。人間は誰しも、知らない事を語る事はできないのである。
「戦略上、有益な情報じゃなければ別に言わなくても良い。有益じゃない事まで相手に包み隠さず伝える必要はないんだからな……」
「いえ……別に秘密にしたいとか、そういうわけではないです……ただ、思い出したくない事だったので……」
精神的な傷という奴か……誰にでもあるだろう。来斗にだって、勿論ある。幼い頃に両親を交通事故で亡くした……あるいは、学校で陰湿なイジメを受けていた。両親から虐待を受けていた。順風満帆な人生を歩んでいる者はそう多くはないはずだ。
誰だって、大なり小なり、そういった精神的な傷を背負って生きている。種族が変わったとしても、そういった精神的な傷は生きていく上では避けられないものであった。
だから彼女が精神的な傷を負っていたとしても不思議ではないし。それを無理に聞き出す理由もなかった。来斗はそう考えていた。
「言いたくないなら無理に言わなくていい……思い出したくない事は思い出さない方が良い……そう俺は思う」
来斗はそう諭す。
「確かに……その通りです。思い出したくない事は無理に思い出さない方がいい……ですが、話す事で楽になる事もあるはずです」
彼女は一転して、強い瞳でそう語りかけた。そうだ。話す事で楽になるという部分もある。不安や悩みは解決して貰わずとも、ただ打ち明けるだけで楽になる事は往々にしてよくある話だった。
彼女がその精神的な傷を語る事で、楽になれるというのならば、来斗は別にその行いを止めるつもりはなかった。
そしてティアーー、彼女は語り始めた。自らの過去を。




