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Birples  作者: 間津 紅華
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第一話 面会

新作です。

地下牢とは実に、臭い。

生臭いカビは鉄さびの臭いに混ざりぼうっとした感覚を与える。その独房の並ぶ廊下は蛍光灯の明かりがぼんやりと照らして、その不気味さを際立たせる。

 そんな空間に足音が響く。

突き当たり奥を右に曲がって3つ目の牢だ。

カツン…。

監視員の足が止まる。

「囚人10254番、面会だ。出ろ!」

中にいるのは、若い金髪の青年である。昼寝をしていた彼は、起こされ方が少し気に入らなかったようだ。

彼は気だるそうに体を起こすと、

「面会?俺にか?」と訊ねる。

「とりあえず急げ!何しろ面会終了まで時間がない。」

 青年は、ギリギリにやってきた面会者を恨んだ。何しろ一週間に一度しか許されない昼寝を邪魔されたのだから。

地下牢を出ると、エレベーターで地上の階に上がる。地上二階の203号室が面会室になっている。

看守はドアをゆっくり開け、青年を中に入れた。

ガラス張りの向こうには、一人の少女が座っていた。

(日本人?)

囚人は思った、日本人に知り合いはいないはずなのだが。何かの間違いだろう

と思い、訊ねる。

「面会の相手、俺で合ってるか?」

「ええ。あなたがハル=ロヴァートね?」

 こいつは驚いた。この大和撫子はどうやら、どこかで彼の名前を知ったようだ。

彼女は話を続ける。

「俺を知っているのか。誰だ、お前は」

「私は、神田(かんだ)(まい)。折り入って頼みがあるの。」

「頼み?囚人に頼みごとなんかしても何にもしてやれないよ。」ハルは手錠を見せながら言った。

 彼女は目の前のアメリカ人の返答に幻滅したようだ。

「あなたは本当にハル=ロヴァートよね?」

「どういう事だ?」

「噂で聞いたのよ、どんな依頼でも気安く引き受けてくれて必ず解決してくれる囚人の探偵がアメリカにいるって。」

「かなり話が大きくなりすぎだ。まず、俺は探偵なんかじゃない。」

日本人の悪い癖だ。ハルは思った。奴らはどうも一つの話題に尾ひれを付けたがる。

そんな、ことが頭をよぎりながらハルは続ける。

「俺はある事件で容疑がかかって勾留中の身だが、俺はある能力を認められて大統領から任務中だけは監視員付きで仮釈放が認められているだけの軍人さ。」

 別に人の依頼を受けて動いている訳じゃない、俺は上の命令でしか動かない。いや動けない、と言ってやると、舞は俯いた。しばらくの沈黙の後、やりきれなくなったハルは、口を開いた。

「なぁ、そんな顔されたらこっちが悪い感じになる。ついでといっちゃあなんだが、その依頼ってのはどんなのだったんだ?日本からはるばるアメリカまで来る程のことなのか?」

彼女はゆっくり顔をあげた。

「私には隼人っていう弟がいるの。でも彼は今、日本を壊滅に追い込もうとしているテロリストになってしまった。あなたに彼を止めて欲しい、それが依頼だった。」

「そんなの日本だと警察が動くだろう?」

「いいえ、もう警察も自衛隊ですらも役に立たない状況なのよ。」

「どういう事だ?」

「彼は、弟は、人鳥なのよ。」

人鳥、という単語にハルは眉をひそめた。

「それで?俺にその人鳥が暴れているのをとめろと?よしてくれ、俺はにんげ…」

「あなた、人鳥なのでしょ?」

「何?」

「だから、この国の大統領が認めた能力って、人鳥になれるって事でしょ?」

面会室の空気が凍りついた。長い沈黙が流れる。

「人鳥なら人鳥を止められる!お願い!弟を止めて!」


ピピピピピピーィ


時報がなる。面会が終わる時間だ。

「ミス・カンダ、面会は終了です。」

「待って。まだ話は終わってない!」

「あんた…。どこで俺が人鳥だと知ったのかは知らねえが、これ以上関わるな。」

冷たくいい放ったハルの言葉が彼女を黙らせ、彼女は大人しく部屋を出て行った。

牢に戻ったハルは、思案にふけっていた。

彼女は何故俺が人鳥を知っているのか。日本で人鳥が暴れているとはいえ、一体なら警察を動員すれば片付くはずだ。

それなのに何故、わざわざ俺を頼るのか。

そもそも彼女はいかにして俺が人鳥であることを突き止めたのか…


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