34.凡と無口な少女
どうも、お久しぶりです。
実はコロナに罹っておりまして、かなり長い間苦しんでました。
おかげで、考えてた構想も全部焼かれてしまってまた一から考え直しです。
この後遺症でタチが悪いことに今まで物語がスラスラ浮かんでいたのに一気にスランプ気味へと陥ってしまいました。どうにか考えて書いているのですが、誤字脱字や不適切な表現など文章にムラがあるかもしれません。後に校正する予定ですが、何か文章において修正すべき点や物語全体における致命的な点があれば教示していただければ幸いです。
長くなりましたが、これからもこの物語は書き続けていく所存なのでよろしければどうぞお楽しみください
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「それで、君はどうしてこんな場所にいるのかね?もう何年も前に飛び出したきり、なんの連絡もせずにいると思ったら今度はこんな見窄らしい姿になっているではありませんか。それになんですその子は?君の子ですか?母親はどうしたのです?」
「ひとまず落ち着きましょう、スパ先生」
アリギアがエキスパを宥めるが、エキスパの質問攻めは終わらない。今まで一体何をしていたのか、どこで暮らしていたのか、今もなお、活動は続けているのか。繰り出される言葉の機関銃に、アリギアは強引にその口を塞いだ。
「ええい!貴方は相変わらず私の話を一向に聞かない!」
「消す?」
首を傾げた少女がいつの間にか足元に佇んでいた。
「いやいやいや!君は君ですぐそうやって他人を消し炭にしようとしないで!あああ!もう!どいつもこいつも落ち着けよおおおお!!!」
アリギアの悲壮な叫びが路地裏に響く。
「あ、まずい」
ケロッと正気に戻った彼は何かを察したようで、少女を抱え、足早にその場から去っていった。
「此処かっ!」
入れ替わるように入ってきたのは何やら物々しい雰囲気を醸し出している集団であった。
「むっ、貴様は確かかの魔法店の店主だな?どうしてこんな所にいる?」
「此処は私の店ですよ?問うべきは私から貴方たちへ、だと思うのですが?」
「ふっ、こんなボロ小屋が店だと─ぐあっ!」
嘲笑を零した男が後ろにいた大柄な男に殴り飛ばされた。
「頭を下げよ、痴れ者が。たかが役人の三流魔法士ごときがこの国の宝になんという態度だ」
そして、その大柄な男はものすごい勢いで地面に頭を擦り付けた。
「エキスパ尊師、我が部下の非礼、どうかお許しいただきたい!!」
「い、一師殿!?何をッ!?」
「そうですよ!そんな大袈裟なことをしないでください!それに、尊師だなんてそんな大層な称号はいただけないと賢者たちにお伝えしたはずです!!」
「いいえ、貴方はもうこの国で賢者の次に権力を有する者なのですよ。いくら足掻こうと、逃れられませんから」
尊敬の眼差しに入り混じる冷淡な思惑。エキスパは唇を噛まずにはいられなかった。
「ところで、ここには貴方一人で?」
「え?」
視線を動かせば、そこには彼らしか映らない。
「えぇ、そうですよ」
消えた三人の存在を知った仄めかすことなく、エキスパは冷静に答えた。
「そうですか……」
当人はそのつもりであろうが、僅かに漏れ出る機微を見逃すほど、イスカンダルの役人は甘くなかった。
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「ふぅ、どうにか逃げ切れましたかね」
下水道の片隅で額の汗を拭うアリギア。その足元には一人の少女と王子が転がっている。
「って、なんで君も一緒に居るんですか!?」
「俺が聞きたいよ。ナニカに首根っこ掴まれたと思ったら、景色が転々として気づいたら此処だ。なあ、お嬢さん?」
「なっ!?何やらかしてくれてるんですかミイネ!?コレはね!一国の王子なんですよ!?君という爆弾を抱えながら別の爆弾を抱える余裕なんてないんです!」
初対面の人間を爆弾呼ばわりとは大層なご身分だな。殴っていいか?コイツ
「ぷいっ」
今、声に出てたよな?なんだそのぶりっ子要素は。お前は物言わぬミステリ少女じゃないのか?
