007
「じゃあさっそく始めていくぞ。まずスキルのおさらいからだな。初期スキルは全部覚えてるか?」
「えーと。武器カテゴリが<剣><短剣><槍><斧槌><杖>、 防具カテゴリが<重鎧><軽鎧><ローブ><盾><水晶>、魔法カテゴリが<火魔法><水魔法><風魔法><回復魔法><付与魔法>、補助カテゴリが<眼力><探知><攻撃強化><防御強化><魔法強化>、生産スキルが<鍛冶><木工><裁縫><細工><調合>だったと記憶し
ているけどあってるかな??」
バンクはキャラクターエディットの際に色々なスタイルを考察するために一通りのスキルを見比べて組み合わせを考えたために意外なほどしっかりと頭に残っていた。
「よく覚えてたな。その通りだ。そしてそのスキルごとにアクティブスキルやパッシブスキルが存在していて、初期で覚えているものもあれば、レベルによって新しく覚えるものもある。さらに特定の条件を満たすことで習得するものもある。ここまでは大丈夫か?」
「チュートリアルで説明されたことが大半だから問題ない。あえてあげるなら、あの玉への憎しみに問題があるだけだね。」
「あの玉か。あれは有名だな、最初に触れるAIで、このゲームのAIはここまで出来るんだぞというのを示したかった運営の遊び心がプレイヤーには賛否両論らしいぞ。」
「そういうことなのか、、、あの小バカにされた感じが中々愉快だった、、、。」
「ボケる玉、突っ込むバンク、そしてスルーしたかと思えば後から何気なくつついてくる玉。そんな光景が普通に想像できるな。」
「もう否定のしどころがないぐらいそのまんま過ぎて笑えてくるな。」
「ははは!洗礼だと思って納得させておけ。じゃあ進めるぞ。そのスキルの中にはアクティブスキルとパッシブスキルに細分化される。チュートリアルの話が出たが、チュートリアルで<短剣>なら[スラッシュ]、<槍>なら[スラスト]のように敵を攻撃するスキルを使ったと思うが、あれがいわゆるアクティブスキルだ。
スキルを使うことを意識して任意で発動させるもの、そしてもう一つが<重鎧>の[体力回復速度上昇]や<探知>の[知覚範囲拡大]なんかがパッシブスキルといわれ、意識をしなくてもスキルを付けていれば自動的に効果を発揮するものだ。」
「細かい内容は初耳だけどアクティブスキルやパッシブスキルに関してはこれもチュートリアルで聞いたから大丈夫だ。」
「よし、そして大前提だが俺がスキルは周りには公開しない方がいいと言った話は覚えてるな?」
「あぁ。」
「あれは厳密に言えばこのアクティブスキルやパッシブスキルのことだ。アクティブスキルなら使っていればあんなのがあるんだと大体の内容は周りにはわかるが、それも詳細な効果まではわかりにくい。また、パッシブスキルに至っては今のバンクのように使っている本人が知らないということもあるぐらい外には見えてこない要素になる。まぁ初期スキルぐらいならすぐ攻略サイトにも乗ってくるだろうし、使っている人間が多い以上いずれは隠すことの方が難しくなるだろうがな。」
「なるほど、効果が分かれば対人戦では対策がたてられる。ただ、狩りを効率良くしようとすれば仲間の手持ちカードを知っておくことが大切になる。難しいところ・・・だな。」
バンクはその情報公開のバランスの難しさに素直にそう言葉にする。
「そういうことだ、特に追加で手に入れるだろうスキルに関しては自分の必要な行動をしている事で入手する可能性が高いため、より色濃くアドバンテージを保つために秘匿した方がいいとも言われている。ゲームを発展させるために公開すべきとの意見もあるんだがな。そこは個人の裁量に任せるしかないのが現状だ。」
「そんなものか、とは言ってもまだまだ俺には関係無さそうな問題ではあるけどねぇ。」
「ま、知っておいて損はない情報だから頭の片隅にでも残しておくといい。」
「だな。」
「そんな背景があって、パッシブスキルを聞いてもいいかという俺の一番最初の質問に戻るんだがいいか?」
ハルトはそう言って再度バンクに確認を取るがバンクは即答をする。
「ハルトならなんの問題もないぞ。そこまでしっかり教えてくれるような人間が悪いようにするとは到底思えない。」
「そう言ってもらえるのは嬉しいな。」
「だが1つだけ問題がある。見方がわか「あぁ心配するな。わかるなんてはなっから思ってないさ。」、ら、、ない。」
自信満々に胸を張ったバンクだったがまさかの食い気味の即答に思いがけないダメージを受けるのだった。
「ぐふっ、、、」
「ふはははは!まだまだ甘いわ。」
そんなやりとりをしているときに突如空から来訪者が訪れる。
「ピィィィィヒョロォォォォ!」
「来たか、バンク!俺が初撃を抑える!その間に撃破を頼む!」
ハルトが即座に指示を出す。
