プロローグ チビでも舐めんなよ?
とある橋の下での事だった。
「ねぇねぇ俺達と遊ぼーよー、皆でバーベキューした方が絶対楽しーって」
今時の若者がちょっぴり美人な女性をナンパしていた。明らかに困っている女性陣は漫画のような対応をする。
「いや、あのもう帰りますので……」
「いやーまだまだ時間あるって、夜はこれからじゃん」
聞いてる人がドスケベだったら吹き出すような人もいただろう発言をしていた。
が、そこに一人の少年が近づいていた。
「ねぇねぇおねーさん、僕と遊ぼうよ!」
「………………………………」
満面の笑みでナンパする少年。
絶句の他なかった。何せ場違いな小さい少年の声で立派な大学生くらいの女性に声をかける、だけならまだしも、もう既にナンパされている女性に声をかける人などいるだろうか?いや、いないな……。しかしここにいた。
小学6年生位の男の子がナンパされている大学生位の女性陣をナンパするというなんともシュール光景だった。
ナンパしていた若者達がハッ我に返ると、
「おいおいぼくぅー。ぼくにはまだ早いよナンパとか。しかももう夜だから小学生はもう帰っておねんねしなさい」
と、小さい子をあやすような幼稚語で少年を追い返すようにするが少年の顔は"小学生"という言葉を聞いた途端に笑顔が無くなった。
「小学生?ハッ笑わせんのも大概にしろや、俺の鉄拳食らいてーのか?」
もはや、さっきまでの可愛い感じの少年はどこえやら……。一人称まで変わってしまうほどの豹変ぶりだった。しかしその威圧感は半端ないものだった。とても小学生位の少年が出せるとは思えないほどだった。
若者は一瞬ビビるが見た目―――身長150ほどの小ささ特にガタイも良くはない―――からそれほどの威圧感はただの脅しだと思い込んだ。
「ハッ!なっ何言ってんだ小僧、脳みそ腐ってんじゃねーのか?どっからどう見てもお前は小学生だし鉄拳とか······ハッ笑わせんのも大概にしろやってのはこっちの台詞だっての」
若者はどうやらこっちは二人だし相手はチビで一人だからやられる心配は無いと調子に乗って挑発するが、
「どっからどう見ても小学生ねぇー······はぁー、俺ぁ柏木高校二年の佐伯 良だ」
「·············································」
本日二度目の絶句入りましたぁー!!ありがとーございまーす!
そうこの一見小学生にしか見えない少年――佐伯 良は高校二年だった。立派に義務教育も終えてました!
「おいチビ冗談はそのちっせー身長だけに――っ!?」
良の怒りも頂点に達し抑えきれずに思わず渾身の一撃がみぞおちにめり込んだ。続けて隣でビックリしているもう一人の若者には回し蹴りをみぞおちにお見舞い。呆気なく崩れる若者達に怒りの目を向けいい放つ。
「チビだからって舐めんじゃねーぞ!」
渾身の決め顔。だが、
「おーい、そっちの収穫はどーおー?」
なんと遠くから大勢の人がワラワラと来た。きっとこの、若者の友達か何かだろうが今この状況を見られてしまっては最悪のパターンしか想像出来ないだろう。
倒れてる友達、近くに立ってるチビ、その後ろには美人さん。どっからどう見ても奪い合いの後にしか見えない。そしてその友達をやられた友達は目の前にやった張本人を逃がす筈がない。
つまり······死亡フラグが立ちました。
案の定、倒れてる友達を見たやつは、
「なっ!?おい!!大丈夫か!?誰だこれをやった···の···お前か!!」
ドヒューン
その効果音がピッタリな位の速さでその場から逃げる良。
さっきのように倒しちゃえばいいのにとか思っちゃいけない。良のケンカスタイルは一人だと勝てる、二人だとまぁ勝てるんじゃん?三人以上だと無理、即逃げ。この程度のレベルでしか無かったのだ、特別チビだからケンカが強いとかそーゆーのは無い。普通の小さい高校生だった。
「まてコラ!!生かして返さねーぞ!!」
そして若者たちは当然の如く追いかけて来た―――――
**********
「あー疲れた。」
とさほど疲れてないようなスッキリした顔で信号を待つ良。あの若者たちをうまく撒いたらしい。
そこに視界の端で何かが道路に飛び出した、女の子だ。運悪く一台のトラックが黄色の信号をスピードを上げて渡ろうとしていたとこだった。
あっまずい。
そう良が思うのと同時に体は走り出していた。女の子はまだ自分に降りかかろうとしている死に気が付いていない、満面の笑みで反対側にいるお母さんの元へ走っている。お母さんは勿論気が付いている、必死に娘に来るなと呼び掛けていた。お母さんの異変に気が付いた少女は立ち止まった、がそれが間違いだった、ちょうどトラックの目の前だった。
キキィィィィィィィィィ
っとトラックのブレーキ音が響くが当然間に合わない、そのトラックは少女を撥ね飛ばす―――――代わりに真っ先に走り出していた少年―――良が撥ね飛ばされていた。
その小さく軽い体はゆうに10mほど撥ね飛ばされた。
「(あぁー身体中いてぇトラックに撥ね飛ばされるとか······人生に一回有るか無いかだよな······そー考えると運がいい方······なのかねぇ俺は······ってかあの女の子は助か······ったのかな?助かって無かったら俺······無駄死にじゃん······あぁー本当に疲······れたや······もう寝ちゃおう······うん······そーだそれ···が···いいや······)」
良は重くなった瞼をそっと閉じた。
そして、うるさい音で"目が覚めた"
書き始めて間もないのでつたない文ですが読んで頂いて嬉しい限りです。間違いやアドバイス頂けたら嬉しいです。