商業都市の情報屋
店員さんがお酒の入ったカップを持って従業員用の階段を登って行くのを見ながら、メルナが聞いてきた。
「お姉様、これは一体どういう事なんですか?」
「……簡単に言うと、情報屋だね。」
「それにしては随分と勿体ぶりますね。
こんな所にいる情報屋なんて、自分から客を探すものじゃないんですか?」
メルナは最もらしい事を言うが、少しだけ間違っている。
「確かにそうだけれど一部例外が居てね、普通とは違う情報網とか、古参の信頼のあるような情報屋は、自分から探さないって事もあるわよ。」
「そうなんですね…情報収集なんてあんまりした事が無いので、知りませんでした。」
メルナは真面目な表情で話を聞いていると、さっきの店員さんが降りて来たのだが、さっきよりも状況は悪くなっていて、体全体が石で出来ているのでは無いかというような感じであった。
「あの、すみませんお客様、受け取った方が会って直接お礼がしたいとおっしゃっていて……」
「解ったわ。じゃあツレと一緒にお願いできるかしら?」
すると店員さんは「少し聞いてきても宜しいでしょうか。」と聞いてきたので、「お願いするわね。」と返しておいた。
少しすると、また店員さんが帰って来て、「『別に連れてきても良い。』とおっしゃっていました。」と言ったので、私とメルナは店員さんが行ったり来たりしていた、少し狭い階段を登って行き、古ぼけた外装とは似合わない清潔で落ち着いた色合いの廊下を歩いて、ちょうど廊下の中央部辺りにある、質素な扉の前に立った。
「それでは私はこれで。」
店員さんはやはり、カクカクと不自然な動きで戻って行った。
私は軽く扉を2回ノックすると、「どうぞ」という、中性的な声が帰ってきた。
そして、扉を開けると、これまたこの建物どころか、この貧民街には到底似合わないような、清潔ながらも豪華な装飾等が部屋の随所に施された部屋があり、その部屋中心に置いてある執務机に金髪の人物が座っていた。
その人は、エルフの特徴の一つである耳が長く尖っていて、メルナと同じようにスレンダーな体型をしているのだが、その中でもやはり特徴的なのはその顔つきであり、とても整った顔つきなのだが、性別がどちらなのか解らないのだ。
唯一判断できる材料とすれば服装で、一番解りやすい表現だと中世の貴族の男性が着ていそうなデザインの濃い緑の服からしか推測できない。
「とっても久しぶりだね、クロノス。
あの2つ名をきいた時には、このボクも相当驚いたよ。」
机に座っている声の主は、優しく私に声をかける。
「だって、多分100年とかそれくらい前に会ったキリだもんねぇ。
それにしても……やっぱり昔と変わっていないね貴方の男装趣味。」
そう言いながら、私は執務机に座っている声の主をジッと見つめた。
隣のメルナは目を白黒させながら、私と彼女を交互に見ていた。
「ハハハ!別に良いじゃないか。」
彼女_リジーナはそう豪快に笑う。
「否定はしていないわよ。ただ、なんだか懐かしいような感じがしたから言っただけよ。」
実際、リジーナはきちんとした格好をすれば、隣を通れば誰もが振り向いてしまう美女なのだが、私が初めて会った時からこんな格好なのだ。
「あの…お姉様……」
メルナの方はやはり状況が飲み込めていないようだ。
「あら、そちらのお嬢さんは?とっても可愛いじゃないか!
ボクのお嫁さんにならないかい?」
リジーナは、席から立ち上がってメルナの事をよく観察しはじめた。
「え?……」
一方のメルナは状況がさらに解らなくなり困惑している。
「全く……彼女の名前はリジーナ。
性格はこんな感じで女の子が大好きだけど、情報屋としてはこの商業都市随一よ。」
「はぁい、ヨロシクねお嬢さん」
リジーナはメルナに握手を求め、メルナの方も完全に押されながらも、困惑しながらもそれに応じた。




