3 上には上がいた。
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ニコニコニコニコニコニコ
「イアン、気持ち悪いぞそんなに笑ってたぶへっ」
いつもと同じように失礼なことを言う前に阻止する。しかし今回は少し違っていた。
「あっつぁ!!!なにこれ!まさか熱湯!?あっちーよ!!どっから熱湯が出てくんだよ!!」
「クザンるっせーぞ!!」
「はい!!スミマセン!!」
ガルーダに叱られるクザンを見てクックックと隣で笑うイアンをじろりと睨んで、今度絶対仕返ししてやると息巻いているのであった。
今は入学して始めての魔法学、魔力の無いイアンは不安で不安で仕方がないが案外楽しみにしていた。
「じゃ、今日は初めてだから魔力測定からしてくぞー」
ピクリとイアンの体が反応する。急に不安の波が押し寄せてきていた。
もしかしたら、魔力がゼロの生徒を魔法院に置いておいても意味がないと言われここを出されてしまうかも知れない。それともゼロなのに生きていると言う理由で研究所に連れられてモルモットにされてしまうかもしれない······
「······い、おい!イアン大丈夫か?顔色良くないぞ」
クザンが珍しく人の心配をしている。クザンが心配するほど顔色悪いのか?
「いや、別に大丈夫だよ······クザンが人の心配するとか······今日で地球も最後かな」
「てめぇ人がせっかく心配してやってんのに何だよその言い草は!心配して損したぜ」
あぁー何でそこで見栄はってんだよ、そこは無理とか言ってれば医務室で寝るとかして回避できたのに······今からでも間に合うかな、いやでももうすでに大丈夫だよとか言っちゃったし、でもやっぱ―――
「次、イアン」
呼ばれてしまった。もうこれは逃げようがない。
目の前にはグヘヘと目を光らせているガルーダと黒くおぞましいオーラが放たれている不気味に光輝く鉄球(イアンの妄想図)
「ここに手を置くだけだ」
『ここに手を置いた時点でテメェの人生終わりだヒャハハハ!』イアンの複製音
イアンは目をぎゅっとつぶって恐る恐る手を乗っける。
お願いです神様、どうか今だけ魔力を人並みに!
測定中の画面から数字が現れる。
「はっ?ゼロ?······いや待て待てそれはおかしい。イアン、もう一度手を乗せてくれ」
『ギャァハハハハハハハハ、モルモット決定だな!!』
イアンの祈りも空しく神様には届かず、イアンは明日の方向を見つめていた。何度も測りなおした。結果をイアンは知っていた、全てゼロになる。しかしあえてイアンは言わなかった。
「イアン、付いてこい」
『研究所に連れてってやる!』
クラスの皆は何だ何だと立ち上がってたりしたが、ガルーダが一声。
「今日はもう終わりだ、まだ測れて無い奴は次の授業の時だ」
ブーブーと皆の不満の声が聞こえたがガルーダはガラッと扉を開けるとイアンの手を掴んで足早に教室から去った。
教室から出る前にチラッと見たら、クザンと目があった。クザンは意味がわからないという顔をしていた。
僕は目で今度会えたら話すよと伝えた。
それが伝わったのかどうかは分からない話だった。
ガルーダは未だ無言を貫き通していた。教室から出て一言も喋っていなかった、がそれは直ぐに破られた、ガルーダによって。
「その反応ってことはイアン、お前知っていたんだな?」
