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クラスメイトは『大切な人を救うために死に戻る能力者』  作者: 破れ綴じ
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[26:00] 弟の役目

 9月。

 今年は涼しくなるのが早かった気がする。


「回復してるみたいで本当に良かったよ、母さん」


「そんなはずは……ねぇマコト、CKDって治らないはずじゃないの?」


「ならCKDじゃなかったということだ。腎臓に何か悪いものがあっただけなのかも」


「えぇ~……? それはそれで怖いんだけど」


 大丈夫、母さんは何も知らなくていい。

 僕には原因が何だったか分かっているから心配の必要はないし、明確に改善した腎機能の数値を見て、担当医の先生と一緒に首を傾げてくれればそれでいい。


 実際、前回までの定期検査の帰り道とは比べ物にならないくらい足取りも軽そうだ。

 待合室で座っているだけで顔色が悪くなり、帰り道は僕が荷物を全部持って、母さんの歩調に合わせてゆっくり歩いた……あの日々が懐かしい。以前はタクシーを使って帰っていたというのに、今日の母さんは自分の鞄を自分で持っているし、バス停まで僕の隣を普通の速度で歩くことができている。

 先生も「原因は分からないが経過は良好、この調子なら透析の必要性も当面はないだろう」と言っていた。実際にはこれから透析が必要になる未来が来ることは無いのだが……まあこれは、言わなくてもいいだろう。透析の二文字に怯えなくてよくなったという収穫があれば十分だ。


 人体の回復力とはなんて素晴らしいものなんだ。

 ああいや、この場合褒めるべきはここまで耐えきってくれた母さんの方かもしれないな。


 辻セイラも予告通りあの周でループを抜けた。問題は無事に解決できたみたいだ。

 彼女が何度死んでも繋ぎ続けてくれた情報がなければ、今日という日は存在しなかった。感謝してもしきれないが……既に何度も礼を言ったし、引きずりすぎても「気持ち悪い、だからアンタは……」とか言われそうだな。


「でも……それなら、当分心配はしなくてよさそうかな?」


「そうだな。『死ぬかもしれない』だなんて思う必要は一切無いと思っていいはずだ」


「えっ、あっ……し、死ぬだなんて大袈裟な。あはは~……」


「ごめん。母さんに言うべき言葉じゃなかったよ」


 ごめん、母さん。嘘だ。僕は分かってそう言った。

 母さんがあの男を一度でも受け入れてしまったのは、「息子達二人には保護者が必要」「自分は保護者としてもう長くない」と思い詰めてしまったからだ。全て、あの男のせいで。

 母さんが誤魔化して笑った理由も、今なら完全に分かる。自分が死ぬかもしれない、そんな恐怖を一瞬でも抱くほど体調が悪化したと、この人は僕達に明かすべきではないと考えているんだ。

 大丈夫、僕は全部分かっている。


 だからこそ、母さんはまだまだ元気……むしろ、前まで恐怖していた死の可能性が現状存在しなくなった、そう強調する必要がある。母さんの覚悟的にも、僕達の精神衛生的にも、瀬尾家の現状維持のためにも、それが必要だ。

 体調は改善したんだし、様子を見て少しずつ食事をCKD以前の内容に戻してみてもいいかもしれない。急激に変更することは流石に怖いが、次第に問題無く栄養分を摂れることが身を以て実感してくれれば、もっと安心できるようになるだろう。


「……マコト」


「何かな」


「その……私、一つ謝りたいことがあって」


 ……ああ。


 いや、心当たりはある。

 母さんが何か言おうとしているのは少し前から気づいていた。あの男が出て行ったあの日はまだ不安そうにしていたが、体調が回復傾向にあると分かってからは、ずっと僕に気まずそうな目線を向けていた。


 というか、この人はあの日からずっとあのことを気にしていたんだ。

 その日すぐに謝りに来てはいたけど、今はもう気持ちに整理がついたから、改めてと言ったところだろうか。


「7月にね……あなたに言ったこと。『二人は親子なんだから』って……」


「……」


「マコトが悲しむって分かってたんだけど、それでもああ言うしかないと思っちゃってて……あの時の私は、自分の病気のことも、あの人がすぐに出て行っちゃうことも、その上でマコトとアラタが私を支えてくれるってことも、分かってなかった。自分の息子を、信じられなかった」


