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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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ホラー

きっといる、あなたの近くに。

掲載日:2017/05/01

 人を殺してみたい。

 小さい頃から、ずっとそう思っていた。


 誘惑に駆られて、初めて実行しようとしたのは、小学生の時だった。

 階段を降りている時に、前にいた男の子の背中を、押してみたのだ。

 その子のことが嫌いだったわけではない。そもそも、私はその子のことを知らなかった。

 ただ、その子が階段を転げ落ちて死んだら、面白いなと思ったのだ。

 結果的に、その子は転んで、足と手を少しだけ痛めた。

 期待はずれの結果ではあったものの、私はとても興奮した。

 そして、きっといつか成功させたいと思った。


 でも、私は先生に叱られてしまった。

「どうしてこんなことをしたの!?」

 私の担任だった女教師は、私が他の子に怪我をさせたと知って、とても怒った。

「面白そうだったから」

 私は正直に答えた。

 すると、先生はますます怒って、人を傷付けてはいけないとか、それは悪いことだとか、延々と説教した。

 馬鹿じゃないか、と思った。あんなに楽しいことをしちゃ駄目なんて、理由が全く分からなかった。

 でも、その先生は大切なことを教えてくれた。

 それは、誰かを傷付けると面倒臭いことになる、ということだ。

 それからはなるべく大人しくした。人を殺したら叱られるからだ。


 それから暫くして、私は野良猫を殺す計画を立てた。

 人から餌を何度も貰っているらしく、かなり無防備だったから、簡単に殺せるだろうと思ったのだ。

 餌を貰えると思ったらしく、警戒することなく近寄ってきたその猫を、私はナイフで刺した。

 猫は、叫ぶように鳴いて逃げ出した。

 子供が料理に使うような、小さなナイフでは猫も殺せないということを、私はその時に知った。


 その後は、猫のための餌と、もっと大きな刃物を準備した。

 初めて猫を殺すことに成功した時は、興奮しすぎて震えが収まらなかった。

 でも、その後皆が大騒ぎをしたので、私は動物を狙うこともやめた。

 この辺りに危険人物がいる、などと盛んに注意喚起がなされたが、私が疑われることは無かった。

 私の両親は、「変な男がうろついている」「子供を狙ったらどうしよう」などと、的外れな心配をしていた。


 中学生になる頃には、テレビやインターネットで様々な知識を得ていた。

 人を殺す方法はたくさんある。それを知って、私はとても嬉しかった。

 こんな方法で人を殺してみたい! こんな方法で人を殺せたら、どんなに楽しいだろう!

 そうして空想をしている時間は、とても楽しかった。


 アニメとか、ドラマとかには、人を殺すのを楽しむ登場人物がたくさん出てくる。

 中には魅力的なキャラもいた。でも、大抵のキャラのことは理解できなかった。

 そういうキャラには、人を痛めつけることを楽しむ描写が多かった。その理由が、私には分からなかった。

 人が痛がったり、苦しがったりするのを見て、どこが面白いんだろう?

 そんなことで喜ぶなんて、凄く異常なことだと思う。そんなことをしていないで、さっさと殺したらいいのだ。

 調べてみると、過去の犯罪者の中には、本当にそんな人が何人もいたらしい。そういう連中は、きっと頭がおかしいのだろう。

 頭がおかしい人間は、精神鑑定というものによって無罪になることがあるらしい。普通に人を殺すことを楽しんだ人は刑務所に入ったり、死刑になるのだから、とても不公平だ。


 進級してクラス替えがあり、私はとても可愛い子と同じクラスになった。

 その女の子は、いつもたくさんの人と楽しそうに話していた。笑顔の可愛い子だ。

 こういう子を殺せたら、なんて幸せだろう!

 そんな気持ちが日々募っていき、ついに我慢の限界になった。

 そして私は決心した。この子を殺そう。それで刑務所に入ることになっても、この際仕方が無いだろう。


 殺す相手は決めたけど、どうやって殺そうか?

 色々な方法を想像して、楽しい時間を過ごす。

 どんな方法だったとしても楽しいだろうと思う。でも、首を絞めたりするのは、女の腕力では難しい。

 斧のような、大きな刃物を持ち歩くのも難しいだろう。

 どうしようか。そんなことばかり考えていると、ある日事件が起こった。


 ある日のお昼休みのことだった。

 突然、学校中が大騒ぎになった。

 最初は何が起こったのか分らなかった。そのうちに、「落ちた……」「飛び降り……」「死んだ……」「自殺……」といった言葉が耳に入ってきた。

 私は、クラスメイトから話を聞き、急いで現場を見に行った。

 先生達は、生徒が近づかないようにしながら怒鳴っていた。でも、幸いにも私は死体を見ることができた。


 男子だった。これは後で知ったことだが、私とは学年が違う生徒だ。

 人は、落ちて死ぬとこうなるのか!

 地面に転がっている死体を見て、私は久し振りに激しい興奮を味わった。


 それから暫くは、いじめがあったとか無かったとかで、大人達が騒いでいた。

 クラスメイトの中には、可哀想と言ったり、怖いと言ったりして、泣く子が何人もいた。

 そういう人達のことはよく分らなかった。私は、嬉しくて楽しくて、とても幸せな気分だった。


 その事件で、私は決めた。

 やっぱり、あの子はどこかから突き落として殺そう。小学生の頃からの念願を果たすのである。

 どうせ落とすなら、なるべく高いところがいい。落としやすさを考えれば、高いフェンスなどが無い場所がいいだろう。できるだけ相手を安心させて、後ろから思いっきり押すのがベストだ。


 その日から、私は人を突き落とすのに適した場所を探した。

 捕まらないための、最低限の努力はしておくべきだろう。できれば、人目が無く、防犯カメラなども無い場所がいい。私がやったとバレて、刑務所に入ることになったら、その後何年も人を殺せなくなってしまうからだ。

 やがて、私はある建物に注目した。既に住人がおらず、容易に屋上に上がることができるビルである。

 建物自体は古くてボロボロに見えたが、遠くの山が見えて、意外と景色も良かった。あの子を誘い出す口実としては、ある程度の説得力があるだろう。


 そして、私はあの子にこっそりと話しかける。

「景色がいい場所を見つけたんだけど、一緒に行かない?」

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