なんのことかは聞くまでもない、魔力の事だ。
「はい、既に2歳の時に魔力測定をしました。それからも変わらず僕の魔力はずっとゼロのままでした」
イアンは自分のことを話していると段々声のトーンが下がってきて顔も俯いてきた。
そりゃそうだった、ここの世界では魔力は絶対なのだから。魔力が高い低いで職が見つかる世界なのだ、イアンは魔力が低いどころではないゼロなのだ。この世界でのイアンはただの人間以下であった。
「僕、この学園から追い出されるんでしょうか······」
つい、1番気になっていたことを聞いてしまった、聞いてからイアンは損した。
こんなこと聞いて「そうだな、魔力無いもんな。仕方ないことだよ」と言われてしまっては僕の精神も崩壊してしまう。折角こんな楽しい場所を見つけられたというのに……
「はぁ!?損なわけあるか!!ここは義務教育だ、どんなやつでも12年間は居ないと行けないんだ!例え学園長が退学させろと言っても俺は色んな理由をつけて退学を取り消しにさせてやるから安心しとけ」
思わずうるっと来てしまった。何てかっこいい先生なんだろう、いつどんなときでも生徒の見方をしてくれる先生。僕、こんな学校の先生にーーなれないか······なんたって魔力が無かったら生徒に教えようが無いもんな。
僕ってこの先、生きていけるのかな。
「とりあえず学園長に説明をしてみるから、イアンは付いてくるだけでいい。」
コクンとイアンが頷くとガルーダは目の前の大きな扉をノックした。
「開いとるよー」
中からは軽い感じのおじさんの声が聞こえた。そのとたんにガルーダの背筋がピシッと伸びたのをイアンは見た。
そんなに怖い学園長なのかと不安になりながらも今はガルーダを信じるしか無かった。
「失礼します」
扉を開くと目の前には一面の赤い絨毯が広がった。真ん中にはフカフカそうな2人掛けのソファー向かい合って真ん中に豪華な机が置いてあった。部屋の壁側には学園長の趣味だろうか、沢山の武器が飾られていた。そしてその人はいた。部屋の奥の大きい机の反対側に置いてある頭まで見えなくなるような椅子に座っていた。
「おぉガルーダ先生じゃったか、なにか緊急事態でも起きたのかね?」
「いえ、少々気になる生徒が現れたので連れてきてお聞きになろうとしたところです。」
ガルーダはイアンを学園長から見える位置に移動させた。
「おぉーその子か、そのこならわしも知っとるよ。イアン君じゃろ?お父さんから色々話は聞いておったよ、魔力量がゼロの子と聞いていたがまさか本当だったとはな······」
「知ってたんですか!?何故教えてくださらなかったのですか?」
イアンは考えていた。
ガルーダが敬語とか······クザンが人の心配するのと同じくらい気持ち悪いな······いや、それよりも父さんが学園長に話していた?聞いてないよそんなこと。まぁ確かに魔力が無くたって安心して学校に通えよ、とは言ってたが······まさかこーゆーことだったとはな。
「だってガルーダ先生がわしの話を聞かずに張り切って行ってしまったんじゃもん」
「なっ!?それは失礼しまし――」
「うっそぴょーん、わしが話忘れただけじゃ」
なっ!?一体この学園長なにもんなんだ!?クザン以上に人をおちょくるのが好きそうだ。しかも忘れたって学園長がそんなんで良いのかよ!
