表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

25.新たな人生

「いつかは真実を打ち明けなければと思いつつ、言い出せなかった…

レオの死は事故だったとはいえ、結果的には彼の人生を盗み、彼になりすまし

世間を欺き、おまえを騙しながら俺は今までのうのうと生きて来た。

卑劣な犯罪者と何ら変わりはない。いや、それ以下の人間かもしれない…

本当にすまなかった」

奥寺拓也は、マリアに深々と頭を下げた。



「本当のこと話してくれてありがとう…

これから先もずっと、私のお兄ちゃんのままでいてくれる?」

「マリア…」

「莉江さん、私って超幸せ者だよね。優しい兄貴が二人もいるんだもん」

(そうね、ほんとにそうだよね…)

莉江は大きく頷いた。


「お兄ちゃん、一つお願いがあるの…」

「?…」

「いつか南太平洋の海に連れて行ってくれる? 

お兄ちゃんたちのおかげでこんなに立派に成長しましたって、

もう一人の兄貴に報告したいの」

マリアの顔にまた以前のような、眩しいくらいに明るい表情が戻った。


「ああ、一緒に行こうな。兄さんの大好物だったペルーの酒を持って… 」

涙で顔をくしゃくしゃにしながら拓也レオは何度も頷いた。




* * * * * * * 




季節は廻り、出逢いから二度目の秋が訪れた・・・


(一緒に来てくれて、ありがとう…)

「ほんとに、これで良かったの?」

(狭いお墓の中より、彼もきっとこの広い海のほうを望んでいると思う)

莉江は健介の遺灰を彼が愛したケープ・コッドの海に散灰することに決めた。


(それに、ここなら一人ぼっちじゃないから淋しくないもの…)

「そうだね… 」

拓也レオは目を瞑ると水平線に向かって長い黙祷を捧げた。



(何、お祈りしてたの?)

「彼に、お願いしてたんだ… 」

(?…)

「…俺の愛する妻と息子をどうか見守ってやってください。

その代わり、貴方の大切な家族は俺に任せてくれませんか、って」

(……)

「分かってる、君がまだとてもそんな気持ちにはなれないこと。

俺だって、十三年もかかったんだから… 」

拓也レオの口元から苦笑が洩れる。

「その日が来るまで待つよ、ずっと待つつもりだから… いいかな?」

静かに頷く莉江の顔に穏やかな微笑が浮かぶ。


「彼、なんて言うかな…」

(そうね… きっと、こう言うと思う――)

「ん?」

(--ちょっと妬けるけど、よろしく頼みます――って)

莉江は何かを思い出したように左手を握りしめ、くすっと笑った。



「あ、レインボー!」

膝の上の美玖が突然大きな歓声を上げ空を指差した。

三人の視線の先には大きな七色の虹が、真っ青な空と海を繋ぐように

綺麗なアーチを描いていた。





ー完ー







最終章までお付き合い下さった方には心から感謝いたします。

ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