表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/38

11.凡凡は本がお好き

##


「殿下、本日の予定は、特にございません」


「そうか、ご苦労。メイド、今日は一日書斎にいるから、食事の時間になれば呼んでくれ」


「メ─「では、頼む」


 そう言い残して、タントは部屋を出る。書斎は本館三階にあり、タントの部屋からは近く、出て右に数10mほど歩いた位置にある。先日はその短い距離でジュリベーナに捕まってしまったが本日はそのようなこともなく、無事に書斎へとたどり着いた。


「あ」


 部屋を開けると、既に先客がいた。声を挙げたのは三男のラスバと次女のラディナ、その他令嬢たちだ。


「何用ですか、タント兄様」


 ラディナが鬱陶しそうに尋ねる。他の令嬢たちの表情もよろしくない。ラスバは興味がないのか無表情だ。


「書斎に用と言えば読書しかないだろう。それにお前らこそ、わざわざこんな小さな書斎に用があるなんてな。ここにはお前らが読むような本はないと思うぞ」


 タントの言う通り、ここには児童書や大衆小説のようなものはないとは言えないが、ほとんどは国で編纂された記録やあるいは歴史書しかない。彼らが辛うじて読めるとするならば、最近、新たに改編されて読みやすくなったエヴンダ国記だろうか。


「兄様がこの書斎を私物化していると聞いたのでそれを確かめに来ました」


 ラスバは表情を変えず、淡々と言葉を放つ。


「なるほどな。お前も自室以外に部屋が欲しくなったか。アルスタ兄様は東館、ディーンは演習場、そして俺はこの書斎だ。ラスバ、お前は父様に何を頼むんだ?」


 私物化といっても公共的な場には変わりなく、人の出入りは自由に行われる。ただ、他の者より融通が大幅に利き、また時によっては管理者並の権限を有する。実質的に私物化といっても変わらない。


「...いえ、僕はなにも」


「そうか」


「タント兄様、失礼なことを聞かないでくれる?ラスバはそんな卑しい子じゃないから。兄様みたいな強欲と一緒にしないで」


「よく口が回るな、ラディナ。そこまで言われる筋合いはないと思うのだが」


「ふん!他の兄様たちは功績の上でその場所が寄与されてるのに、タント兄様だけ何の功績もなしにこの書斎を私物化してるじゃない!言われる筋合いがないですって?それはここが小さな部屋だから?恥ずかしげも無く、そんなことがよく言えますことね!それに普段から他の兄様たちと違って─「もういいよ、行こう、姉様」


 興奮しているラディナを尻目に退屈そうにしていたラスバは、ついに堪えきれなくなったのか、姉の袖を引っ張る。


「もう一度、自分の身の振りをよく考えてよね!」


 ドタドタと部屋を退室する一行たち。ラスバ以外はタントを睨みながら出ていった。



「全く以て、女子とは恐れ多いものだ」


 タントは椅子に腰を掛けて、一息ついた。


  やはり、女は目立った魅力が好みなのか。確かにラスバは男子とは思えぬ可愛らしさがあると思うが。それほどまで惹き付けるか。


 これは将来、女難に苦しめられるぞ、とタントは苦々しく笑った。




  僕が兄さんの書斎に入った目的はひとつ


  彼が()()()だったときに書いていたという手記を見つけるため


  僕は彼のことを知らない


  また、彼も僕を知ろうとしない


  他の兄さんたちは彼に一目置いているがその理由が分からない


  姉さんたちが騒いでくれたおかげでタント兄さんは僕から注目を逸らした。その隙に机の引き出しを解錠し、中身を全て取り出す。どれが目的物かは知らない。だから、全て持っていく。


  後は姉さんたちを引っ張って部屋を出るだけだ


  兄さんは僕に何か言いかけたが、無視して部屋を出た


 


 

  部屋に戻り、姉さんたちも追い払う


  誰も見ていないことを確認し、その手帳大の本を開いた



   懺   悔


  その二文字がデカデカと目に入る


  それからは、暗号化されていて読めなかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