第四話
「カナタ、絶対、赤をマイカラーだとおもってるよね」
そんなメンバーの会話が耳に飛び込んできた。
『赤』
分かる、太陽、火、リンゴ、血……赤という色を理解として知っている。
俺には白と黒の中間、くらいにしか分からない。
見えているのは明暗のちょうど真ん中だ。
色が見えないことを、俺はなかなか言えなかった。
俺が色のことを言わないせいで、命取りになったことがある。
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命の恩人だから一生慕うと決めた。
一生涯尽くすと判断した当時の自分は若く愚かだった。
俺もカナタの役に立てると思っていたが、今はどうだろう。
本当は、足手まといなんじゃないか、そう自己嫌悪に陥る毎日だ。
普段陸で書類仕事だけしていれば困ることのないであろうに、なんでおれは冒険者になったんだと常々思う。
色を識別できないせいで紺碧の海も、むせかえるような緑も見えない。
冒険者になることで常に自分で自分の首を絞めていた。
そこまで自分を追いつめ、なぜこの職を続けるのか。
それは単にカナタの隣に居たかったからだ。
カナタの傍にいるためなら、俺にできることはなんでもする。
カナタにそんな一目ぼれのことなど言えるはずはない。
俺が出来ることは人のやりたくない仕事を率先する、それに尽きた。
クロとはずっと一緒にいるのに得体が知れなかった。
俺がクロを恐れていたこと、クロは感じ取っていたと思う。クロも本音を言わない。
自分のことを言わない3人が揃えば、それはもう……表面上の付き合いしかないじゃないか。
本当は、二人に何一つ勝てないんじゃないか。
人間の能力は突起しているところ、陥没しているところ、でこぼこで2面性を兼ね備えている。
完璧な人間などいない。
コンプレックスがない人間などいない。
そう理解しているが、俺は二人に一つでも秀でたところがあるのかわからない。
戦闘はクロより一枚上手だと思うが、それでさえ演技なのではないかと疑っている。
医療も戦闘も天才なカナタとムードメーカーでダークホースで底知れないクロ。
俺は二人をリスペクトしている。
這ってでも追いつきたいと死に物狂いで食らいついた。
互いにリスペクトがないと関係は崩壊するという。
カナタが俺を連れてってくれたのは目的のために人手が欲しかっただけだだろう。
それを良いように利用した、一目惚れだったのかもしれない。
実際そんなに深く考えてなかったのだろう。
俺はカナタのために何かできると思った?
俺はクロの相棒だと思った?
考えが甘く、幼く、視野が狭くて世間知らずだった。
そんなのはただの愚かな思い上がりだ。
そのことに、俺はだんだん気づいた。
能力の低い人ほど根拠のない自信に満ちあふれている。※ダニング=メンバーガー効果
それは、本当は、自分の自我を通す度胸がないのかもしれない。
意見がぶつかって罵倒を飛ばされ突き放されるのが恐ろしい。
そういう致命的な崩壊を無意識に防ぎ、バランスを保っているのではないだろうか。
自分の事すら、きっと死ぬまで理解できない。
ただ、かたくななカナタに俺はいつも迎合する。
その事実さえあればいい。
俺は、自分が可愛くて、なぜ俺を連れて行ってくれるのか、本当のことをいまだ聞けない――。