「……」


「だから、本当に……ごめんなさい」


「……謝らなくていいよ、母さん。全部分かってるから」


 母さんの事情は分かっている。

 あの場では自分の病気が外的要因によるものだとは分かりようがないし、5月の急速な体調悪化も自身の死を感じ取るには十分なものだったはずだ。母の不調を責める息子がどこにいるのか。

 あの男が出て行ったのも僕が脅したからであって、もし行動を起こさなければずっと家に居直っていただろう。そういう点でも、僕の介入が無ければ母さんの見通しは間違っていなかったんだ。


 それに、僕達が「大丈夫だ」「僕達は心配ない」「保護者なんて必要ない」といくら主張しようが、それでも心配に思う、思ってしまうのが親心というものじゃないか。

 そこで母さんが「そう? じゃあ息子達には保護者なんていなくてもいいや」と思う訳がない。もし見捨てられていたとしたらそれはそれで悲しかったと思う。勿論、母さんがそんなことしないとは分かっているが。


「それに、もうあんな男には頼らなくていい」


「へ?」


「あの男では瀬尾家を守れないし、そもそも守る気も無かった。そんな人間に父親として振舞える価値は無いし、第一そんな人間が母さんに頼られるということの方が耐えられない」


 だから。


 だから……。






「だから、僕が瀬尾家の父親代わりになる」


「……マコト」






「いや、その……まだ家計を全部賄えはしないんだけど」


「うん」


「それでも、母さんが『息子達だけじゃ心配』だなんて思わない程度には頼れる人間になってみせる。あの男に頼るぐらいなら、僕にその不安を、全部打ち明けてほしいんだ」


「……」


「僕は、母さんに心配されるだけの人間じゃなくて、母さんの問題を一緒に受け止められるような……そんな対等な存在になりたいから」


 まさか、僕の口から「父親」という言葉が肯定的な意味合いで出て来るとは。

 でも、そうなんだ。そう思ってしまったんだ。


 母さんは、僕達を保護する存在としてしか見れていなかった。

 当然だろう。僕達は母親と息子で、妻と夫のように共にお互いの問題を解決するために協力し合うような関係性ではない。自分のお腹を痛めて産んだ子供に、今の自分の問題も背負ってもらおうとする性格じゃないことは分かっている。

 だからこそ、対等な立場だったはずの……あの男を頼る相手に選んでしまった。


 でも、もうそんな選択をしてほしくない。

 僕達を守るために、自分の身を犠牲にするような判断をされても、僕達は喜べないんだ。それなら、僕を対等な存在として見てもらうことで、有事の際にはすぐ僕に頼れる形にしてほしいんだ。


 こんな主張自体が……子供じみたものかもしれないけど。

 それどころか、「親に似たくない」と言っていた僕が「父親代わり」になるなんて、そもそも矛盾しているかもしれない。7月の僕であれば自分の言葉を自分の意思で否定していただろう。


 ……でも、母さんの愛をより深く知った今の僕は、当時の僕とは違う。

 そして今は母さんも、当時とは状況が同じじゃない。






「マコト……」


「うん」


「……大きくなったね」






 ……。


 ……っ。


 ……ふぅ。


 まあ、それでいいか。

 頼るとも、頼らないとも言わなかったけど。

 少なくとも、小さな子供のままという認識ではなくなった。改めてくれた。

 守るべき相手ではなく、困った時に、優先的に頼る相手と思ってくれたはずだ。


「……帰ろうか。アラタが待ってる」


「うん。今日のご飯、どうしよっか。何が良い?」


「……母さんが作ってくれるのか?」


「久しぶりにいいじゃない。あの人には一度も作ってあげられなかったから」


 あんな男になんか作らなくていいのに……。

 まあ、あの男にも作れなかったものを、僕達のために作ってくれると考えれば……悪い気はしないし、良いか。むしろ喜びしかない。


 ……えっいいのか。

 なんだか急に嬉しくなってきた。

 人目が無ければ踊り狂っていたかもしれない。

 今から一緒にカラオケ行かないか? 


