アナグラ行進曲【序曲】
とあるファミレス、一番奥の四人がけの禁煙席に、男が三人アイスコーヒーをすすっていた。
男たちはそれぞれ下をむいて思い思いにふけていた、いや、ほうけていた。
一人の痩せ型の出っ歯の男が一言。
「今回もダメだったか」とつぶやいた。
痩せた男の右隣の小太りの男が、
「一年前にもそのセリフ訊いたよね」と言う。
どうやらこの近くの会社に面接に言ってきたみたいだ、んでその場で断られたか、面接の感じがよろしくなかったか、らしい。
私はこのファミレスでウエイトレスとして働く【一宮 ミサキ】なんだか面白そうなのでそのテーブルのほうへ聞き耳を立てていた。
「来年こそはがんばるナリ」痩せ男の正面に座っていたちょっと猫背の男が言った。
『何、あの子ナリって言った、ナリって、キテレツ、あの子キテレツなの』正解はコロ助だがミサキにはどうでもいい、ミサキは『うププ』笑いをこらえながら耳をそばだてた。
「今年は何社受けたナリか?」
「俺、何社だったかな?もぅ忘れるくらい受けたな、何が悪いかな」
「顔だよね」
「顔は関係ないよね、顔は」と痩せ男はあごに手をやり格好をつけた。
「そう、それがいけないナリ、そんな格好つけてばかりいるから落とされるナリ」
「そうだよね、だからあだ名が格好付けのマッチ棒とか、セコビッチとかいわれるんだよね」
「よね、よねうるさい、お前だってその体格で、鈍重よね男とか、トンズラとか呼ばれているくせに」
「まぁまぁお二人さん」今にもケンカしそうな二人に割って入った。
『うるさい、お前は黙っとき、このコロ助が』二人息ぴったりだ。
「ケンカしてる場合じゃないな、このままだと定職に就けれないぞ」
「どうするナリか?」
「とりあえずニートだよね」
「アカン、ぶらぶらしてたら母ちゃんに怒られる、国に戻される」
「君の母ちゃん怖い人ナリ」
「あぁ怖いぞ、綿棒持って追いかけてくるぞ」
「綿棒?麺棒の間違いだよね」
「そんな事はどうでもいい、これから先どうするかだ」
とそれからあぁでも無い、こうでもないと面白くない話になってきたので私【ミサキ】は仕事に戻った。
それから幾時間が過ぎバイトもシフトの時間がきた、私は私服に着替えタイムカードを押し「店長、お先です」と挨拶をして店を後にしようとして外に出た。
勝手口から出ると、セコビッチとトンズラとコロ助のいる席がガラス越しに見えた。
まだ三人はそこにいた。
私はニタニタしながらそこを後にした。
次の日、私はバイトに来て驚いた、昨日と同じ席にあの三人がいたのだから。
三人は昨日と同じようにアイスコーヒーをすすっていた。




