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いろいろのかげ

作者: 哲翁霊思

 あるところに、かげ透明とうめいひとたちのらすまちがありました。


 透明とうめいかげひと々(びと)は感情かんじょうなにもなく、かなしくも、たのしくもなく、素直すなおらしていました。


 そのまちのあるところに、ふくつくおとこひとがいました。


 そのひとは、三色さんしょくふくつくっていました。


 そのふくると、ふくおないろかげができました。そして、いろによって感情かんじょうまっていました。


 赤色あかいろかげひと元気げんきおこりっぽく、青色あおいろひとしずかでかなしそうで、黄色きいろひとあかるくたのしそうになるのでした。



 ふくつくひとは、それぞれのいろはいった「おもいのつぼ」からいろを出して、毎日まいにち毎日まいにちふくいろけていました。


 まちにいるひとたちは、みんなそのひとつくったふくていたので、まちにはいろとりどりのかげができていました。


 ある赤色あかいろふくていたおとこひと青色あおいろおもいのつぼ黄色きいろおもいのつぼたおしてしまいました。


 あわててつぼこしましたが、まわりはいろながれてよごれてしまいました。かたづけなければとイライラしていると、ゆかひろがった青色あおいろ黄色きいろざってちがいろになっているのをつけました。


 赤色あかいろふくていたので、つけたときはめいいっぱいよろこび、これでふくつくったら面白おもしろいのではないかとかんがえました。



 さっそくおとこ)ひと白色しろいろふくってきてざったいろけてみました。


 するとふくは、っぱとおなじきれいな緑色みどりいろになりました。そのあと、ゆか掃除そうじしてふく仕上しあげました。


 おとこひとてみようと思い、赤色あかいろふく緑色みどりいろふくました。すると、かげ赤色あかいろから透明とうめいに、透明とうめいから緑色みどりいろわりました。


 するとどうでしょう、さっきまで元気げんきいっぱいだった気持きもちはえて、とてもおだやかないた気持きもちになりました。青色あおいろくらいくらくなく、黄色きいろくらいあかるくない、とても気持きもちの気分きぶんでした。かおもしっかりしたすここわからとてもやさしそうなになっていました。


 おとこひとは、これは面白いと思うと、赤色あかいろふくときよりもすこしゆっくりしたうごきであたらしいつぼり、なか青色あおいろ黄色きいろを混ぜて入れて新しく緑色のふくつくはじめました。


 出来でき緑色みどりいろふくると、「これは面白おもしろい」とたくさんのひとっていきました。



 つぎおとこひとほかにもいろができないかとおもい、つぼにいろんないろぜていきました。赤色あかいろ黄色きいろ青色あおいろ赤色あかいろ緑色みどりいろ赤色あかいろ。それぞれオレンジいろ、むらさきいろ茶色ちゃいろになりました。


 つくったいろふくつくると、あたらしい感情かんじょうができました。


 元気げんきいっぱいのたのしい感情かんじょう、いろいろかんがえる面白おもしろ感情かんじょう、いじけてしまうくやしい感情かんじょう


 あたらしい色(色)でふくつくると、これもいろんなひとっていきました。



 それからも、あたらしいいろつくろうとつぼにいろんないろぜていきました。


 片方かたほうをちょっとおおれたり、みずれてうすくしたり、みっつやよっつのいろぜたりもしました。


 やがていろんな感情かんじょうふく出来できがりました。すこかなしい感情かんじょうかなしいのに感動かんそうする感情かんじょうかんがえることが大好だいすききになる感情かんじょうやわがままになる感情かんじょうもできました。


 そしていろえていくと、まちにいるひとたちのかげいろとりどりになっていきました。


 っぱのいろそらいろ夕日ゆうひいろうみいろつちいろいろとりどりのはなみだれたようにきれいになっていきました。



 最後さいごに、おとこひとはすべてのいろぜてみました。


 すると、きれいなにじいろではなく、くろになってしまいました。


 おとこひとは、こんないろたくないとかんがえ、ふくつくらないでほうっておいてしまいました。


 それから何回なんかいぜてみましたが、どうしても黒色くろいろになってしまうのです。



 ある、たくさんつくってしまった黒色くろいろかわててしまいました。しかし、かわみずわらず透明とうめいなままでした。


 それを不思議ふしぎおもったおとこひとは、かわみずですくってみました。においをいでもなにもありません。


 ためしにんでみることにしました。かわみずくちれると、あじなにもしませんでしたが、とても不思議ふしぎ気持きもちちがてきました。


 それは、すべてのいろ気持きもちがざった複雑ふくざつ気持きもちでした。そしてかげてみると、黒色くろいろになっているのでした。


 びっくりしたおとこひとは、ふくいでみました。しかし、かげいろ黒色くろいろのままだったのです。


 そのときおとこひとこころには素直すなおおどろきの感情かんじょうのほかにも、こんないろいやだとか、なんでいろがついたんだとか、くろはどんな気持きもちなのかとか、いろんな感情かんじょうがあふれていました。


 そしておとこひとづきました。黒色くろいろ気持きもち、それはいろんないろ気持きもちがざった、一番いちばん面白おもしろくて、大変たいへん気持きもちなんだと。


 そしてこれはすごいことだとおもったおとこひとは、まちひと々(びと)にそれをつたかわみずませてみました。


 はじめはいやがっていた街のひとも、一口ひとくちんでみた途端とたんおどろき、よろこび、かなししみ、こわがり、面白おもしろがりました。そして、みんながみんな、これはすごいとかんがえ、とてもしあわせになりました。



 やがてまちくろかげだらけになり、いままでのようにいろとりどりにはなりませんでした。しかし、くろかげひと々(びと)はとてもしあわせそうでした。なぜなら、いろんな感情かんじょう一度いちどかんじることができるからです。そして、大切たいせつなのはきれいないろではなく、いろんなことをかんじられるこころなんだとったからなのでした。

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