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クラスメイトは『大切な人を救うために死に戻る能力者』  作者: 破れ綴じ
22

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[22:05] 今日学んだこと

「はい、終礼はここまで。気をつけて帰るように」


 昨日、九条ノドカが「辻セイラにも聞き取りを行う」と言った翌日。

 リスクがあることを承知で「警告しない方が危険だ」と辻セイラに情報共有しようとしたが……結局、いくら連絡しても既読がつかず。いざ学校に来てみても、常に九条ノドカが近くにいたから話しかけることも呼び出すこともできず。仕方なく九条ノドカをずっと見張っていた訳だが……。


 ……一度も動かなかったな、あの女。


 ──「九条さん! 学校は慣れてきた?」


 ──「はい。瀬尾さんにサポートして頂いてますから」


 ──「あー。でも委員長ルールにめちゃめちゃ厳しいでしょ」


 ──「いえ、私もそうですから。馬が合うんだと思います」


 どうした、クラスメイトと呑気に喋ってていいのか九条ノドカ。

 君は今日、辻セイラに「僕が未来予知能力者じゃないかの調査のための聞き取り」をしにいくんじゃないのか。このままでは木曜日が終わってしまうぞ。


 いや、簡単にできないのは分かる。

 WPPOの方針を思えば強引な聞き取りは不可能だし、周囲に人がいるようなところで調査を実行すれば後の交友関係に大きく影響が及んでしまう。そういった行為は望ましくない。

 だからこうして、辻セイラが一人になる瞬間を狙っているんだろうが……。


 ……それにしたって動きが遅くないか? 

 僕は昨日の夜から今に至るまで、いつ接触があるのかとずっとずっと気が気じゃないんだぞ。

 最低一週間なんだから、WPPOだって迅速に済ませたいはずじゃないのか。強引な手を使わないとはいえ、かかるコストだってバカにならないはずだ。なのに、彼女の様子はあくまで学生生活と並行して、無理のない範囲で済ませているように見える。


 ──「では、私はそろそろ」


 ──「うん。ばいばーい」


 ──「はい。また明日」


 ……よ、よし! 

 ようやく移動したか。辻セイラもそろそろ出るぞ、本気で聞き取りをする気なら、彼女にとってのチャンスは今日の下校時間しかないはず! 


 とにかく、今日の僕の任務は二人を追跡し、現場を見守ることだ。

 表向きの名目は「転校生の九条ノドカが学内一の不良に一対一で話しかけに行くから不安になって」。世話を頼まれている兼辻セイラと個人的にも繋がりのある僕が、転校生と不良とのトラブルが発生しないよう見守り、いざという時は駆けつけてお互いの仲を取り持てるように……学級委員長としてはいかにもな理由だ。


 そして、本当の目的は「九条ノドカが辻セイラの『死に戻り』に勘付くのを防ぐため」。


 妹のアレルギーを早期発見した? 暴漢から正当防衛で救出した? 二人でチェーンメールまがいの悪戯をした? そんなことはどうせ調べがついているんだろう。「なんか仲がいいんだな」ぐらいに認識してくれればいい。

 ただ、「僕が辻セイラの協力者で」「真に能力者なのは辻セイラであり」「その能力が世界全域に影響する『死に戻り』」……このことが知られてしまうのはマズい。そして事前情報が無いまま九条ノドカと相対してしまう辻セイラが、ボロを出す可能性が全くないとは……言い切れない。

 だから僕は、直接現場に赴き、必要があれば偶然を装って近づいて、辻セイラのフォローをする必要がある。九条ノドカにバレたときは表向きの名目を持ち出して言い訳すればいい。実際、「九条ノドカが心配」なことは嘘じゃないんだから。


 ──「……」


 ──「……」


 二人の歩く速度は一定……いや、追いかける側の九条ノドカの方が少し速いか。

 このままのペースでいけば、あと二三回曲がり角を曲がったところで追いつくだろう。丁度あの辺りは人影も少なかった。なるほど、秘密の会話をするにはもってこいの場所だ。初めからそれを狙って歩いているのか。


