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双子の遊び道具

頭にパッと浮かんだ内容なので、深さはねーです。

「さぁお姉さま、賽をお振りになって」



「えぇ、えぇ、分かっているわ…」



 ある穏やかな木漏れ日に包まれながら、2人の少女が卓上の遊戯盤を挟んで向かい合わせで座っている。



 2人の少女は顔の作りが瓜二つでありながらも、片や勝ち誇った笑みを浮かべて、片や苦しそうに眉間にシワを寄せて考え込んでいた。



「ふふふ、もうこの赤の国は私の紫の国の手によって滅亡寸前ですわね」



 どうやら盤上では、姉の方が妹に攻め込まれているようで、妹は勝ち誇った笑みのまま姉に対して次の一手を催促しているらしい。



「あ、あら、…まだ賽は投げられてはいないのだから、皮算用はよしなさい」



 姉は苦し紛れに言い返してはみるものの、目の前の盤上はほぼ紫色であり、申し訳程度にしか赤色は存在しない。



「でしたら~、早く最後の賽を振って下さいまし~?」



 妹は先ほどの笑みに口元に手を当てあざ笑う様に、わざとらしく姉を挑発する。



「………わかりました、腹を括りますわ」



 姉は口を真一文字に閉じて、右手に持つ賽に力強く祈りと希望と己の願望と勝利を込める。



「ふふふ、これで私とお姉さまの勝敗は私の2勝差になり、ようやっとこの遊戯を終われそうですわ」



 姉の必至な願掛けを無視して、自分の手帳に卓上で起きた一連の流れを文章化していく。



『967手目、赤の国の王子が紫の国の王女に一目惚れし、彼女を拐かして自国に連れ去る』



『970手目、紫の国の王は軍備を整えて赤の国に対して挙兵、電撃作戦を発動、赤の国の国境砦を陥落させる』



『971手目、赤の国の王は常備軍の他に志願兵を募集、しかし運悪く王都にて流行病が発生、志願兵は僅かしか集まらず、王の病状の身となる』



『978手目、紫の国の軍は赤の国の同盟国である青の国の援軍を撃破、青の国から赤の国への大量の援助物資を確保、装備と糧秣を手に入れた事で軍の士気が向上する』



『979手目、赤の国の軍は現状の打開を図る為に、紫の国の陣地に対して強襲作戦を決行、しかし紫の国の軍に手の内を悟られて失敗し、指揮官を多数失い軍の士気が大幅に下落、一割の兵士が離反する』



『986手目、紫の国の軍は各地の要所を制圧し、ついに赤の国の王都を包囲、兵糧攻めを開始する』



 妹は此処まで書き終えると、未だに願掛けを続ける姉に対して次の手を催促した。



「いい加減にしてくださいまし?お姉さまが無駄に時間を浪費していますと、赤の国の民はどんどん、どんどん、どんどん、飢えてやせ衰えて、人間としての自我を無くしてしまうのですから」



 この妹の言葉に、姉は漸く決心したらしく手に込めていた力を緩め、手の中で賽を転がし、それを卓上に放った。



 賽は何度もその身を回転させながら落下し、卓上に落ちても跳ねては転がりを繰り返す。



 双子の視線を受け止めながら、賽は卓上にて動きを止めて、987手目を、赤の国の未来を示したのであった。

深さはねーでした、でしょー?

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