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アナグラ行進曲【序曲】

作者: 木野瀬水道
掲載日:2012/01/18

とあるファミレス、一番奥の四人がけの禁煙席に、男が三人アイスコーヒーをすすっていた。

 男たちはそれぞれ下をむいて思い思いにふけていた、いや、ほうけていた。

 一人の痩せ型の出っ歯の男が一言。

「今回もダメだったか」とつぶやいた。

 痩せた男の右隣の小太りの男が、

「一年前にもそのセリフ訊いたよね」と言う。

 どうやらこの近くの会社に面接に言ってきたみたいだ、んでその場で断られたか、面接の感じがよろしくなかったか、らしい。

 私はこのファミレスでウエイトレスとして働く【一宮 ミサキ】なんだか面白そうなのでそのテーブルのほうへ聞き耳を立てていた。

「来年こそはがんばるナリ」痩せ男の正面に座っていたちょっと猫背の男が言った。

『何、あの子ナリって言った、ナリって、キテレツ、あの子キテレツなの』正解はコロ助だがミサキにはどうでもいい、ミサキは『うププ』笑いをこらえながら耳をそばだてた。

「今年は何社受けたナリか?」

「俺、何社だったかな?もぅ忘れるくらい受けたな、何が悪いかな」

「顔だよね」

「顔は関係ないよね、顔は」と痩せ男はあごに手をやり格好をつけた。

「そう、それがいけないナリ、そんな格好つけてばかりいるから落とされるナリ」

「そうだよね、だからあだ名が格好付けのマッチ棒とか、セコビッチとかいわれるんだよね」

「よね、よねうるさい、お前だってその体格で、鈍重よね男とか、トンズラとか呼ばれているくせに」

「まぁまぁお二人さん」今にもケンカしそうな二人に割って入った。

『うるさい、お前は黙っとき、このコロ助が』二人息ぴったりだ。

「ケンカしてる場合じゃないな、このままだと定職に就けれないぞ」

「どうするナリか?」

「とりあえずニートだよね」

「アカン、ぶらぶらしてたら母ちゃんに怒られる、国に戻される」

「君の母ちゃん怖い人ナリ」

「あぁ怖いぞ、綿棒持って追いかけてくるぞ」

「綿棒?麺棒の間違いだよね」

「そんな事はどうでもいい、これから先どうするかだ」

 とそれからあぁでも無い、こうでもないと面白くない話になってきたので私【ミサキ】は仕事に戻った。


 それから幾時間が過ぎバイトもシフトの時間がきた、私は私服に着替えタイムカードを押し「店長、お先です」と挨拶をして店を後にしようとして外に出た。

 勝手口から出ると、セコビッチとトンズラとコロ助のいる席がガラス越しに見えた。

 まだ三人はそこにいた。

 私はニタニタしながらそこを後にした。

 

 次の日、私はバイトに来て驚いた、昨日と同じ席にあの三人がいたのだから。

 三人は昨日と同じようにアイスコーヒーをすすっていた。

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