「ふふふ……そんなに嬉しい?」


「嬉しいよ。僕達の頑張りが報われたって分かったから」


「?」


 僕とアラタが手を組み、ハルキやアサヒや辻セイラや九条ノドカまで協力してくれて……。

 それに見合う勝利を勝ち取れたと。母さんの笑顔を見ていたらそう思えるよ。






「ところで、あの人、どうして出て行っちゃったんだろ」


「……そんなことが気になる?」


「あっいや。私のどこが駄目だったのかな~……って。二人にまで出ていかれたら、困っちゃうでしょ?」


「ああ、そういうことか。それなら気にしなくていいよ」






「あの日に、あの男が、自分の判断で、この家から消えただけさ」


 そう。

 あの日、家を出て少し離れたあの場所で……。






 *






「がぁっ、ぐっ、はぁ、はぁっ! な、なんで……だ!?」


「うわぁ、苦しそう。心臓が止まるんだったっけ」


「こ、このガキ、どうして、俺の能力が、効かねぇんだ! なんで、俺が倒れてる!」


「ねぇ家にいたおじさん。今日のご飯は美味しかった? 僕が作ったんだけど」


「は、はぁっ……!? な、なんだ、何だって!? 何を言った!?」


「あれ……聞こえてない?」






「アラタ。確認するだけだっただろう。危ないからそこまで近づくな」


「あっ兄さん」


「だ、誰だ!? 誰か、近くにいやがるのか!?」






 しかし、この様子を見るに成功したのか。

 胸を押さえてうずくまり、首を振り返る余裕すらない状態。一応変装してきたが、耳すら合間にしか聞こえていないようならここまで警戒する必要も無かったかもしれないな。

 まあ、僕自体にはまだ能力が接続しているだろうし、完全な確認ができるまではコイツに認識されない方がいいんだろうが……それにしてもアラタは近づきすぎだ。


 いくら、この男の状況を確認できるのが──能力をかけられていないアラタだけとはいえ。


「作戦成功だね、兄さん」


「ただでさえアラタが危険な作戦だというのに。そうまでして煽りたかったのか?」


「ごめん……でも、兄さんだけ危ない真似をするのも違うでしょ?」


「そうだな。僕達はあくまで、母さんのため共に戦う『同志』なのだし」


 しかし、昨日は驚いた。

 アラタに僕達が掴んできた情報である「一連の出来事」「母さんの事情」「あの男の能力」についての情報を共有した途端に。


 この家ではありえない──栄養過多の献立を見せてきたんだから。


 あの日、母さんだけ別メニューで良かった。

 もし、母さんも同じメニューを摂取していたら……。


「がっ、ぐっ……かはっ」


 目の前で死んだ魚のように跳ねる、この男と同じ状況になっていただろう。


 CKD患者は非常に大量のカリウムを摂取してしまうと高カリウム血症を引き起こしてしまい、食後数十分……遅くても数時間後には血中カリウムが急上昇してしまう。

 あの献立にはカリウムがかなり含まれていたし、この男は加えて酒も飲んでやや脱水していた。腎臓に不調があれば、これらのカリウムを排出することができなくなり、心臓が停止してしまう。

 そうでなかったとしても、あの食事だ。酒で腎機能が悪化し、カリウム・酸・リンが急上昇してAKI(急性腎障害)が発生すれば電解質異常でどちらにせよ数時間から1日のうちに心臓が停止する。


