70話 祭の苦悩
時刻は2時、さきほど横浜にて起きた四季・蘭方vs槙島の事後処理のため祭はまだ本部にある、自分の個室にいた。
「ああ、最悪だよどうしよう」
槙島のことを信頼していたといえば嘘になるが、まさか裏切るとは思っていなかった祭は今後の対策を考えるのに苦悩していた。
予定していた、柴崎、仙道、神宮寺、槙島の4人での埼玉ダンジョンへの派遣は槙島の代役に雛菊を立てるとして、問題なのは槙島が派遣メンバーを知っていること。
おそらく、何らかの対策や策を講じてくるのは間違いない。
そんな事を祭は考えていると、気がつけばこんな時間になっていた。
「あー、いい案が全然浮かばない、一回家に帰るか」
『ガチャ』
祭が帰ろうとしたその時、自室の扉が開いた。
「……どうも」
「し、四季ちゃん」
部屋に入って来たのは横浜で一仕事終えた四季だった。
「ちょっ、織姫勝手に入んなって」
そしてもう1人、蘭方も来た。
「お、お前ら、どうして来たんだ?」
祭は帰ろうと思っていた矢先、2人が来てしまってかなり動揺していた。
「い、いやぁ俺はやめとけって言ったんですけど、織姫のやつが……」
「うっさい御厨、至急、祭さんにお伺いしたことがあって」
四季は何やら慌てた様子でそう話す。
"帰りたい"心の中の祭が言っているが、その感情を押し殺して、祭は四季に向き合った。
「おお、どうしたんだ四季ちゃん」
「今回の件ですが、槙島を私に追わせてもらえません?」
「え?」
真剣な眼差しで四季は祭にそう頼んだ。
「お、おい織姫、もうよせって」
「うるさい御厨……私は今日槙島に負けました、でも次は絶対に勝てます、だからーー」
「待って落ち着きなさい四季ちゃん、いいかい槙島はそんな簡単な相手ではないんだ、相性とかもあるんだし」
祭はそう言って四季を静止させた。
祭は四季が槙島より弱いとは思ってはいない。
ただ槙島はおそらく今の上位攻略者についてかなり調べ上げている。
槙島の持つそのアドバンテージを覆すには、蘭方や神宮寺のような未知数の可能性を持つもの以外難しい。
それか祭のように切り札を隠している者、それなら槙島の虚をつき倒せる可能性がある。
そのどちらもない四季は対槙島において、かなり不利なのだ。
「で、でも私……」
「織姫……聞いてほしいあいつはヤベェ精神攻撃とかも持ってて、だからお前とは相性が悪いと思うんだ俺」
「……御厨は黙ってて」
蘭方は優しく四季を諭そうしたが、一蹴されてしまった。
「わかったよそこまで言うなら、今度の埼玉遠征は四季ちゃんに参加してもらうよ」
「あ、ありがとうございます!」
「あ、ちょっと祭さん!」
四季の勢いに負けた祭は、埼玉遠征の槙島の代役を雛菊ではなく四季にする事を決定した。
「ごめんな蘭方、でもここまでやる気出してる四季ちゃん見るの初めてでさ、まぁ埼玉遠征には柴崎も神宮寺もいるんだし、大丈夫だよ」
「まぁ、柴崎さんがいるなら安心か」
そう言って蘭方も納得した。
「じゃあ四季ちゃん、もう気分は落ち着いただろうから、帰りなさい」
「……はい、夜分遅くに失礼しました」
そうして四季はそのままドアを開けて帰って行った。
「織姫のやつ、俺をおいて行きやがった……じゃあ祭さん、俺もこれで」
「いや蘭方、お前はちょっと待て話したいことがある」
「へ?」
四季の後に続いて帰ろうとする蘭方を祭は呼び止めた。
「札幌に動きがあった、魔族や魔王絡みだ、聞きたいだろ蘭方」
「……なるほど、それは聞きたいっすね」
そうして蘭方はそのまま祭の部屋に留まった。




