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7 街に行ってみた。

すみません、何か最近文がグダグダになっちゃうんです。


それも承知の上で読んでいただけたら嬉しいです。


「なぁなぁイアン、今日は街に行って遊ぼうぜ!」


「オイ、イアン。屋上行って涼もうぜ」


「ここ最近ずっと屋上だからたまには街に行って楽しまなくちゃ」


「あんな人混みより屋上の方がいいだろ」


「なぁイアン、街だ街」


「屋上だ」


 イアンを挟んで言い合っている2人ーークザンとアルがイアンの意見など聞こうともせずに、イアンの手を引っ張って、こっちだあっちだとイアンを引きちぎろうとばかりに引っ張っていた。


「あで、いでででで、ちぎっちぎれる。大丈夫、僕は逃げないから……あででで」


 相変わらずモテモテな(男子にも)イアンは目に涙を浮かべながら苦笑いしていた。



オッス、オラ、イアン。

オラちょっとしたことがきっかけで魔法が打ち消せる体質が発覚したんだよなぁ

きっとその体質のせいでオラの魔力がないらしいんだ、まぁそれでもこの通りピンピンしてらぁ。


 今は学校に入学して初めての夏休みって奴なんだ、そしてほぼ毎日この2人から引っ張りだこされてるって訳だ。まぁ平和っちゃ平和な訳。


「おい、イアンが痛がってるだろ、その手離せよ」


「あっ?あぁわかった」


案外あっさりとイアンの手を"パッ"と離した。

 そーすることによって一生懸命踏ん張ってたクザンはそのままイアンを巻き添えにして倒れる。


「ックショウ……おい、イアン!!お前はどっちを取る!?」


「えぇ!?そーくるの!?」


いきなり究極の選択を迫られたイアンは、チラリとアルを見るといつもと変わらない「んなもん興味ねぇー」って風な顔をしていて、クザンを見ると、既に涙目状態で「俺、イアンに嫌われたら死ぬ」って顔をしていた。


 最近は新しくできた友達、アルとしか遊んでなかったため、もしやイアンに嫌われているのではないのだろうかっと薄々ながら考えていたクザンである。


「あっあぁーえーと……大丈夫だから、クザンのこと嫌ってるわけじゃないから」


それでもなお、訴えかけるような目で見てくる。


「あーもう、わかったよ!わかった!今日は街に行こう……アル、ごめん。今日は街だ」


 押しに弱いイアンは直ぐにクザンの目に耐えきれなくなって折れてしまう。


アルはイアンが押しに弱いことを知ってか知らずか、仕方ねぇと呟いてスタスタ行ってしまった。


「あっ待ってよアル」


「ちょっ置いてかないでよイアン」


「これでアルと仲悪くなったらクザンのせいだからな!」


「理不尽!」


イアンの言葉に打ちのめされたクザンを放ってイアン達は街へ出かける。





 学園から少し歩いたところに街はある。

この街は、この世界で一番発展していると言われている大きな街だ。かと言って別に高層ビルが建ち並んで車がパッパーっとクラクションを鳴らして混雑しているわけ無い。

 混雑してるっちゃしてるが、それは全て人混みで出来ていた。まるで秋葉原のホコテン(電化製品は無い)。そこら辺に色んな屋台が出ていて、毎日お祭りを開催しているような賑わいを見せていた。


「すげぇ·····」


「ヒャッホーイ!!!!1週間ぶりの街だぜ!恋しかった、もう俺は寂しくて寂しくて夜も眠れなかったーーだが、今日というこの日のお陰で俺は街に再会することができーーぶほぉ!」


ガッシャーン


 なんか、暑苦しくて意味わからないことをほざいていたのでブッ飛ばしてみた。っとゆー顔でイアンの隣に立つアル。


 ドヤァァ


「いや、そんなどや顔されても褒めるようなことなにもしてないし」


あっさりとアルの渾身のどや顔をスルーされたアルは落ち込むといじけるように転がったクザンをげしげしと蹴りつける。


「いっ痛い!アル、痛い!あでっ!」


っとそんな微笑ましい光景の中屋台から聞こえる声より一際大きい声が響き渡った。


「ソイツを止めてくれー!!食い逃げだぁー!」


 振り返るとそこには、口に食べ物を沢山含んだまま必死の形相で走っている男性と、少し遠くには一生懸命追いかけているがお腹回りの肉が邪魔で早く走れていない屋台の店主らしき人。