 このことをどうしてアラタが知っていたのか……。


 ──「腎臓って血液を濾過するって書いてあるけど、何を濾過してるのかな」


 ああいや、教えたのは僕だ。

 この男が来る直前に、アラタに腎臓について色々教えていたんだった。

 おかげでこの作戦を提案することができたのか。

 へえ、あの時きちんと質問して来たアラタを褒めてやりたいよ。


「それにしても、この人も間抜けだよね」


「ん?」


「だってさ」






「布団を膨らませて、枕元にカツラを置くだけで騙されてくれるんだから」


「古典的な方法だな。対策していたアラタが鋭すぎるだけかもしれないが」






 辻セイラからの情報によれば、この男は「密室で二人きり」の状況での能力発動にこだわっている。そして、この男の能力には「自分一人しか部屋にいないと自分自身にかかってしまう」特性が存在するらしい。


 そして、能力で引き出せる「光球」とやらは、本当に光る球でしかない。

 名札がついている訳でもないし、本人もどれが誰のものか明確に把握している訳ではない。もし把握ができるなら二人きりにこだわらなくても、部屋にいる全員に能力をかけて、お目当ての人間の光球を把握してから他を全部解除すればいいだけだ。

 それができないということは、「いつ引き抜いたか」で、あの男はどの光球が誰のものに対応しているか判断していることになる。あの男の脳内では「アラタの部屋で抜き取った光球」は「アラタの魂」という認識だ。


 なんでも、この男が家にやって来たあの日。異物感でアラタは眠れなかったらしいが。

 そんな中、この男が僕の寝室に入っていくのを見て警戒し、ベッドにカツラを仕込んで部屋を抜け、何をするのか観察していたのだとか。

 コイツが能力発動のために「密室」を作ろうとして扉を閉めたから、アラタには何が起こっていたかは分からなかったらしいが……顔つきすら2ヶ月経ってようやく言及する程度には息子に興味のないこの男は。


 ベッドの中に誰もいないことに気づかず。

 膨らんだ布団と髪の毛だけを見て──密室で能力を発動した。


 この男がアラタの魂だと思って負荷をかけたのは──自分自身の腎臓だ。


「情報を渡しただけでこの作戦を思いつくのも凄いぞ。流石は僕の弟」


「根本的な解決をするにはただ追い出すだけじゃ駄目だから。でしょ?」


「そうだな」


 アラタに能力がかかっていなくて、かつ母さんとの繋がりを切ったとしても……僕自身や他の女性達にも能力はかけられている。その気になればこの男はいつでも遠隔で人を殺せるんだ。「見逃してやる」と言って見逃して良い訳がない。

 そもそも、また帰って来られても面倒だ。起こりうる問題を全て解決すべきなのは同意する。


 だからこそ「あえて弟の名前を外して母にしか言及せず、母だけは手を出させないこと」を確約し。外にいるアラタを見て、「能力をかければ変化がすぐ分かる状況」をお膳立てさせ。

 そのまま自身の能力で自滅して心停止する瞬間を見届ける必要があった。


 こちらにとっても都合がいい。

 1. この男の末路に疑問を抱かれないか。否だ。

 不摂生な生活を繰り返し、事前に「毒を盛られた」訳でもない、ただ普通の食事をしただけの人間が、普通の病気で死亡してしまった。この男の関係者には同じ病気の人間が多く、この男自身もCKDだったと判断されても「そういう人と暮らしていたから」と思われるだけだろう。


 2. この男の失踪が不審視されないか。否だ。

 頻繁に家を出入りし、外泊も少なくなく、気紛れで蒸発する……そんな男が急に家からいなくなっても何もおかしなことではない。家族も、事情を知らない外部の人間でさえも「また蒸発した」としか思わないだろう。前例があるんだから、まず思い至るのはそれだ。


 3. 能力による捜査が行われないか。否だ。

 だってこの男は自身の能力を他言していない。『腎機能を操作する能力』が存在することを知っているのは、僕と、僕の協力者達と、この男だけ。自分の犯行を隠すための隠蔽が原因で、この男は自身が能力によって死亡した事実を証明できない。


