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Birples  作者: 間津 紅華
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第八話 武装

「なるほど、職権乱用か。」


とハルはブラックボックスに手を伸ばすが、

「動くなロヴァート!この汚らわしい人鳥め。それ以上動くと神田の頭を吹き飛ばすぞ!」

星本は舞に銃口を強く押し付ける。

しかし、ハルの口元は綻んでいた。


「護送車で来なかった事を悔いろ!」


ブラックボックスに手をかざし、飛び出した拳銃をキャッチしたハルは星本の拳銃を体をシート上で反転させて蹴りあげた。

さらに、鍵ごと拳銃で撃ち抜いた車両のドアを開け、舞を蹴り飛ばしながらその反動で反対側から出た。


舞は宙にいた。


疑問と怒りとが頭の中を駆け巡る。


一瞬の出来事でパニックだった舞は幾秒かして、異様な滞空時間の長さに気づいた。

舞の体はブラックボックスが浮かせていたのだ。


「武装(armament)!」


上空から声がするのが聞こえると、ブラックボックスは舞を地上におろすと発現したハルの腰についた。

ブラックボックスが装備完了したのを確認すると、ハルは滑空して舞を掴むと飛び上がった。

「奴らは反人鳥派だった。すまないが戦闘になる。お前には、隠れてて貰う。」

といって飛んだ先のビルの屋上に舞をおろすとブラックボックスを一つ渡す。

「万が一奴らが上ってきたら、これを敵に向けろ。百人は対処出来る。」

「対処…って殺すの?」

「いや、眠らせるだけだ。殺したらそう記録されるからな。」

そういうと、ハルは飛び降りた。

すでに応援が星本によって集合していた。

数は数百人くらい。後ろに控えていたのだろう。全員が真上に銃口を向けている。


「素人が。」


武装こそ一人前だが構えで見かけ倒しなのを見抜いたハルは、でたらめに放たれる銃弾をかわしながら星本を探した。

地上に降り立つと、一斉に反人鳥派の戦士たちが襲いかかるが、ハルは発現を解き軽くあしらいながら、星本を発見する。


再び発現し、翼を広げ左脚の鉤爪で星本に襲いかかる。


星本はそれを迎え撃つかのようにナイフでハルの眉間を突いてくる。再び発現を解いたハルは片方しかないブラックボックスから放たれるナイフをキャッチすると、無駄のない姿勢で構えた。

しかし、周りはすでにハルを銃口で取り囲んでいた。

「見るからに民間人が何人も混じっているが、銃刀法違反じゃないのか?」

「アメリカの人鳥の癖に日本に詳しいな。」

「何度か偵察で来たことがあるんだ。この国では多くのことを学んだよ。」

「おまけに日本語も達者だな。残念ながら人鳥の存在が知れわたった日本では、反人鳥派は国民の主権を凌駕する権力を手に入れた。」

「首相と裁判所が反人鳥派だってことか?」

「それもあるが、反人鳥派は勢力を伸ばしつつある。知っているか?今やその規模は全国民の半数以上だ。つまり国民主権の半分以上は反人鳥の物なのだ。」

「なぜそこまで、人鳥の虐殺にこだわる。」

「生かしておく価値が無いからだ。野放しにしておけば、食い潰される。食料も資本も。この数十年で人口は爆発的に増え食料は減り、税金が増えた。少子高齢化が叫ばれていたのにだ!しかし、どっかの馬鹿餓鬼が世界遺産を飛び回ってくれたお陰で、口減らしの口実ができた。」

「それであるはずのなかった事件をでっち上げ、殺していったわけだ。」

「メディアは何を言っても信じるからなぁ」

ようやく星本の悪人顔を拝めたところでハルは後頭部に取り付けたBBRC(black box remote controller)に脳波で命令を送る。


 (スタングレネード…)


「ハル=ロヴァート。貴様にはヤタガラス駆除に協力して貰う。」

「俺が聞いた話だと人にものを頼むときは頭を下げるんじゃなかったか?」

「日本人がいつまでも古い慣習にとらわれていると思うな。」

星本は先ほどハルが蹴飛ばした拳銃を再び手にし、ハルの額に突きつけて言う。

「ナイフを渡せ、そして諦めて神田と同行してもらう。投降しろ。」


「やーなこった。」



閃光が炸裂する。



あらかじめ目をつむっていたハルは飛び上がると舞のもとへ向かった。


その頃舞はというと、案の定星本の手配で来た拘束班の襲撃にあっていた。

しかし片方とはいえ、ブラックボックスの力は凄かった。

ハルに言われたとおり、相手に向けると、カバンのような黒箱は音声を発した。


「銃器所持20人。対応人数内。麻酔弾。開始(20gunners This can cope with )。」


黒箱は変形しマシンガンの銃口が二つ現れた。突然の出来事に舞も相手も戸惑ったが、ブラックボックスは構わず弾丸の装填から発砲準備を進めてゆく。


「砲撃(fire.)」


爆音が連発する。

次々と人が倒れてゆく。

「なんなの、これ。」

舞はただ唖然としていた。解ることは、自分の握っている銃が人を撃っていると言うことだ。

屋上に上がって来た20人が全て倒れたところで丁度ハルが戻って来た。

「なんなの、何なのよ!これ!」

舞は軽いパニックに陥っていた。

「麻酔弾だと言っただろ。話は後だ。おそらく星本は東京中の反人鳥派を集めた。ここにいたらさっきの人数なんか比じゃないのがくるぞ。」

「どうするの?」

「東京を出る。つかまれ。」

「待って。まさかあたしを抱えて飛ぶの?」

「星本に捕まりたきゃここにいろ。たぶんお前の弟の情報をきくための楽しい尋問が待ってるよ。」

舞は少し困惑した顔をしてから言った。

「わかった。でもあたし酔いやすいんだけど。」

「…。」

黙って舞をおぶさる。


「死にたくなきゃ。絶対に離れんな。」


ばさっ、と翼が広がり一扇ぎすると体が浮き上がる。

ビルよりも高いところでハルはもうひとつ指示した。

「目と口をとじてろ。」

言われた通りにした瞬間、強烈なGと風圧が襲いかかった。

舞は何も考えない事にした。強い衝撃を感じているが、なかった事にしようと努めた。そうしないと、訳の分からないことだらけで精神が壊れ兼ねないから。

女を乗せた人鳥は東京の空を颯爽と飛び立った。


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