通りすぎる人皆、食い逃げの男性を見るが止めようと出てくるものはいなかった。


 イアン達は振り返ったままその場を動こうとしなかった。食い逃げの男性は目の前で立ち止まっている3人に気がつくと、


「おぃ!テメェら邪魔だ!死にたくなかったらそこをどけ!」


 無理矢理口の中に沢山入っていた食べ物を飲み干す。が、まだ残っているものを撒き散らしながら叫ぶ食い逃げの男性。

 しかし、イアン達はそれでもどこうとはしなかった。(クザンは足がガクガクしてるけど)なんせ動く必要が無いのだから。

アルは怪物の筋力、イアンは言うまでもない打ち消せる体質、クザンはーー特に無いが、まぁ大丈夫だろう。


 脅してもどかなかった3人を見て少し慌て出した食い逃げ男性。


「てってめぇらどけ!さもないと撃つぞ!」


 イアンが元いた世界ではそこで銃を向ける台詞なのだが、この世界ではそんな機械的ではなく指を突きつける、ただそれだけだった。

それだけと言ってもこの世界ではもっとも効果のある脅しだった。案の定クザンは慌て出した。


「おっおいイアン、ヤバイって俺もうそろそろ限界、ここは潔くどこう。ほらっなっ?」


なぁなぁと言いながらイアンの腕を引っ張るがそんな力ではイアンを動かすことはできなかった。


 そうこうしているうちに食い逃げ男性は遂にファイアと唱えると一直線にこちらに向けて撃ってきた。そのファイアはなぜだかイアンめがけて飛んでった。


『なぜだろう、3人もいるのに何故僕の方に一直線で飛んでくるのだろうか、まぁアルやクザンに当たるより増しだけどさーー』


 イアンはなんの構えもせずにそのままファイアを正面から受けた。回りで見ていた人たちから「きゃぁぁぁ!」「危ない!!」「っ!!」さまざまな声が聞こえてきた。

だが、さも当たり前のようにファイアはイアンに当たる寸前で消滅する。


『なんか、この感じ慣れないんだよなぁー』


イアンの脳内ではそんな呑気なことを考えてるとは誰もが思うはずが無かった。


「「「っ!?」」」


様々なとこから息を呑む音が聞こえた。

 そもそもイアンの体質を公の場で見せびらかしても良いのだろうか、特に他人には何の害もないが今まで見たこともない力だ。

いつ、どんな組織に利用されるかわからない。が、今のイアンたちにはそんなこと考える能力は無かった。


「なっ!?おっお前今······!?どーなっーーっ!?」


すると、アルがいきなり走り出したと思ったら食い逃げ男性をぶん殴って帰ってきた。

 きっと普通の身体能力の人にはいきなり食い逃げ男性が吹っ飛んだように見えただろう、隣のクザンがビックリしているのがその証拠だった。


そしてようやく後ろから屋台の店主らしき人が追い付いた。


「ハァハァ······ッハァハァ······っあっありがとう君たちハァハァ······がっ学園の子だね?ハァ、後で学園長に言っておくよ、君達のお陰で助かったと」


 なんかよくわからないが学園長に言ってくれるらしい。


「あっありがとうございます。じゃっじゃあ僕らはここら辺で」


そう言うとすすーっとその場から立ち去った。なんせ、回りからの目線がパネェ。

「さっきのファイアどうなったんだよ」「いやいやそんなことより、あのオッサンいきなり吹っ飛んだぞ?」「じゃあ、あと一人の背高ノッポはスッゲー力持ってたりすんなのか?」