 本当に面倒な役回りだ。

 九条ノドカに「君は間違っている」と言う訳にもいかないし、そもそも彼女は決められた規則に則って動いているだけ。一方辻セイラだって家族を守るために色々しているだけ。両者の理念が衝突することは避けられないが、どちらが悪い訳でもない。そして僕はその両方に巻き込まれている。

 願わくは辻セイラが初めから彼女を突っぱねるなり、嫌な空気を感じ取って隠しきるなりしてくれればいいんだが。連絡がつかずじまいだから口裏合わせできていないのが今もずっと不安だ。


 おかげで、今もこうして二人のストーキングをするハメになってしまっている訳だし。

 ……これ大丈夫だよな。多分、合法の範疇だよな。


 ええっと確か……。

 1. ストーカー規制法。

 規制対象の「つきまとい等」は、恋愛感情その他の好意の感情か、それが満たされなかったことへの怨恨を目的とするものに限られる……確かそんな内容だったはずだ。

 僕はどちらでもない……はず。よし、目的要件で外れる。


 2. 軽犯罪法1条28号。

 他人の進路に立ち塞がって、若しくはつきまとって不安を覚えさせた者──立ち塞がってはいないな。この距離とこの人通りなら、「不安を覚えさせるような仕方」にも当たらない。多分。

 ……いや、「多分」はやめよう。態様と執拗性で外れる、でいい。


 3. 迷惑防止条例。

 悪意の目的での、反復のつきまとい。僕は目的をもって害そうとしている訳ではない。両者の望まないトラブルが不安で、見ておかないといてもたってもいられないから念のためについてきているだけだ。

 初回で、悪意なし。外れる。


 よし。

 今回は通る。


 だが、繰り返せば話は別だぞ、これは。

 回数を重ねればそれ自体が前兆事案の顔になるし、気づかれて不安を与えた時点で、「不安を覚えさせるような仕方」かどうかの評価は相手の側からひっくり返る。条文の内側に立てているかどうかを最後に決めるのは、僕の自己申告じゃなくて相手と裁判所だ。

 ……常用はできないな、この手段。今日限りにしよう。


 ──「……で、何さっきから着いてきてんの」


 ──「こんにちは、辻セイラさん。バレてましたか」


 ……っ! 

 接触した! 


 ──「バレてるよ」


 ──「ごめんなさい。でも私、貴女と是非話したいことがあって……」


 よ、よし。近くに隠れよう。

 問題なく終わるならそれが一番だが、もし割り込む必要があるなら僕が偶然通りかかった委員長を演じなくてはいけない。そのためには、「会話が聞こえる」かつ「初めから近くにいるとは分からない」位置にいなくては。


 あの電柱は……細すぎるな。民家の門もあるが、入った時点で不法侵入になってしまう。

 残るのは……あっ自販機! あれだ。

 あれと後ろの塀の隙間、丁度影になっているし……あそこ一箇所以外に現場を目視できそうな場所はない。幅は人一人分あるかどうかぐらいだし、一度そこに隠れればほとんど動けなくなってしまうが……一箇所しかないなら選択の余地もない。


 こっそり近づいて、音を立てずに身を滑り込ませて……。

 ここまで来たらもう後戻りできないぞ。「やっぱり隠れるのは止めよう」と思っても、次目立つ動きをした瞬間にどっちにしろバレる。もうあの隙間に入り込む以外に道はない。


「……っ!」


 よし! 入り込めた! 

 案の定狭いし暗い……というか思ってたよりずっと狭いが、それでもなんとか……。


「--ひゃっ」


 ……ん、なんだこれ? 何かにぶつかったような……だが柔らかいぞ。

 というかなんだ今の音。僕が立てた物音か? それにしては無機質でないような。

 あれ、おかしいな。僕は自販機と塀の隙間に潜り込んだんだよな。柔らかくて人間的な音のするものなんてある訳が……。






「……マ、マコっ……ち? な、なんで……ここに? ていうか、手……」






 えっ。


 あっ。






 *






 ──「話ってなに。どうせすぐ終わらないんでしょ」


 ──「……もしかしてお急ぎでしたか?」


 ──「暇に見える?」






「(な、なんで君がここにいるんだ!)」


「(えっちょっ……!? いやいや、こっちの台詞だって!)」


 何故、どうして桐島ミオがここに!? 暗さのせいで全然分からなかったぞ!? 

