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秘密の森 1

加筆、修正が必要な状態ですが、ご意見ありましたら遠慮なく下さいませ。誹謗、中傷何でもいいので

<プロローグ>


暗い森の中を1人の女が息を切らして走っている。美しい金色の髪は雨に濡れて艶やかに光っていた。女性は重い鎧を纏い、腰には剣を穿いている。


「シーガル、お願い、飛んで」


女性は何かを繰り返し呟いていた。両の腕には生まれて間もない赤ん坊を抱いている。


「シーガル、まだ…飛べないの?」


女性は懇願するように何かに話しかけていた。雨は勢いを増し、足元はぬかるんでいる。


後方から数人の男たちが後を追って来ている。全員が鎧に身を包み、大声を上げている。


「マチルダ様!お戻り下さい!」


男たちの声を無視してマチルダは走り続けた。


「あっ」


マチルダは足を滑らせて転びそうになると、赤ん坊をかばうように、背中から倒れた。男たちが迫って来る。


「シーガル!」


マチルダの声に呼応するかのように背中から翼が生えた。バサッという音と共に体が浮き上がる。しかし、飛べたのは一瞬で向かった先は深い谷になっていた。マチルダと赤ん坊は真っ逆さまに谷へ落ちていった。


「マチルダ様!」

「なんてことだ。この高さから落ちたら助からないぞ」

「すぐに追うんだ」

「追うってどうやって!」

「くっ」



マチルダは谷間を流れる川に落ちていた。しばらく流された後、中洲に打ち上げられ大事には至らなかったようだ。


「はぁ、はぁ、赤ちゃん、はぁ、はぁ」


赤ん坊は大声を出して泣き叫んでいる。


「はぁ、はぁ、シーガル、私のすべてのエーテルを使って、この子を安全な場所に」


すると背中の翼はみるみると形を変え、赤ん坊を包み込んだ。


赤ん坊はマチルダの手を離れ、下流へと流されて行った。


川の流れは急速に勢いを増し、遠くへ遠くへと赤ん坊を運んで行った。



<第一章 秘密の森>



少年は暗闇の中で、湖にでも浸かっているかのように浮いていた。どこからともなく声が聞こえる。


「本当にいいのか?」


低く粗暴な男の声は心配そうに誰かに語りかけている。


「ああ…覚悟はできてるよ」


もう一人が返事を返す。この声には聞き覚えがあった。毎日顔をあわせているのだから間違いない。


(父さん?)


少年の声は届かない。


「じゃ、『鍵』はお前が持ってろ」


低い声の男と父親の会話は少しずつ遠ざかって行った。


少年は意識と無意識の狭間で、ゆらゆらと揺れていた。少年の体はそこに有るようで無い。波に身を任せるかのように闇の中を漂う。


次に見えたのは暗闇の中に光る球体。近づいて来る。光は次第に大きくなり、少年を包み込んだ。


光がおさまるとそこは灰色の世界が広がっていた。少年は立ち上がり辺りを見渡す。辺りは木々に覆われ、枝が風になびいている。


(ここは…?)


至るところに『危険』と書かれた立て札が置かれている。少年は初めて見る場所なのに、自分がどこにいるのか理解した。


そこは王国の北に位置する広大な森の中。絶対に入ってはいけない場所。魂を喰う魔物が住んでいて、入ったら最後、戻ってこれないと子供のころから聞かされていた。通称『秘密の森』


(早く森を出なきゃ!!)


言い様のない恐怖に支配される。この場から離れなければいけないことだけはわかっていた。異様な気配があたりに漂っている。


音も温度もない灰色の森をさまよう。どこまで行っても同じ風景が続いていた。


「ここは…」


少年は真っ直ぐ歩いていたはずだったが、また危険と書かれた看板に行き着いた。

時折、風が木々を揺らし、動物が行く手を横切った。何度か方向を変えて歩いたが決まって元の場所に戻ってしまう。


突然、後方から無数の鳥達が何者かから逃げるように少年を追い越して飛んで行った。

大地が揺れた。木々の影から大きく黒い塊が姿を見せる。


(アイツだ!追いかけてくる!)


雲のように姿形を変えながら黒い塊は少年を標的と定めたかのように向きを変えた。


少年は走り出していた。


黒い塊はどんどん距離を縮めてくる。

息づかいも走る音も聞こえないが、背後に迫る存在だけは確かに感じる。


(助けて!)


黒い塊は不気味に足音もなく這い寄ってくる。

振り替えると腕のようなものをこちらに伸ばしているのが見えた。恐怖と戦慄が背筋を撫で上げる。


そして、ついに足をつかまれ、その場に倒れ込んだ。黒い塊は少年の手足をがっちりと掴んでいる。血のように真っ赤な瞳がこちらを凝視している。


「うあーーーッ!」


声にならない叫びをあげていた。身体中から冷たい汗が滴っている。




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