「ん?そんな必要は、、、ない![スラッシュ]!」
「ピィィィィ、、、」
バンクはいつも通りリトルバードの滑空に合わせて正面から[スラッシュ]を発動して迎撃をする。
「な!?あの速度に合わせられるのか!?」
「ん?慣れの問題じゃないのか?最初にこの方法で倒してからはこれが当たり前だったな。まぁ前回も人に見せたときは驚かれたけど、俺は<短剣>だから取り回しがしやすい分合わせやすいんじゃないのか?<槍>だと難しそうだしな。」
「いや、そんなはずはない。知り合いにも<短剣>使いはいるが初撃をあのタイミングで、しかも一撃で仕留めるなんて見たことがない。通常は魔法のシールド系や俺のような<盾>持ちの防御で怯ませてから討伐をする、もしくは初撃は回避して滑空前から視界に収めて軌道を読むのがセオリーだな。何か心当たりはないのか?」
ハルトは客観的に見た事実と自分の経験談からそう告げてバンクに聞く。
「いや、全く。」
バンクは当然のごとくそんなものが分かるわけもなく答える。
「はぁ、、、まぁいい。一旦置いておこう。話の続きを進めるぞ。スキルの詳細を確認するのにまずスキル一覧を開いてくれ。」
「あぁ。」
バンク
<短剣Lv5><軽鎧Lv3>
<眼力Lv4><回復魔法Lv2>
<調合Lv5>
スキル一覧を開いたことを確認したハルトはさらに続ける。
「開いたな。そうしたらスキル詳細とイメージをしてみろ。」
バンクは言われた通りにスキル詳細とイメージすると各スキルの詳細が表示された。
<短剣Lv5>
A:スラッシュ/初/前方の敵に武器で攻撃を行う
A:ポイズンダガー/5/一定確率で毒の状態異常を付与する
<軽鎧Lv3>
P:空腹度減少緩和/初/空腹度の減少速度を緩和する
<眼力Lv4>
P:遠視/初/より遠くを見ることができる
P:暗視/初/暗所での視野を確保できる
P:見切り/特/攻撃速度がゆっくり見える/先制攻撃一撃迎撃
<回復魔法Lv2>
A:ヒール/初/体力を小回復する
<調合Lv5>
A:調合/初/調合を行う
「お、ポイズンダガー覚えてるじゃん。」
「<短剣>のレベル5で覚えるアクティブスキルか。確かにスキル詳細を見る以外に新スキルの確認方法は無いからな。さて、スキル詳細が見れたようだから見方の説明をするぞ。まずは最初のAやPの表記、これはまぁわかると思うがアクティブスキルかパッシブスキルかという表記だ。2番目がスキル名、そして3番目が取得レベルだな、初と書かれているものは初期スキルで、ポイズンダガーのように数字が書かれているものは取得したスキルレベルとなる。取得レベルは基本的には5の倍数であることが多いな。さらに特と書かれるものが特殊条件を満たした時に取得できるものだ。この特殊スキルはそのスキルを所持した状態で特殊な条件を満たすことで取得するスキルで有効な物が多いとされている。続いて4番目がスキルの説明で、5番目は特殊スキルの取得条件となる。以上だが質問はあるか?」
バンクはスキル詳細を見てポイズンダガーの次に気になった事を素直に聞いてみる。
「特殊スキルは覚えるのは大変なものなのか?」
「正直なところを言うと情報が少なすぎてわからない。アドバンテージを保つために取得条件を伏せられているからか、本当に取得が難しいからか、とにかく情報が出てこない。ただ、言ってしまうと俺は1個持っているがそんなに難しい条件ではないから前者だとあたりはつけている。で、まさかあるのか?」
「そのまさかだな。聞きたいか?」
バンクはそう言ってハルトにニヤリと笑う。
「お前には下手な遠慮はせん、教えてくれ。いかなる場合でも他言はしないと約束しよう。」
フン!とでも言うように胸を張っていうハルト。
「あはは!素直でよろしい。<眼力>スキルで[見切り]、効果は攻撃がゆっくりに見えるらしい。」
「なるほどな、さっきのリトルバードの対応はこれが原因か。ただ中々凶悪なスキルだな。魔法にも効果があるのかや、対人でも効果があるのかを検証してみたいが、その辺はバンクが信頼できる魔法職がいたらできる話だな。まぁバンクがやりたくないと言えばそれまでだが?」
「それができるなら俺自身も願ったり叶ったりだな。自分のスキルの能力は把握しておきたい。ただ魔法攻撃ができる知り合いがいないんだよな。それに対人戦ってどうやってできるんだ?」
「正論だ。それに対人戦だが実はまだ未実装なんだ。次回のアップデートで解放されるという噂はあるんだが実際どうなるかの公式発表はまだない。ただ全くないというのはゲームの特性上ありえないという意見が通説だ。じゃないとスキルの秘匿なんてものは連携不足を生むデメリットしかない、何の意味もない行為だからな。」
「じゃあ検証はそれが出来てからってことだな。」