 どういうつもりだ、どうしてこんな狭くて暗くて薄汚れた意味不明な場所に先客がいて、よりにもよってそれが君なんだ。君がお洒落に気を遣うことは知っているんだぞ、正反対だろうここ。


 分からない。分からないが、と、とにかく出よう。

 狭いこの場所で人二人は無理がある。無理に動こうとすれば音が立ってしまうし……第一に想い人がいる女性に対して、他の男性とこんな体勢になってしまうのはあまりにもよろしくない。さっきだって変な箇所を触ってしまった気がする。

 好きでもない相手とこんな密着して、桐島ミオもきっと気持ちわる──


「(ちょっ待っ……って! 出たらバレる!)」


「(うぉっと!?)」


「(きゃっあっうわちか近い!)」


「(君が引っ張ったんだろう!)」


 余計凄い体勢になってしまったじゃないか! 

 君、一人しか入れないような場所に無理に二人入って、そのまま倒れ込んだらどうなるか想像できなかったのか! 日高アサヒに見られたら言い訳できないぞ! 


 ……いや、しかし、確かに君の言う通りだ。

 この隙間の正面では、声が届く距離で九条ノドカと辻セイラが向かい合っている真っ最中。今僕が転がり出たら、「不良と転校生の密談に自販機の隙間から現れる学級委員長」の完成だ。どこからどう見ても不審者で、表向きの名目もへったくれもない。タイミングも最悪だし、偶然なんて装いようがない。出られない。

 出られないのは分かった。


 だが、この距離はどうにかならないのか。


「(~~~ッ!!)」


「(その……怒っているのは分かるが睨まないでくれ)」


「(に、睨んでないって!)」


 肩が完全に触れ合っている——というより、押し付け合う形でめり込んでいるぞ。このままじゃ身じろぎ一つがそのまま相手に伝わるんじゃないか。人生でここまで人に接近することなんかめったにない。

 それにさっきから桐島ミオの髪が頬にかかって、くすぐったい。顔を逸らそうにも、逸らした先は鼻先五センチで塀。あっちも懸命に逸らしているが、あっちの先は自販機。行き止まり同士だ、どこにも逃げ場がない。

 

 せめて音だけは立てないようにしないと。息の音すら外に漏れそうだ。


「(えっ、ちょ、どこに動く気!?)」


「(こうすれば君の肩が楽に……ならないな。むしろ狭くなったぞ)」


「(待っ、それ以上は……て、てゆーか! なんで、マコっちがここにいんの!?)」


「(それはこっちの台詞なんだが……いや、先に聞かせてくれ。君こそ、なんでこんな所に挟まってるんだ)」


 君の声も震え気味だぞ。相当苦しいんじゃないのか。だから動こうとしたんだが。

 暗さでよく見えないが耳だって赤い気がするし……やっぱり怒っているんじゃないのか。それとも、この狭さで単純に苦しいのか? 

 どっちにしても原因の半分以上は、後から入ってきた僕にあるんだよな。ここに桐島ミオがいると分かっていれば入ってこなかったのに……こんな場所に彼女が隠れてるなんて想像できる訳ないじゃないか。


「(……セイラの様子が、おかしいから)」


「(おかしい?)」


「(セイラ、今週ずっとヘンで。ぼーっとしてるっていうか、逆に『やっぱ燃やすか……』とかぶつぶつ言ってたり。なんかあんま連絡くれないし。既読もつくの遅いし)」


 ん、んん? 

 既読が遅い? 辻セイラが、桐島ミオに? 


 僕目線でも様子が変だとは思っていたが……親友の桐島ミオにですらそうなのか? 