「学園長、いい加減にしてください。マルッサ先生呼びますよ?」
「なっ!?それはダメじゃ!謝るから!それだけはイカンのじゃ!わしまた正座1時間とか無理じゃもん······」
本当、ここの先生たちは何者なんだろう。ガルーダが敬語を使うほどの上の先生、かとおもいきや学園長ですら怯える先生がいる。上下関係が上手く掴めない。
それにしても2人とも、もしかしたら僕のこと忘れてやしないか?なんか話がどんどんずれてって関係ない話になり始めてるし。
「あの!僕は退学にはならないんですか?」
急に大声で呼び掛けたせいかビクリと反応した。2人とも僕の方を見たとたん、あぁ······忘れてた。という顔をした。ちくしょう、何かムカつくな、大人に忘れ去られるって。
「退学?ガルーダ先生何か脅したのかの?脅されたとしてもこの学園に退学という処罰はない。なんせわしが無くしたからの、ホッホッホッホ」
開いた口が塞がらなかった。この学園長はスゴいのか分からなくなってきた。学校の規則を変えられたり出来る、かと思いきや、スゴくお調子者で、でも絶対に色んな先生、生徒に好かれていると思われる雰囲気。
一体何なんだろう。
「しかもイアン君、君はだた魔力がゼロなだけ。ちと特殊だが決して悪いことをしたわけではないから退学という処罰があったとしても君には受ける理由が無いからの」
「あっありがとうございます!!!ここに通い続けていいんですね!ありがとうございます!」
咄嗟に頭を腰よりも下までさげて深ーいお辞儀をした。この世界にお辞儀があるのかも微妙だが世界共通のマナーなんだあるだろうと、軽い感じでそんなことは流して、これからもこの学園に通えるという喜びに浸ろう。
「お礼を言われるよーなことはなにもしとらんがね。ホッホ、もちろんここに通い続けるがいいぞ。思う存分学園生活を楽しみなはれ」
「ありがとうございました、失礼します。」
そのまま、ガルーダと部屋を出ようとしたところ、
「ガルーダ先生はちょっと残ってもらおうかの」
と、なんだか意味ありげな目でガルーダを引き留めた。ガルーダは一瞬戸惑ったもののすぐに僕にはもう自分の部屋に戻ってろと伝えると、部屋から閉め出されるような形で部屋から出された。何だよもう、メチャクチャ内容気になるじゃんか······
とぶつぶつ文句を言いながら部屋への道に差し掛かるとそこにはある少年がいた。
「ソー君!」
少年――青い髪の毛のガン飛ばしてた少年だった。
ソー君は僕に気がつくとしまった!という顔をしてくるりと背を向けスタスタ歩き出した。僕も付いていく、無言で。
遂に痺れを切らしたそー君は
「······何だよお前!!付いてくるんじゃ……ねぐぅ!?」
急にグルリと振り返ったから顔と顔がぶつかった。ちょうど身長も同じくらいだったし?でも、マウストゥーマウスはさすがに無かったよ?変なこと想像しないでね?
「痛いよソー君······いきなり振り返るなんて、振り返るなら言ってねちゃんと」
目の端に若干涙を浮かべながら鼻の頭を押さえる。これを見てる人が女性だったら一瞬で恋に落ちるくらいの美形だとはイアンは知るよしもない。
男性であるソー君でさえ、
「っ!!!!!······んなもんいちいち言う分けねーだろ!それとそのソー君っての止めろや!俺だってしっかり名前あるんだよ!」
息を呑む位だ。
「名前教えてくれるの!?やっふーい!おーしーえーてー」
ソー君はピョンピョン跳ね回るイアンを少し羨ましそうな目で一瞬だけ見たがそれもすぐに無くなりちょっと照れたような表情になる。
「……アルベルト、アルでいいよ」
すると、ソー君――アルの顔がみるみる赤くなっていった。
かっわいいー、照れちゃって。名前言うだけでこんなに照れるとかかわいいにも程があるでしょ。男の娘容疑で逮捕しちゃうぞ?バキューン
「アル、僕は知っての通りイアン」
アルの顔が今まで見たなかで1番楽しそうな顔をしている。初めて友達ができたかのように······が、その顔もすぐに無くなってしまった。
「……もう名前教えたんだから俺に関わるな。」
冷たくそういい放つとくるりと背を向け歩き出した。
イアンは特に気にした様子も見せずに、
「なんで自分から1人になろうとしてるの?」
すると、アルの体が一瞬ビクリと反応した。しかし振り返ろうとはしない。だからと言ってそのまま歩き続けると言うこともしなかった。