「いや待てよ。これも巡り合わせか……」
アリギアはなにかブツブツと呟いたかと思うと、吹っ切れたのか、思い切り顔を上げた。
「端的に話します。一度しか言いませんからね。この少女はミイネ、このイスカンダルで開発された人造魔法兵器です。彼女はこの国の巫女として崇められるはずでした」
巫女。なんだ巫女って。そんな一度聞いたら忘れられない称号がこの国にあったのか?なんで、俺はそれを知らないんだ?俺は王子だろ?他国のお偉いさんのことなら知っておかなければ─「聞いてますか?」
「あ、あぁ」
「そうして、僕は彼女を保護したのです。このようにもう手遅れでしたが、それでもあのまま放って置くわけにもいかなかったのでね。まったく、誰のせいでこんな考え無しになってしまったのか」
ため息を吐きつつも、その口元には笑みが見える。そして、ポンポンとミイネと呼ばれる少女の頭を撫でた。
大部分を聞きそびれたが、とりあえずコイツにとってこの子は特別な存在なんだな。
「だが、この子が既にこの国にとって不可欠な存在になってしまったことも事実。イスカンダルという国にミイネは直結してしまっているのです。魔法学的にね」
「つまり、どういうことだ?」
「ミイネは器です。イスカンダル、ひいてはこの国に鎮座する魔祖樹から溢れる魔素を蓄積し、放出するための人柱になっているのですよ」
「なっ!」
なんという非人道的なことをしているんだこの国は。こんな幼気な少女までをも利用して、戦争でもおっぱじめるつもりか?
「幸か不幸か、最初に気づいたのが僕でよかった。いや、あの場で気づけるのはもう僕しかいなかったのか。どちらにせよ、賢者たちはこの子を死に物狂いで取り返しに来るだろう。……それを聞いた君はどうする?」
君はどうする?と来たか。聞けば聞くほど、面倒な問題だ。はっきり言って関わるメリットはない。ましてや、王族である俺がおいそれと関わってしまえば大きな国際問題に間違いなく発展する。とすれば、だ。
「見逃し難い事態ではある。だが、俺は知ってのとおり他国の王子だ。この国の内政に関わるであろう事件に軽々しく手を出す訳にはいかない。この件は一度帰国してから、公式にイスカンダルへ問い合わせるということにしよう」
それが最善。あくまで外部の圧力として関わることが重要だ。俺はまだ行方不明として扱われている。そんな人間が、実は攫われた重要人物と一緒に居ましたなんて怪しすぎる。イスカンダルがエヴンダに抗議する大義名分もバッチリだ。王子として、国にそんな迷惑をかける訳にはいかない。
「枯れましたね!かつての君はそんなモノじゃなかった!!それに、花序の少慰を芝、黄身は金ズ、狂う!子乃は魔ンだ!見からいか!」
「わかったわかった。その言葉は俺には聞き取れないから共通語で話してくれ。それに、俺にも立場ってものがあるからさ。悪いが納得してくれよ」
捲し立てるアリギアを宥める。彼はほんの少しだけ俺の瞳を見つめたかと思うと、項垂れながら震えた息を漏らした。
「せっかく連れてきてもらったところ悪いが、一旦サヨナラだ。ま、そう落胆するなよ。別に何もしないわけじゃないんだ。帰ったら、ちゃんと賢者たちに………」
少女が裾をクイクイと引っ張る。
「悪い、お嬢さん。今は君たちを助けられない」
「別に助けて欲しくない」
「じゃあ、なんで俺を連れてきたんだ?」
「なんとなく一緒に居たいから、それじゃだめ?」
問いかけるのは俺ではなく、アリギアへ。まるで親に玩具を強請る子どものように。
「はは、我儘が言える程度まで人格が成長しましたか。思ったより、その面の成長は早そうですね」
顔を上げたアリギアの瞳には薄らと涙が滲んでいた。
「それでも、君はその腕を振り払いますか?外」
「……!」
《理由?理由なんているの?一緒に居たいってだけなのに?》
《それでも、御前はその腕を振り払えるのか?》
「ゔ」
《ね?タクト》
《どうなのだ?タクト》
「ゔぇ……」
言葉は引き金。それは時として還らぬ思い出をも想起させるのである。だが、それはノスタルジックすら軽々と通り越し、未だ燻り続ける怨恨と後悔が吐き気を連れ添って走馬灯へと写りこんでくるのだ。刻み込ませるように。決して忘れさせないようにと。
「大丈夫?」
無機質な少女の瞳が心配そうに揺れる。ああ、どうしてそんなことが分かるんだ俺は?心配そうだと?無機質なのに?
「大丈夫だよ、マロン」
「ミイネ……」
「あ、悪い。ミイネだな、ありがとうミイネ」
「た、拓!呂の小兎若田でか!」
いきなりアリギアが両腕を掴んでくる。相変わらずの母国語で脳はもはや言葉を捉えることすら諦めた。
「あ゛〜俺の負けだ!協力してやる!お前らのこと助けてやるよ!」
「よしよし、それでこそエヴンダの王子ですよ」
唐突に何言ってんだこのおっさん。というか俺、名乗ったか?王子とは言ったがエヴンダとは言った覚えはないぞ?
「一緒に居る?」
ミイネが裾を一段と強く引っ張る。
「あぁ」
「にへっ……」
初めて見せた彼女のぎこちないハニカミはどこかで見た満面の笑みと重なって見えた。
これからもよろしくね