 やはり結構深刻な問題じゃないのか、それ。


「(マコっちはどうして……あっあの転校生の? あの子を追っかけてたカンジ?)」


「(噂になっているのか。まあ、そんなところだ)」


「(えっと、じゃあ…………ストーカー的、な?)」


「(僕はあの二人に特別な感情を抱いていないからその定義は当てはまらないぞ)」


「(えっ……)」


 辻セイラが、桐島ミオとすら連絡を絶っている……。


 忙しいだけなら既読ぐらいはつくよな。読む暇もないほど何かに時間を取られているのか? それとも、読んだと知られたくない事情がある……。

 つまり、見られたくない、知られたくない何かがあるということなのか。しかし、僕は一切役に立たなくて、犯罪とは一切関係が無くて、順調に解決に進んでいて……しかも桐島ミオですら邪魔になるだと。


 ……本当に何だ? 

 辻セイラは今何の問題に直面しているんだ? 


「(……あっ、そ、そうなん……だ。ふーん……)」


「(何を納得しているんだ。恋愛感情、それに準ずる好意、恨みによるものでなければ付きまといとは定義されないぞ)」


「(そーなん、だ? マコっちはあの二人が好きで追っかけてたんじゃないってコト?)」


「(そうだぞ。恨みなら無くもないが)」


 また一つ賢くなれたな。

 まさかこんな場所で君と急遽勉強会をすることになるとは思わなかったが。あまりにも環境が不適すぎる。さっきから桐島ミオの呼吸が浅い気がするし。

 ……もしかして、埃だろうか。こんな場所だ、体に良い訳がない。鼻を押さえてやった方がいいか? いや、それこそ余計に距離が近づくな。


 しかし、辻セイラは他の場所でもあの様子なのか……。

 僕はループが発生している可能性を考えていたが、他の場所でも同じ様子ならその可能性はさらに低くなるかもしれない。あの女は周囲に自分の疲れやストレスを見せないように気を遣っているし、疲弊したとしてもその不満や苦労をぶつけてくるのは基本僕にだけだ。

 桐島ミオにそこまで疲弊した様子を見せているなら本当にループじゃないのかもしれない。


 となると、やはり個人的な悩みか。

 もしかして失恋したとか……? こんな場所で考える内容でもな……。


 ……待て。

 さっきから声がしないぞ。

 今、現場はどうなってる? 

 あの二人は、どこに──






「……お二人はそこで何を話されているんですか?」






「うおおおっ!? 九条ノドカ!?」


「わわわあっ!? 転校生の子!?」


「きゃっ!? え、なっ、なに!?」






 *






「ウチは、セイラの友達で。様子が心配だったから追いかけてたの」


「なるほど。そして、瀬尾さんは」


「君が心配だったから、つけていたんだ。すまない」


「まあ……別に大丈夫とお伝えしたのに」


 うん。

 まあ、心配だったな。

 君の身が心配というよりかは、君が真相にどこまで辿り着くか心配という意味で。

 嘘は言っていないな。


 だから、君の身を案じての言葉ではないんだこれは。

 大丈夫と伝えられても別に大丈夫ではないんだ。すまない。


「それで、転校生ちゃんは、セイラに何の用だったワケ」


「ああ……少し、『お話』がしたかっただけで。クラスの中で唯一ご挨拶できていませんでしたから……ですよね、瀬尾さん?」


「まあ、そうか。そうだな」


 そうだな。君は桐島ミオの前で「実は私はWPPO職員で瀬尾マコトのことを能力者ではないかと疑っていて、そのために辻セイラにそれとなく話を聞こうと思っていた」なんて言えないからな。そう言うしかないのか。

 僕がそういう事情をバラさない性格なのを知っているから口裏合わせもせずこんな提案してるんだろうが、ちょっと不用心じゃないか。WPPOってもうちょっと慎重に動くよう指示出してないのか? 