「皆で自己紹介の時もそうだった。あーゆー立ち位置になれば自分に近寄って来るものがいなくなることを知っていながらあーゆー行動をした。今だってもうあからさまに僕を避けようとしていた、でも僕は見ている、たまに見せる悲しそうな顔。なんでそんな顔をするのに自分から皆を遠ざけようとするの?」
言いたいことを言い終わったイアンはアルがどう言ってくるのか少々待った。よーくアルを見ていると肩が震えていた、泣いているのかな?と思ったが違ったーー怒っていた。
「お前に何がわかるってんだよ!なんかしんねーけど化け物じみた筋力持ってるせいで幼なじみからは化け物扱いされ、あげくの果てに家族までもが俺にビビるようになった。こんな不幸な人生を送ってた俺の気持ちが分かるか!······分かるわけねーよな、お前みたいな人を寄せ付けるよーな体質持ってるやつなんかに分かられてたまるか······お前、偽善者のふりするのはもう止めろよ、俺には丸わかりだよ。見ててイライラする。」
イアンは少し考えたあとすぐに、
「アルの気持ちは僕には分からないし分かろうなんて思ってもない、しかもそんな苦痛な過去話をされても僕はアルを励ます何てことは出来ない……でも、その苦痛な過去話を全て不幸の一言で終わらそうとしてるの?もしそうだとしたら僕は”君”を殴るよ」
イアンが話している時、アルは何度も怒鳴り返そうとしたが出来なかった。イアンが最後の一言同時にとてつもないオーラを纏ったからだ。それはあのときの副寮長の時とは比べ物にならないくらいのオーラだった。
アルの足はガタガタと揺れ天上にぶら下がっているランプもゆらゆらと揺れている。しかしアルは自分の怪物じみた力を思い出して拳に力を入れた。
「殴れるもんなら殴ってみろよ!!」
その言葉と同時にアルは足に力を入れて一歩踏み出した。それは魔法など一切使っていなかったら絶対に出せない瞬発力だった。一気にイアンの懐に入ると思いっきり拳を殴り付けた。
が、
「なっ何なんだよお前······」
その拳は真っ直ぐにイアンの腹に直撃していた、しかしそれで終わりだった。
アルのパンチは1本の木を殴り倒せる位の威力だ、がそのパンチを食らってもなおそこに立ち続けている少年がいた。その顔には苦痛の表情など一切なくさっきとなんら代わりのない顔をしていた――のではなくイアンもビックリしていた。
「おぉ!アルのパンチスゲーな!あんなスピード出しときながら一瞬でこの威力に抑える事が出来るとか、やー参ったよ。アルには敵いそうもないや」
ニカッっと笑い両手を挙げてお手上げのポーズ。
もちろんアルもビックリする。何たって一瞬足りとも威力を抑えた事はしなかった、完璧に腹を突き破るくらいの気持ちで殴ったつもりだった。それが全く効いていない、今まで自分より強い怪物などいるのだろうかと思っていたのだがそれが一瞬にして覆された。目の前にいる。
もちろんイアンが特別、演技をしている分けでもなさそうだった。心の底からのビックリ。
つまり、イアン自身、自分が化け物級の力を持っていることを知らないのだ。
呆然としているとイアンが不思議そうに
「なんかついてる?」
聞いてきた。はっと我に返ると自分の顔をペタペタと触っているイアンが目の前にいた。
「いっいや、なんも······まっまぁもうこんなのは懲り懲りだろ?だから俺にもう関わるなよ?分かったか?」
今度はしっかりと確認を取るように聞いていた。
またさっきのように何も言わずに去ろうとしたら、何されるか分かったもんじゃないと思っているのだろうか。イアンの異常さを知ってるからこその確認だった。
「あぁアルには敵わないからな······放っておきたくはないけど無理だからな······でもさ聞いてくれよ、僕はアルを友達だと思ってる、名前を言い合った仲なんだからさ。だからアルを怪物扱いしたやつが目の前にいたら僕がぶっ飛ばしてあげるから、アルには敵わないけどさ。」
ニコッとイアンは笑った。
「(あぁ俺こそこいつには敵わないなぁ一生、力でも人間性でも······)俺も―――ぃ―?」
イアンが大きく頷くとアルは猛ダッシュで消えてった。
残ったイアン顔にはさっきよりも満面の笑みが浮かんでいた。
[ーー俺も友達だと思っても良いかな?]
アドバイス、間違いなどくれたら嬉しいです!
次回はヒロインが出てきます。主人公のチートは?って思わないで!