そう言って話題が終わるかと思ったバンクにハルトは続ける。
「それに検証できない理由がもう一つある。」
「ん?なんだ?」
「スキルは10個までセットできることは知っているな?」
「あぁ。イベントやクエストで手に入ったものが初期スキルに加えて10個まで覚えることが出来て、それ以上はサブスキルとして外しておく必要があるんだろ?」
「その通りだ。では質問だがスキル数が10個以内の場合[見切り]がある状態と無い状態の違いをどうやって確認する?」
そんな質問がハルトからバンクにとんでいく。
「そんなのサブに回すか、OFFにすればいいんじゃないのか?」
「そんな機能がどこにある?」
「・・・わーお。」
「現状ではスキルを発動させないためには11個以上のスキルを取得する必要がある。」
そうなのだ、この【TEO】にスキルを無効化する機能はないのだ。それをどうにかしたい検証特化プレイヤーは幾度となく依頼を運営にしているらしいが今のところは実現していないのだ。
「まぁあって損をするものでもないし、気長にやっていくよ。」
「ま、そうだな。むしろそんなスキル<眼力>を持っているプレイヤーに知られたら妬みの対象だな。」
「おー怖い怖い。おとなしくしておこう。」
そんなこんなでハルトのバンク向けスキル講座も終了したところで、森の中も浅い林のような部分とは違い、まさに森の中というにふわさしい木々の中に到着していた。
「よし、じゃあさっそく狩りと行きますか。森の中は木が多く戦いやすいとは言ったが索敵が少し難しく、スモールラビットは特に危険は無いが、ウルフは機動力が高くこちらが気付く前に先制を受けることもあるから注意が必要だ。とはいっても[見切り]を持っているバンクなら対応は容易な気がするがな。」
「ありがとう、気を付けるよ、戦い方の基本形はハルトが受けて俺が攻撃でいいのか?一応俺の方に来たやつにダメージを与えるぐらいは問題なくできると思うが。」
「最初は俺が受けよう。慣れてきたらどんどん攻撃してもらって問題ない。レベル的にはそんなに難しい狩場ではないが、初見の魔物に油断してかかる癖がつくのは良くない。それにダメージが少ない方が連続戦闘もしやすいし効率があがあるからな。」
「了解、っとさっそくお出ましですよ〜♪こっちは即対応でいいよな?」
話しているバンクとハルトの前に現れたのはスモールラビットの群れだ、草原と何が違うんだろうと思っていたバンクは群れで出てきた光景を見て納得した。
「あぁ、俺はヘイトを集めるから一匹ずつ葬ってやれ。[アングラウド]!」
ハルトの使った[アングラウド]は周囲の魔物の怒りの矛先を自分に向け仲間が行動しやすいように補助する盾の初期スキルである。そして[アングラウド]の効果でスモールラビット5匹は全てハルトに向かっていった。
「じゃあお構いなくやらせてもうかね[スラッシュ]!」
一番近くにいたスモールラビットに[スラッシュ]で攻撃を行い戦闘を開始するバンク。
「こっちも手を抜くつもりはない。[バッシュ]![スラスト]!」
ハルトもバンクに負けじと盾のスキルである[バッシュ]で2匹同時に怯ませ、槍のスキル[スラスト]で順番に葬っていく。
素早さと手数に重点を置いバンクでも、さすがに防御を優先していたハルトが2匹を倒すまでに残りの3匹は倒し終わっていた。
「ふむ、思ったよりもやりやすいな。このまま進んでいくがいいか?」
「あぁ、最初だけ体力半分切るまでは回復薬を使わないでもらっていいか?[ヒール]で何割ぐらい回復できるのか確認をしておきたい。」
「オーケーだ。まぁこの辺りでこのペースだと半分を切るかも謎だがな。」
ハルトの言った通り先ほどのスモールラビットの群れでは1割どころか本当にわずかしか体力が削れている様子がなかったのだ。さらにそれも自身の体力の自然回復によって回復いってしまう。
「まぁ一応だよ。本来なら[回復魔法]なんて使わないに越したことはないさ。」
そう言って次の獲物を探しに動きだすバンクであった。
・・・「グルァァァァ!」
木の影から飛び出してきた初見のグリーンウルフをハルトが受け止め、それに合わせてバンクが攻撃を行う、ときには数匹同時に出てくる事もあったが[アングラウド]でしっかりとヘイトを稼ぐハルトのおかげでスモールラビットも、グリーンウルフも危険な事もなく、着々と連携を確認したりお互いの実力を確認した二人だったが、、、
「ガルァァァァァァァァァァ!!!!!」
依頼も完了しそろそろ休憩を挟もうかと思っていた矢先に、今までとは少しちがう威嚇の鳴き声が聞こえてきた。
お読み頂きありがとうございます\(//∇//)\
スキルの詳細、そして初の本格戦闘に!
書ききれるのかあゆむ!
文字数5,773也