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Birples  作者: 間津 紅華
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第二話 人鳥ーBirplesー

人鳥とは、人類と鳥類の中間種に位置する生物の事である。普段は人間の姿をしているが成人の年齢が近づくと両腕は翼に、両目は鳥目になり両足は鉤爪が生え四本指に変形して、「発現」する。

その存在が発覚したのは7年前、アメリカ、カリフォルニア州、グランドキャニオンでの事だ。十三歳の少年がいきなり柵を越えたかと思うと、彼は奇妙な姿に変貌し三十分以上の飛行を行った後、駆けつけた警察に猟銃で撃ち落とされ、そのまま逮捕された。

しかし政府は彼の存在を隠蔽したため、マスコミは目撃者の証言から「空を翔べる『人鳥(Birple)』」と名付け、報道した。その記事はイエティ、ビックフットに続くUMA史に名をつらねた。彼は勾留中にその史上稀なる力をさまざまな人間に求められ、ついには、大統領までがその宝物に手を伸ばした。

 彼は勾留期間の短縮を条件に軍人としての道を選び、勾留中は一時的仮釈放での任務に赴いた。


その男の名は、ハル=ロヴァート。


彼は今まさに先の面会での機密の漏洩の謎に頭を悩ませていた。

人鳥の存在はハルをはじめ世界各国で発見されたがその事を知るのは、その発現者とその家族、その国の首脳と許された公務員及び同種である人鳥同士である。

これらの者には、箝口令(かんこうれい)がしかれていて、少なくとも彼女が彼が人鳥であることを知るはずはないのだ。

彼女がもし、人鳥の存在を公に知らしめるようなことをすれば、(直接見ない限り、信じる人がいるとは思えないのでそんなことはまずないが)正体がバレた者とバラした者、が処刑される。ただし、漏洩が噂ですむ程度なら、軽い罰で許される。

ハルが牢屋で頭を悩ませていると、一人の監視員が来た。

「ハル、まさかお前脱走でも計画しているのか?」

ビクッとしたハルは監視員の顔見て安堵した。旧友のマルスだ。

「お前か。最近の監視員はどうも俺に対する態度が冷たいんだが。」

「何せ化け物が囚人に混じってるんだ。新人なんだ、許してやってくれ。」

「そう言ってくれるのは、お前だけだ、マルス。ところで何の用だ?また面会か?」

「ああ、そうだ。大統領とな、。」

「大統領が?こいつはきついジョークだ。」

「ジョークかどうかはこれを見て判断しろ。」

といってマルスが渡したのは数枚の資料だ。中には日本語で書かれている物もある。

「あまり時間がない。移動中に目を通しておけ。」

どうやら、ジョークではなさそうだ。とハルは資料に目を通し始めた。




「ヤタガラス対策会議」


突如出現した人鳥、「ヤタガラス」。大阪や福岡全域に渡る反人鳥派組織を壊滅に追い込んだ。本来確認される人鳥と外見が異なり、隻翼三本足の亜種と思える。記憶力が著しく良いようだ。


「『機密事項』人鳥学におけるフリノーサ教授の見解」


ヤタガラスは発生が確認された中では異種に値する。三本足は他の者と同様の働きをするが、空中での片腕の自由が利く。また、隻翼にもかかわらず飛行できるという高度な技術を持っており、生態の確認の余地あり。

補足、記憶力に長ける。


「福岡に『黒い人鳥』あらわる」


平成2085年3月13日男性諸君が女性のへのプレゼントに頭を悩ませていた午後19時、事件は起こった。福岡市のショッピングセンターにて、人鳥が現れて男性一人を殺害した。被害者の男性は山口京太(43)。「反人鳥派組織」に所属していた。(中面につづく)




その他にも数枚の資料があったがハルは出始めにとった三つを熟読することにした。


「反人鳥派」とは、人鳥の存在を快く思わない人間が集結し、人鳥類の撲滅を図る組織の事だ。アメリカでは人鳥の存在そのものが機密事項となっていて、似たような集団がいたとしても単なるオカルト集団としてみなされる。ハル以外の存在が発覚した人鳥が襲撃される心配ない。何故なら大統領が軍人に特令を出し、間接的な保護が施されているからだ。

この対策法は直ちに世界各国に極秘で伝達され、全世界が万全なる対処を終えたかに見えた。

しかし、その対策をしなかった国が一つだけあった。

日本である。

法律の制定に手間取って人鳥の存在が公に知れわたってしまったのだ。その存在を確認した反人鳥派はネットで情報を拡散し組織は大規模なものとなっているのだ。

アメリカ合衆国、レイマン・アルナスター大統領は、日本のネットサーバーを秘かに包囲し、海外経由のライン全てに人鳥の情報拡散防止のフィルターを設定させた。

この対処がなければ、人鳥という異種の存在に全世界がパニックになっていただろう。こうして人鳥の存在が公にバレる危機は逃れたものの、日本は国内での人鳥の駆除に躍起になった。それまで確認されていた数十体の彼らも今となっては、指で数えられる位になってしまった。

そこに現れたのが「ヤタガラス」である。

彼は、自分たちを絶滅寸前に追い込み、同胞を惨殺した反人鳥派を憎み、構成員を皆殺しにすることで組織の壊滅と人鳥類の安寧を目論んだ。事実彼は残った仲間と共に反人鳥五大拠点のうち、大阪及び福岡支部を壊滅していて、あと半年も立たない内に残りの三拠点も破壊すると公言したのだ!

彼は、今も日本のどこかでその機会を伺っているのだ。


ハルは最後の資料のピリオドに目を通すと、護送車のモニターで自分がホワイトハウスにいることを確認した。


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