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35.凡は未だ下水道にて練る

 #η


「具体的にどうするつもりなんだ?」


 協力するとは言ったが、何をすればいいのかわからない。いつまでもこんな空気の淀んだ場所に居着くわけにもいかないだろう。


「至って簡単ですよ。一定期間、彼女を賢者たちから引き剥がす。これだけです。彼女が兵器たる所以は賢者たちの定期的な整備と魔祖樹との契約によるもの。瞑想期とは要するにそれを施す期間に過ぎないわけですよ」


「おお?」


 何らかの知識を有している前提で話を進められても困るのだが。


「はぁ、相変わらず飲み込みの悪い。いいですか?兵器といいましたが彼女の基礎は人間そのものです。賢者たちは洗脳魔法を用いて、人格を完璧に破壊し、彼らにとって都合の良い人形を造り上げました。あとは魔祖樹の根を心臓に埋め込み、魔祖樹の一部だと認識させ、魔力の同期を行えば完成です。しかし、魔祖樹も愚かではない。少しでも異なる魔力を感じればその部分を異分子とみなし、徹底的に排除します。そのため、定期的に魔祖樹と接続し、魔力を均す必要があるのです」


「逆に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()ってわけか」


「その通り。その時点で彼女は兵器として機能しなくなります。賢者たちも彼女の魔力を抑えていたようですが、僕の手にかかれば他愛もないことでした。年が明ける頃には彼女は自力で魔力を蓄えることができるようになるでしょう」


 年明けが期限か。あと一週間足らずをどう逃げ切るか、だな。だが、それにしてもだ。


「やけに詳しいな。まるで今までずっと見てきたかのように話すじゃないか」


「ええ、かつて僕はその研究をしていましたからね。なぜかクビになってしまいましたけど。ま、それでもあの分野で僕の右に出る者はいなかったんじゃないですか?そもそも、この理論体系を確立したのは僕の仮説があってこそであって、この子の存在もこの僕の知能なくして有り得なかったというわけですよ」


「じゃあ、お前が諸悪の根源だと?」


「そうだ。だからこそ、僕が責任を取らなくてはならない」


 いつになく重苦しい表情をするアリギア。


「ミイネの素体は僕の弟子とも言える人物だった。その子が知らぬうちに、過去に己が生み出した遺産の被害者となっていたんだ。これほど屈辱的で慚愧なことがあるとでも?その時、生まれて初めて自分の才能を呪いましたよ。どうして、こんなものを生み出したんだってね」


 彼が悔いていることは確かだ。嘘もついていないようにみえる。しかし、どうにもその言葉が鼻につく。言い方が悪いのか?言葉選びが下手なのか?それとも単に俺自身が気に入らないだけなのか?


「僕とミイネはこのまま誰にも知られずにこの国から脱出するつもりです。僕らは君を含め、既に全員の顔が割れている。君はともかくとして、僕たちはもう表舞台には戻れないでしょうからね」


「行く宛てはあるのか?」


「なんとでもなりますよ。今は彼女をこの国から逃がすことが先決ですから」


「なら─「エヴンダ王国には行けませんよ。あの国は少々不都合です」


「何だと?」


「行くとするならばべルシアですか。伝手もないことはありませんしね。現状だと一番現実的な場所でしょう」


「待て。なぜエヴンダだと不都合なんだ?そんなに俺の事が信用できないか?それともなんだ?あの国で犯罪でも犯したか?」


「それに関しては今の君には分からない事象です。正直、これまでの会話すら正確に伝わっているかどうか怪しかったのですが、会話自体は成立しているようなのでおそらく問題はないという前提で進めています。それは間違いないですか?」


「いきなりなんだ?論点が天を駆けていったぞ。まずは俺の質問に答えろよ」


「だから、答えたところで無駄なんですって」


 ……ふむ、これ以上の詮索は止めておいた方が賢明ですか。僕の第六感がこんなにも警笛を鳴らすなんて、()()()()()()ですよ……。


「ケンカはダメ、二人とも仲良くして」


 険悪な雰囲気を感じ取ったのか、今まで黙って会話を聞いていたミイネが口を開く。


「大丈夫ですよ、ミイネ。こんなもの、喧嘩のうちに入りませんから」


 空気を読み、場の仲裁までするようになりましたか。やはり、破壊されたとはいえ元の人格の影響を大いに受けていると断定していい。けれどもし、彼らの魔法が完全に彼女を破壊しきれなかった、否、()()()()()()()()()()()()()()()と仮定するならば、時が経てば経つほど状況が悪化する可能性が高い。


「とにかく、僕たちの行き先はべルシアです。本当は直行で行けるのが好ましいのですが、この国からだとエヴンダを経由しなければなりません。その際に君の助けが必要になる。頼めますか?」


「はぁぁ、まぁミイネのためだ。断るわけにはいかねぇよ」


 そう。それでいい。君とミイネとのこれ以上の接触ははっきりいって不安要素しかない。なるべく早く、この脱出劇を終わらせなければならないのです。けれど、僕たちの魔力ではこの国で探知されてしまう。だから、このローブで魔力と気配を遮断しつつ、生身で移動するしかない。すなわち、()()()()()使()()()()()()()。だから、君の助力が鍵となるのです!

 そんな単純な事、君には言わずともこの状況から理解できていると先生は信じてますよ。

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