それから300年後
今回は主人公は出てきません
「ここが迷いの森か…改めて来ると凄く広そうな森だな。」
大剣を背中に背負った、二十代後半位の戦士の男がそう呟いた。
「当たり前じゃん。この森は何百年も前からある森なんだから。」
後ろから少し呆れたような口振りで、戦士と同じ年位の魔法使いの女がそう言った。
「早くギルドから依頼された森の探索をして帰ろうよ!」
今度は別の方向から身軽そうな服装の十代後半位の斥候の少女が跳び跳ねながらきた。
「僕の事を忘れないでくださいよー」
息を荒くしながら最後に来たのはローブをきた二十代前半位の僧侶が歩いてきた。
「…よし!全員揃ったな。全員解っていると思うが説明をしておく、今回の依頼は定期的にギルドが出している“迷いの森„の探索だ。」
「そんな事解っているからさぁ。早くちゃちゃっと終わらせて祝杯をあげようよ。」
だだっ子のように不機嫌そうに、斥候の女が文句を言っている。
けれども、それを無視するように戦士の男は話を続けた。
「だが、この森に入った一部の冒険者が行方不明になっている。おそらくだが迷子になってだ。だから個人行動等を各自しないように。」
そう戦士の男が戒めると、三人は頷き森に入っていった。
パーティーが森に入ってから五時間ほどがたった。
「ウラぁー!!コイツで終わりだっ!」
戦士の男が大剣をゴブリンに直撃しゴブリンは首を落とされて即死した。
しかしその隙を付いて、小刀を持ったゴブリンが横から襲いかかる。
「『紅蓮の炎よ貫け ファイアーアロー』」
だが、それを見越していたように魔法使いの女が魔法を唱えた。
するといきなり何も無い所から真っ赤に燃えている矢が生まれ、ゴブリン目掛けて飛んで行った。
「ゴ…アアァ。」
そして魔法使いが放った矢はゴブリンに直撃した瞬間、ゴブリンの体が焚き火のように燃えたのだった。
「取り敢えずゴブリンの集団3つ目撃破っと。」
戦士の男がそう言うと、僧侶の男が不思議そうに。
「でも何でこの森は魔物が少なくて、代わりに獣等が多いんでしょうね?これくらいの所だったら、もっと遭遇していたって何もおかしく無いのに。」
「さあな、そんなことは判らん。」
そんな会話をしながらパーティーはさらに森の奥に進んで行った。
それからさらにパーティーが森に入って2時間がたった。
「 リーダー、おかしくないですか?ここ二時間位、魔物どころか獣すら見てませんよ。
何かあるんじゃないんですか?」
僧侶の男が不安そうにそう言うと、リーダーである戦士も同調した。
「…俺もそう思ってた所だ。
だが、念のためだ奥に進んでみるぞ。」
「別にどーでもよくない?というかワタシ森の偵察もう飽きたしー」
斥候の少女はそう言うが戦士の男はある仮説を立てた。
「だがもし、魔物がいない原因がドラゴン等のAランク級、Sランク級の魔物がいるためだとしたら?
俺達の街や行商人、旅人が襲われるかもしれない。」
「「「!!!」」」
他の3人は、ハッとした。
確かに可能性としては低いが、万一にも本当に居たらそれこそ国の危機となるのだ。
「だから、確認をするために森の奥に向かうんだ。
なぁに、何もなければそれで良いじゃないか。」
「それもそうね。」
「確かに確認するだけしたほうがいいかもしれないですね。」
「それもそうだねぇ。しゃーない、もうちょっと頑張ろー。」
戦士の男、魔物使いの女、斥候の女、全員が賛成した。
「じゃあ、私は先に向かって…」
その時だった。
突如、少し先の木の上から、赤い閃光が真っ直ぐ飛んできて、避ける間もなく斥候の女の頭を射抜いた。
メンバーの僧侶がすかさずに回復しようと近づこうとするが、もう手遅れだと直ぐに解ってしまった。
「敵襲だ全員戦闘準備!お前は回復魔法をナミラに使って回復させろ!」
戦士の男は、的確な指示を出して敵に備えたのだが、敵は予想してい無かった、頭上から襲って来た。
「もらったぁ!」
「うわぁぁぁッ!」
いきなり現れたのは、黒髪の赤い瞳を持った少女だった。
少女は重力に従い飛び降りるように現れたかと思うと、刀身が赤く光るレイピアのような物を持っていた。
「ネロ!避けろ!」
戦士の男がそう言ったが、ネロと呼ばれた僧侶は、既に心臓を刺されて即死していた。
「さっきナミラを攻撃したのはお前か!」
怒りがこもった声で戦士がそう言うが、一方の少女は無関心そうに口を開き「さあ、どうだろうね。」と答えた。
「白を切るか!」
男は、襲って来た女に向かって大剣を構えた。
「……そんな剣で私に勝てると思っているの?」
少女はそう言いながらも剣を向けた、その時だった。
「『紅蓮の炎よ貫け』 ファイアーアロー」
少女が戦士の方に気を取られている内に魔法使いの女がそう言うと、真っ赤に燃える矢が襲って来た女に飛んで来た。
しかし少女は、それが解っていたように後ろに数歩下がって避けた。
「魔法をこの距離から避けた?!」
絶対に当たると思っていた一撃を避けられた魔法使いは、戦闘中にも関わらず取り乱していた。
「そんなことよりもお前、狙われているの気付かないのか?」
「えっ…」
すると少女の言っていたように、魔法使いの女の左側から、赤い閃光が飛んで来た。
魔法使いの女は避けるどころかその閃光を確認することなく頭に当たると、その場に倒れたのだった
「マライア!」
「私に気を取られているから当たったんだよ。まあ多分、正面から飛んで来ても当たったと思うけど。」
少女は冷静に言うが、男の方は頭に血が登り、目が血走っていた。
「…お前、絶対に許さん!」
戦士の男は女に向けて今までよりも強い殺意を向けた。そして大剣を女に向けて大きく振ったが、その一撃を最低限の動きで女は回避した。
「お前のせいで仲間が死んで行った!だから早く俺に殺されろ!」
「君、面白い事を言うね。誰が好き好んで、殺されたいと思うのかな。しかも例え君の攻撃が当たってもダメージは受けないと思うよ。まずレベルが違うから。」
少女は呆れたようにそう言った。
「もうそろそろ話も聞き飽きたから死んでね。」
女は細いレイピアのような赤く光る剣を再度構え、男が振り下ろした大剣と当った。
「もらった!」と確信した戦士だったが、次の瞬間には男の大剣は、二つに切れたのだった。
「なんだ…と…」
それは、これまでに何百回と戦闘はしてきた中で初めての経験で、つい呆気に取られた。
だがそれを逃してあげるほど、優しいその隙に心臓目掛けて剣を突き刺した。
「もらったよ」
「が…ァ」
戦士の男はその場に倒れたのだった。
「…残念だったね。これが戦った回数と武器の差だよ。」
そう言いながら女は森の奥に歩いて行った。
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