66話 道化師
四季達から100メートルほど離れたところで、白龍状態の蘭方がダンジョンモンスター狂道化師と戦っていた。
『固有スキル発動、白炎砲!』
『ボウッ』
蘭方は空から地上にいる狂道化師へ白炎砲を放った。
放たれた白炎は、そのまま狂道化師へと向かっていく。
『おいおいおいおい、品がねぇ火玉だなぁ、食べてやるよそんなもん……んがっ!』
そう言うと、狂道化師の口がゾウを丸呑みできるほどに巨大化した。
『ボシュン』
そうしてそのまま狂道化師は白炎砲を丸呑みにした。
『す、すげぇな』
蘭方はただただ驚いていた。
『ゴワァ、じ、じぬ』
白炎砲を丸呑みにした狂道化師はそう言って苦しみだした。
『だ、だずげで』
『ドサッ』
そうして狂道化師は力着き地面に伏せてしまった。
『なんかわかんねぇけど、勝ったわ』
蘭方はそう言って四季の元へ向かった。
『おいおいおいおい、これで終わりなわけ……ねぇだろうがよぉ、固有スキル発動、思い出の再会』
狂道化師は起き上がり、自身の固有スキルを発動させた。
固有スキル思い出の再会、このスキルの言う思い出をとは、対象者の一番会いたくない人の召喚を行い対象者のトラウマを呼び起こす精神攻撃である。
「御厨」
「……おい、なんでだよ、死んだはずだ」
召喚されたのは蘭方の一番会いたくない人物、あの日ダンジョンで置き去りにした旧友、長嶋聡だった。
故人である長嶋聡が現れた事に驚いた蘭方は気付かぬうちに白龍化を解き、人に戻っていた。
『いいね、いいねいいねぇ!その顔だよ蘭方!!』
「御厨、お前なんであの時、俺を、皆んなを置き去りにしたんだ?」
「……そういう技かよ、趣味悪りぃなお前」
蘭方は故人である聡の姿を見て、即座にこれが狂道化師のスキルであることを理解した。
『悪趣味って最高だよなぁぁぁ、蘭方ぉぉお』
「御厨、答えてくれ、あの時俺達を置き去りにした理由を」
長嶋聡は真面目な顔でそう蘭方に訊ねた。
約1年前、蘭方は他の友人達共にダンジョンに無断で侵入した。
侵入したダンジョンは、当時まだ未踏破だった新潟第6ダンジョン。
推定3階層の簡易ダンジョンかと思われていたが、実際は30階層以上ある中堅ダンジョンだった。
侵入した当初は誰もそれが中堅ダンジョンとは思わなかった、しかしそれは突然起きたのだ。
ダンジョントラップ階層転送。
とある床を踏むことで発動するそのトラップは、発動後周囲の人物を巻き込んで強制的にそのダンジョンの最下層へと転送する。
全てのダンジョンにおいて、最下層は最も難易度が高く設定されており、そのため最下層には高レベルモンスターが数多くいた。
高校生達はそんな所へ無防備に転送され、無惨にもそこにいたモンスター達の餌食となってしまい、蘭方はそこで友人8人ほどを失い他のメンバーとも散り散りになってしまう。
そうして蘭方はダンジョン内で20日間サバイバルを強いられることとなったのだが、その時の17日間、聡と共にいた。
「聡……おい変人ピエロ、良い技だと思うよそれ、でもな聡はこんな奴じゃない、こいつとはこいつが死ぬその瞬間もいたからよく知ってる、聡はこんな奴じゃない、もっと子供っぽいんだよ」
『何言ってんだ?こいつはお前の頭の中のイメージをを元に呼び出してるんだぞ、それがなんでお前の言う長嶋聡と乖離してるんだ』
「簡単な話だよ、俺の頭の中のこいつはすごい大人だったんだ、でもね死ぬ間際の聡はめっちゃ泣いた、それはもう子供みたいにね」
『なるほどな、つまり蘭方、テメェの一番会いたくない人物ってのは長嶋聡は長嶋聡でもダンジョンで死ぬ間際のこいつだったってことかよ』
「そうなるかな」
『お前って奴は面白いな、それは俺でも作れないな』
『シュゥゥ』
そう言って狂道化師は長嶋聖を消滅させた。
「いいのかよ、お前が作った聡が泣けばまだワンチャンあったんじゃないの?」
『いやいい、勘だがお前には精神攻撃は効かないと思う、おそらく聡ごと俺を消しとばすつもりだっんだろ?』
「バレてたかぁ」
『能力もバケモンだが、その精神もバケモンとはな蘭方、お前とは楽しめそうだよ』
「ははそりゃどうも、こっちも楽しめそうだよ」
そう言って蘭方はニコッと笑った。
蘭方にとって長嶋聡が一番会いたくない人物であることに間違いはない。
ただ蘭方にとって過去とは単なる昔の事でありトラウマではない、そのため蘭方を止めるには不十分である。
蘭方御厨を止めるには力で屈服させる以外方法は無いのだ。
しかし、精神攻撃が効かないのはおそらく蘭方くらいであり、この手の攻撃は祭にも神宮寺にも柴崎にも効く。
『少しシラケちまったな、テンション上げてくぜぇぇぇえ!!』
狂道化師はそう言って自身を盛り上げた。
「いいね、こっちも上げてくぜ、この前は使えなかったけど、新技を試すにはちょうどいいかもな」




