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赤の国に生まれた英雄

さて、賽の目の答えです。

 もはや、滅亡は必至だった。



 将兵の多くを失い、国土の蹂躙され、同盟国からの援軍も敗れ去り、国王は流行病に掛かり、その命数は幾ばくの猶予もなかった。



 備蓄してあった食料も、流行病で死亡した人の数の分は浮いたが、それでもその数は残り少なく、誰もが諦めてしまっていた。



 そんな中、彼は召喚されてしまった。



 切れ長の目、端整な顔立ち、偉丈夫と彷彿とさせる高い背。



 そして何よりも目を引くのは、燃えるような朱い髪と紅蓮の鎧、聖剣を想わせる意匠の剣。



 彼の名前はアルフレッド。



 齢16才になったばかりの青少年であった。



 しかし、鎧を身にまとう彼の肢体はその年齢には相応しくない筋肉が引き締まっており、まるで歴戦の勇者を想わせる風貌だ。



 彼は自分がいる場所が何処なのか、何故自分が召喚されたのか、自分のしなければならない事を、自然と理解していた。



 故に彼は、自身の目の前に広がる赤の国の敵である紫の国の軍の包囲陣地に向かって、声を高々に張り上げて叫んだのだ。



「我こそは赤の国の勇者、アルフレッド!」



「この国に住まう1人として推参した!」



「紫の国の軍よ、我が国より早々に去れ!!!」



 アルフレッドの空気が張り裂けてしまえそうな咆哮に、陣地の内側にいた紫の国の兵士たちは驚き中には腰を抜かして座り込んでしまう者まで現れた。



「___なっ、何をやっているか!」



 現場にいた小隊長も、アルフレッドの咆哮に驚き呆然としていたが、腰を抜かして座り込んでいた部下を見て正気に返り、慌てて怖じ気づいてしまった部下に激を飛ばす。



「あの様な奴1人に何を怖じ気づいている!さっさと矢を射掛けて黙られてしまえ!!」



 小隊長の指示に、怖じ気づいていた部下たちも正気を取り戻してアルフレッドに向けて、一斉に矢を数十本放った。



 しかしどの矢も、アルフレッドに当たるどころか、かする事も出来ずに叩き落とされてしまった。



 目の前の出来事に、小隊長以下小隊の全員が唖然としていた。



 「紫の国の兵士は、陣地に籠もって矢を放つしか能がないと見える!」



 アルフレッドの言葉に、紫の国の兵士たちは憤りを感じ討って出た。



「クソッ!出撃だッ!!あの生意気な男の口を喋れなくしてやれ!!!」





 しかし、それは叶わなかった。



 


 小隊は隊列を組み、槍衾の形でアルフレッドに襲いかかったのだが、アルフレッドは先に自身に放たれて地面に突き刺さった矢を数本を引き抜いて、それを突撃してくる槍衾の右端に向けて投げ放つ。



 アルフレッドから投げ放たれた矢の鏃を顔面に受けた兵士数名は一撃で絶命し、倒れ込む。



 そして兵士が倒されたことによって生じた槍衾の穴に突撃、一連の動作に驚きを隠せずに呆然としていた兵士たちを次々と斬り伏せていったのだ。



 それは戦闘と言うには圧倒的であり、まさに“蹂躙”と言っても過言ではなかった。



 陣地の中で、味方が1人を相手に敗れ去る様を見せ付けられていた紫の国の兵士たちは、味方を救出するために出撃しようとするが指揮官たちがそれを止める。



 敵方の心の乱れを見抜いたアルフレッドは、紫の国の陣地に向かい挑発した。



「味方が敗れていても陣地に閉じこもったままとは、紫の国の兵士には強者がいないらしい!そのまま臆病風に吹かれて、自国にでも帰ると良い!!」



 流石にこの挑発は、勝ちに乗っていた指揮官たちの頭を沸騰させるには十分だった。



 指揮官たちは陣地より出撃した軍を整えると、すぐさまアルフレッドを目標に突撃を命令した。







 一刻の後、アルフレッド1人に敗れ去った紫の国の軍は、散り散りになりながらも這々の体で王都郊外から撤退していったのだった。

妹は、開いた口がどうにも塞がらない模様です。

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