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秘密の森6

サティは暗闇の中をふわふわとさまよっていた。耳を塞がれたような居心地の悪い空間に一人。


「本当に良いのか?」


男の声。この声は以前にも聞いたことがある声だ。あの時の夢をまた見ていることにサティは気が付いた。


「ああ。覚悟は出来てるよ。」


一体これは何の夢なのだろうか、サティにはさっぱり分からなかった。夢ならば姿が見えても良さそうなものだが、視界は闇に覆われ、父親たちのこもったような声だけが響いた。


「では『鍵』はお前が持っていろ。」


(同じ夢を見ているのか?)


「鍵は親父と一緒に埋めるよ。」


父親の声が僅かに悲しみを帯びている。『親父』だから祖父のことで間違いないだろう。


「研究は引き継がねぇのか?」

「俺はあーゆうのは苦手だ」

「組織の活動も10年は遅れたな。惜しい人を亡くした」


研究や組織といった単語ははっきり言ってサティの父親には縁遠い言葉のように思えた。


「わかってる。息子を守るためだったんだろ?」


父親は黙っている。


「新たな管理者に幸あれ」


(鍵?管理者?)


そこまでの会話以降はもはや聞き取ることは出来ず、徐々に声は遠ざかって行った。


辺りは一変して灰色の森が広がっていた。


(これは夢だ。いや、古い記憶?ここは秘密の森?俺はこの森に居たのか?)


ふと、目の前には小さな男の子が立っていた。髪の毛も瞳の色も灰色ではあったが、自分の幼い時の姿であることは感覚的にわかった。


(これは俺?)


男の子は走り出す。サティは後を追った。同時に背後から、異様な気配を感じる。振り替えると黒い塊がこちらめがけて飛び掛かっていた。


とっさに身構えるが、黒い塊はサティの体をすり抜けた。

次に見えたのは小柄な老人が男の子の足を掴んで転ばせ、覆い被さっている光景だった。灰色の世界で老人の目だけが真っ赤に染まっていた。


その老人の顔はサティの良く知る人物のものだった。


サティが幼い頃、事故で亡くなった祖父。紛れもなくその人だった。


(やめろーーーッ!)

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