第2話「ルール設定と出場選手」
何を言われたのだろうか。
このロリーできょにゅーな子は今、何を・・・。
「では用事はそれだけなんで」
1組の津野さんは自分のクラスに帰ろうとする。
しかし大瀬がそれに待ったをかけた。
「えーっと津野さんだっけ?その・・・なんで俺達に『内紛』を?」
そう。
僕たちに『内紛』を仕掛けるほど無駄なことはないはずだ・・・だったらもっと上のクラス。
1組が最強だから2組あたりに仕掛けたほうがいいはずなのに。
「なぜって・・・君たちが面白そうだから」
にこりと笑う。
「葉花たち、1組はどこに宣戦布告しても同じなんだ」
自分のことを名前呼びだと・・・ッ!ポイントが高いぞ・・・これは・・・。
さっき私と言ったのは雰囲気を盛り上げるためだったとでもいうのか・・・!
「おい、御門。お前は思考すべきところがずれているぞ」
小林くんに注意される。
僕の心を読まないでくれ。
「いや、顔に出てた」
・・・・・・・・・・・・僕のバカ。
「そ、そうじゃなくて!なんで仕掛けてきたの!」
「1組はすでに最強。だったらどこに仕掛けても同じ。初めての『内紛』ということで、確実に勝てる相手を選んできても不思議ではないよ。『内紛』に勝ったら先生の評判とかも上がりそうだしね」
岡元さんが丁寧に説明してくれる。
絶対岡元さん、魔法学以外成績いいよ、これ。
「んじゃ、1週間後楽しみにしてるね」
そう言って去っていく津野さん。
「大瀬・・・!」
「まぁ、待て。まずは相手のクラスとゲーム内容に相談する」
こんな時でも冷静だ。
大瀬は悪知恵が働くから今回の『紛争』では活躍するかもしれないな。
「とりあえず、全部相手に任せていいかな・・・」
前言撤回。
ものすごくびびってた。
「だ、誰が1組に行くんだ・・・?」
教室の中、生徒たちがざわめく。
確かに、話すためには1組にいかなきゃいけない。
向こうから来るのを待ってもいいがこれ以上何か先を越されるわけにはいかないという考えがみんなの頭にはあった。
あるにはあるが・・・。
「じゃあ、俺が行こう」
そこで手を挙げたのは今野くんだ。
しかしそこで大瀬が止める。
「お前が行ったら余計に混乱するだろうが!」
「な、なぜ!?」
「なぜ!?気付いてないのかよ!」
「じゃあ僕が行くよ」
と僕が手を挙げる。
「御門・・・お前はここにいてくれ」
「・・・・・・・大瀬、お前僕のことバカだと思ってるだろ。見下してるだろ!」
「しゃあない、俺が行くか」
『させるか!』
僕と今野くんで大瀬を押さえ込む。
もうなんか作戦相談=頭のいいやつがやるみたいな感じになってきた。
もはや1組の宣戦布告など頭にはない。
誰が行くか。誰が一番頭がいいかという9組内での闘争が勃発している。
「じゃあ、魔法で勝負しかねぇな」
「しょうがないよね」
これは戦争だ。
「でも、魔法を使うためには先生の許可が必要だよ」
岡元さんがもっともなことを言う。
だがここはひけない男の勝負なんだ。口出し無用!
「岡元さん・・・・・これは戦争なんだ・・・・・・」
「いや・・・戦争は私たちと1組では・・・?」
うん、まぁそうなんだけどね・・・。
「いくぞ!大瀬、今野くん!」
「こい!」
「ここで俺の封印を解く」
「いや、はやく1組に来なよ・・・」
教室の入口に津野さんが立っていた。
しまった・・・先を越された・・・!
「くっ!大瀬と今野くんがもたもたしてたからここでも先手をとられた!」
「御門と今野がもたもたしてるから!」
「いいや、お前ら2人が!」
「そこはいいから、誰でも」
小林くんに止められる。
「で、『内紛』の勝負内容なんだけど・・・どうする?」
「津野さんはどうしたい?」
大瀬が聞く。
意外と軽い話し合いだな・・・もっと緊迫したゴゴゴゴゴゴという感じだとばかり。
「葉花はなんでもいいよ。君たちに任せる」
「・・・・・・」
大瀬が黙る。
これは1組が必ず勝てるという自身のあらわれなのか・・・それとも罠か。
こんなにあっさり譲られると逆に不安になってくる。
「わかった。じゃあ、今から提案する勝負内容にしよう」
津野さんの言葉にのることにしたのか。
でも勝負内容を考えられるということは普通に強みだろう。罠だろうがなんだろうが戦力差が信じられないほどあるんだ。ここは話にのるしかないのだろう。
「ルールは5人全員を強制離脱させれば勝ちのスタンダードな内容」
余計な工夫をすると確かにこっちから墓穴掘るかもしれないし、いい内容だと思う。
わかりやすいし、9組にぴったりだ。
「それとさらに、ダメージ量は魔法による攻撃を一撃受けたら負けのサドンデスルールだ」
「!?」
なっ・・・!これはなんていうルールだ。
まるで大人げない!いや、同年代に大人げもなにもないんだけど、ルール設定を譲られたのに遠慮がまるでなかった。
「ルール設定は俺らに任せるんだろ?」
なんて下種いんだ!相手は女の子なのに!
「うん、いいよ」
しかし津野さんは特に動揺することなく笑顔で頷く。
可愛いだけじゃなくて優しくもあるんだね。
でも僕だけじゃなく、他の人にもどこかひっかかるところがあった。
確実に勝つ相手を選ぶのにこんなに不公平なルールでいいのだろうか・・・あっさり頷いたけど勝率は少しとはいえ、下がるようなルールなのに。
「じゃ、それで」
そう言ってまた去っていく津野さん。
「大瀬」
「ああ、あんだけ不利な内容でも簡単にのってくるんだ。余程の自信があるかそれとも何かあるな」
大瀬もやはり何か引っかかっているようだ。
「まぁ、それもそうなんだけど」
「?どうした?」
「『内紛』に出る5人って誰を選ぶの?」
「・・・・・・」
すっかり忘れてたらしい。
「でもそれは俺が決めることじゃないような気がするな。誰か出たい奴はいないか?」
『・・・・・・』
静寂。
誰も手をあげない。というかまぁ、どんなことが起こるか分からないのに最強の1組と戦いたいやつなんていないだろう・・・よほどのマゾじゃないと耐えられない。
でも・・・しょうがないな。誰もいなくて戦うことすらできない自体は避けたい。だからしょうがなく、僕が立候補しよう。Mとかじゃなくてね。
「あ、大瀬。じゃあ僕が」
『お前は出さない』
大瀬に聞いたのに全員から返答がきた。
なんてわがままなクラスメイトなんだ・・・自分たちで手を挙げないのに!
「御門がやるぐらいなら俺が!」
「いや、俺が出る!」
「私がでてもいいわよ」
「お前が出るなら俺もでようかな」
・・・・・・・・・・・・。
クラスがまとまっていた。
ま、まぁ、作戦通りだよね!さぁ、これで1組に勝とうじゃないか!
「?御門?」
「う、うるさい!バーカ!」
僕は泣きながら教室を飛び出した。
魔法科ではなく魔法学という名前に変更しました。
そちらの方が授業という感じがしたので。
ではまた次回。