 なら、この男には、自分の能力で死んでもらう方が都合がいい。

 僕達は何も手を下していない。言われるがままに食事を提供しただけだ。

 勘の鋭いアラタによって、既に準備は完了していた。

 後は屋外に出てもらえれば、もう新たに能力をかけることはできない。


 能力のかかっていないアラタが餌として誘き出す役割を果たすことで……この男は愚かにも勝ちを確信し、まんまと自滅してくれる。

 死亡すれば離婚も成立して一石二鳥だ。母さんにも連絡が行くだろうが、その時はその時で上手く対応しよう。母さん自身、既にあの男への愛着は存在しないし、悲しむことも無いはずだ。


「はっ……はっ……はっ……!」


 その結果として、この男はここで死ぬが、どうでもいい。

 法を乗り越える覚悟をするとは、そういうことだ。

 さっき、「新たにかけられない」と「アラタにかけられない」がかかってたな。

 ふふっ。


「兄さん、僕は役に立てたかな」


「MVPだ。母さんの息子だけある」


「褒めてくれる?」


「褒め足りない。夏休みが終わるまで覚悟しておくことだ」


「ふふっ、もう、兄さんったら」


 もしこちらの想定が間違っていたら? 

 能力がアラタにもかかっていたら? 

 もしこの男がもっと賢ければ? 

 心停止が少し遅ければ? 


 色々不安はあった。

 だが、アラタは危険を承知で作戦を提案し、母さんを救うために僕は了承した。


 全ては、この男を完全に排除するまでに。






 *






「兄さん、お母さん、おかえり」


「ただいま~。聞いてアラタ~、なんか分かんないだけどちょっと治ったってー!」


「わぁ! 不思議だね、医療って奥が深いや」


「あっ……私、知らないうちに息子の勉強量を増やしてしまった……?」


 この日常が見られるのも……4ヶ月ぶりか? 

 あの男が来てからは雰囲気ずっと最悪、母さんも自分の病気が気がかりで明るく振舞えなかっただろうし、こうしてまた三人で和気藹々と雑談を繰り広げられると、日常が帰って来たと再認識できる。


「じゃ、今日は私がご飯作るから」


「えっ、大丈夫なの?」


「大丈夫大丈夫。元気になったのにご飯作らなきゃ私この家で一番ナマケモノになっちゃうし」


「そうかなぁ」


「そうそう。じゃ、いざ久しぶりのキッチンへ~」


 それも、アラタのおかげだ。

 母さんが「息子を守らないと」と思い込んでいたのと同じように、僕も心のどこかで「同志ではあるが、いざとなれば僕がアラタを守らないといけない」と思い込んでいる節があった。


 だが、アラタは既に、僕達の望みを叶えられるだけの作戦を考える知能も、犯罪行為ですら母のためなら乗り越えられるという覚悟も、痕跡すら残さず後の日常に影響が出さないように立ち回る方法も、自分で辿り着けるようになっていたんだ。

 体は一回り小さいが、アラタも将来的には僕と同じような人間に育っていくんだろう。親心を感じるというか、血の繋がりを感じるというか、弟の成長に感動しているというか。


 まあ、犯罪行為が常に視野に入るようでは駄目だが。

 そう考えると、アラタを辻セイラと引き合わせてはいけないな。


「アラタ」


「なに?」


「ありがとう。アラタのおかげで、永久的にあの男を追い出すことができた」


「……そんな」


 ──ぎゅっ……


「おっと」


「いいんだよ、兄さん。僕がこうするのは当然のことだから」


「アラタ……」


「だって、分かるでしょ?」


 ……そうだな。

 分かるぞ。


 母さんは僕とアラタのことを愛している。

 僕も母さんとアラタのことを愛している。

 そして、アラタも同じく母さんと僕を愛している。

 この関係性に混ざり物は存在しない。






「瀬尾家に四人目は必要ない。だよね、兄さん」


「そうだ。大きくなったな、アラタ」

これで10周目終わりです。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

ループ外の人間がループを利用して問題解決する、という展開を書いてみたかったんです。

瀬尾家の男達の闇が見えてしまった気がしますが……ハッピーエンドなのでヨシ!


可能であれば、感想や意見や評価やリアクションを頂けると嬉しいです。大喜びします。

それでは、次話以降も宜しくお願いします(´・ω・`)

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