 色々聞こえたがあえて言うのならば、背高ノッポは"普通の"1年生だ。


「おっおい、俺なんかスゲー感じで言われてる!なっなんかやっといた方がいいのかな」


「止めとけ、すべるだけだ」


「そっそうか······」


 凄い感じで言われてるのに調子に乗りかけたクザンだが冷静なイアンに止められ何とか大恥をかかずに済んだのだった。



*********



 イアン達が去った後の広場の暗い路地の片隅でーー


ボロいマントを羽織り、フードを目深に被っているから顔はよく見えないが、頬をこめかみから一直線に顎辺りまでの深い傷痕が目につく。

その傷痕は新しいのかまだ完全に塞がっているわけではなく、そのまま放置しているためか菌が入って傷痕から膿が出ていた。


そしてーー異様に左手の人指し指の爪が長かった。


 その男は先程広場で起きたあの不思議な現象を思い出すと口元を緩ませた。

その間から見えた歯は明らかに数が少なかった。欠けているものもあれば、白い歯が黒ずんでいる歯もあった。


 "広場で起きた不思議な現象"ーーイアンの魔法を打ち消した現象だった。

さっきよりもニタリと口元を緩ませると、


「いいなぁ······俺も欲しいなぁ······力欲しいなぁ······」


すると、辺り一体に黒ずんだオーラが漂い始めた。紛れもなく、この男のものだった。

 そのオーラは路地の隅っこに生えている雑草を枯らし、木箱は朽ち重さで崩れた。


 この魔力は1万人に1人の確率でしか手に入れられることしか出来ない、


闇の魔力だった


「いいなぁいいなぁ······俺もあの力欲しいなぁ······」


そうブツブツ呟きながら暗い路地の奥へと入っていった。



 まさか、さっきの小さな出来事が、この先に待ち受ける大きな事件の発端になるだなんて誰にも想像ができなかった。



**********



 結局イアン達はその後屋上に向かった。


「けっやっぱり街に何か行っても何の意味も無いんだ」


 アルが屋上で寝そべりながらブツクサ文句を言うと、


「何の意味もなくはねぇーよ!イアンだって初めての街で楽しそうにしてたじゃねーかよ!」


「ホントにお前は分かってねぇ」


「わかっーー俺はお前よりイアンのことを理解してる!」


「·······ハァ、もうお前の綺麗事を聞くのは飽きた」


 いつも通りの2人のケンカが始まった、だが今日のケンカは少し違った。


「てめぇいい加減にしろっ」


そう言うとクザンはアルに殴りかかった。

もちろん、アルが殴られるわけなく呆気なく弾き返される。それでも立ち上がるクザンを見てイアンは慌てて止めた。


「おっおい、さすがにそこまではやりすぎだってーー」


「イアンは少し離れたとこにいて」


いつものクザンからは考えられないほどの低く冷たい声でいい放った。

イアンはそのままその場から離れることしか出来なかった。

 離れたイアン見届けたクザンは再びアルの方へ向き直ると、アルはそこにはいなかった。


「えっ!?アイツはーーっ!!」


咄嗟に辺りを見回す間もなく体がくの字折れ曲がった。追い討ちとばかりにくの字に折れ曲がった腰を無理やり元に戻すように、反対側からも衝撃がきた。無様にも前に吹っ飛び地面に顔をつけた。

 しかし、クザンが何故地面に顔がついているのか理解するのには多少の時間が必要だった。が、やっと理解できた頃にはアルの追撃がクザンを襲う。


「ガッァ!!」


 イアンは見ていられなかった、これはただの一方的な暴力に他無かった。だがそれもクザンが立ち上がらなければの話だった。

クザンは何度もどんなにやられようとも立ち上がろうとした。


 クザンにはプライドがあった。イアンは学園に来て初めての友達、今じゃ親友と言っても良いほど仲が良いとクザンは思っていた。が、それなのについ最近友達になったばかりの奴に自分が知らないイアンを知られていることが悔しかった。

そう聞くとただ八つ当たりだが、それでもクザンのプライドはそれを譲らなかった。


「まだだぁ······」


そう立ち上がるが既に足はガクガク震えていた。立っているのもやっとって状態だった。

 ついにアルは最後の一撃と言わんばかりに力を溜めた一撃を入れようとした。が、遂に耐えきれなくなったイアンが、


「もうやめろよ!!!」


ピタリ、と見事に拳を寸止めで止めたアルはイアンを「お前は何も分かってない」っと言ってるかのよな目で見ると、イアンはそれを察して


「んなもん分かってるよ······だからって友達同士で殴りあうなんて僕には考えられないよ!」


ピクリとアルの眉が動いた。

 クザンは限界をとうに越えていたためその場に崩れ落ちた。

崩れ落ちたクザンを見るとアルは何も言わずにその場から立ち去った。


 沈んだ気持ちでクザンを保健室へ連れていくべく背中に乗せてイアンも屋上から出ていった。


 あんなにボロボロにやられたと言うのにどこ骨も折れていないとイアンが気づいたのは、しばらく後の事だった。






***おまけ~続編~***


イアン達が街に行く前ーー


「クレアちゃんどこだよーぅ······」


全く見つからないクレアを探してはや1週間、あれから毎日探すが全てハズレ。もう一生会えないのではないかと思ってしまうほど変わり身の術が上手かった。

 ぎゅっと左手にずっと握り続けたお返しのお手紙、もうしわくちゃだった。


「はぁ、今日会えなかったらもう諦めよう······はぁ」


とぼとぼと中庭を歩いていると前から女の子が歩いてきた、ふっと目線を向けるとクザンは息を呑むのだった。

 そこには今まで探し求めてきた人物がいたからだ。


「くっクレアちゃん······」


クレアは自分の名前がいきなり呟かれたのに驚いてクザンの方を見る。


「私のこと?」


可愛らしく首を傾げながらつぶらな瞳で見つめ返してくる。

 あまりの可愛さにテンパるクザン。


「あっえっと、あのっ!おっお手紙のお返事でひゅ!」


大切なとこで咬んでしまうクザン。

それでも、しわくちゃな手紙を差し出しながら相手の様子を伺う。が、それは想像していた様子とは全く違った。


「?私、あなたにお手紙なんか······」


!?


「えっいやっでもっ」


慌てていっつも持ち歩いていたクレアからの手紙を見せるとクレアの反応は素晴らしかった。

 顔真っ赤。


「えっ!?これ、あのっあなたがお持ちに!?」


急にクレアもテンパるからビビるクザン。


「えっあっうん。俺の机に置いてあったから····」


「······ごめんなさい!!」


いきなり謝り出したクレア。

クザンの頭はついていけてない。


「えっ?ちょっよく意味が······」


「あっあの、その手紙は、イアン君に渡したつもりでした」


·················································。

終わった。俺の人生薔薇色計画は呆気なく終わりを告げたよ。


「あの!本当に済みませんでした!」


そう言うと真っ赤の顔のままスタタターっと校舎の中に入っていった。


 その後しばらく中庭にはクザンにそっくりな石像が建っていたとかいないとか······



読んで頂きありがとうございます。

アドバイス、間違い、指摘していただけると嬉しいです。


おまけはこれで完結です。

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