「で? 結局、話できたん?」


「えっ。追いかけていたのでは」


「ドキドキしてそれどころじゃ……ってウチのことはいいでしょ!」


 いや、それについては僕も気になるぞ。


 九条ノドカからすればこの聞き取りは僕が能力者かどうか調べるための調査なんだ。僕が正直に答えていたとしても、周囲に能力者がいるという可能性もある。彼女からすれば周囲への聞き取りには大きな意味がある。

 しかし、そこで辻セイラの真実に気付かれてしまっては困るんだ。僕達が気づいた瞬間にもう会話は終わっていたが、君がそこで何か少しでも会話を成功させていたのなら、僕は困ってしまう。


「それについてなんですが……」


 ……ご、ごくり。






「その、まるで相手にされず。何の会話もできずじまいで……」


 ──ヨシッ! 


 よし! よしっ! 






「凄く強い口調であしらわれてしまって。もしかして私、嫌われているのでは……」


「セイラ誰にでもあーだから気にしなくていーよ」


「えっ誰にでもあの態度……?」


 ああ素晴らしい。良かった、最悪の事態は免れた訳だ。少し会話していくつか情報を奪われたとかならまだしも、ほぼ初手で会話を拒否しているとは。だから全然声が聞こえなかったんだ。

 そうだよな。彼女が排他的な態度は筋金入りだ。急にクラスメイトから「話をしたい」なんて言われてもどうせ「時間の無駄」とか言ってすぐ突っぱねるだろう。相手の好意なんて気にもしないからな。


 でもそのおかげで助かった。

 流石だ辻セイラ。君のことを信じていた。

 今回の接触を防げたんだ。今度こそ機を見て口裏合わせを済ませれば次回以降に接触があっても、問題なく対応できるようになる。他者に対して踏み込むことを許さないその性格は僕を怒らせるだけでなく、この聞き取りを拒否させ、今後のリスクを低減させるまでに至ったんだ。


 いつものあの態度が役に立つなんて。

 いつもの、あの態度が……。


 なんだか彼女の態度を思い出したら腹が立ってきたな。


「その、私……仕事柄、強い言葉を向けられることもあったんですが。だけど、まさか一般の方からあんな風に言われるなんて……」


「ん? 仕事柄? 転校生じゃん?」


「あっ……いえ。父の仕事の関係で、そういう場に立ち会うことがあって」


 おっと危ないぞ君。

 落ち込みすぎて口が滑りかけているじゃないか。桐島ミオの前だぞ、しっかりしてくれ。


「ですが大丈夫です。一度ではめげませんから」


 ん? 


「あっそーなん? 珍しいね、セイラ相手にめげないなんて」


「はい。今日は駄目でしたが、明日また転校する訳じゃありません。少しずつ時間をかけて、いつか仲良くなれれば『お話』できるかと。ね、瀬尾さん?」


 ん? 


「……今マコっちに聞く必要あった? なにその『ね?』って。なに?」


 ……ああ、そうか。そういうことか。

 初日に聞かされた時は、ただ驚いただけだった。最低でも一週間、状況によっては二年以上。僕がずっと否定し続けるのに、そんなに付き合うつもりなのかと。


 だが今のは、そういう話じゃないんだな。別にWPPOは急ぐべきと考えていないんだ。

 呼び出さず、家にも来ず、学籍まで用意して近くに座る。日常を壊さない原則というのは、要するにそういうことだ。相手の生活の中に入って、そこで待てる。今日駄目なら明日でいい。明日が駄目なら来週でいい。学生が任務と学生生活を同時並行してもいい。それが二年ほど続こうが構わない。

 解決までに時間をかけたくないとか、コストが惜しいとかそういうことじゃなくて。規約を侵さないようにしつつ、完全に調査が解決するまではいくらでも力を注いでいいという方針なんだ。


 だからこそ、あの規定なのか。

 だからこそ、転校生なんだな。


「……長い付き合いになってしまいそうだな、九条ノドカ」


「はい。よろしくお願いします、瀬尾さん。ふふふ」


 ……ふふふじゃないんだよ。






「……なんかいい雰囲気じゃない? ついさっきウチ、暗闇で押し倒されてたんだけど」

感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)

ブックマーク・評価・リアクション等も、可能であればぜひお願いします。大喜びしますので。

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