63話 会合
横浜のとある倉庫にて。
「お、首領、遅かったね」
「いやぁごめんね、ちょっと色々やることあってさ」
夜23時、大体の居酒屋や飲食店が閉まるこの時間、7人の男女が人気のない倉庫に集まっていた。
「よし全員集まってるね、それじゃあ始めようか」
鶏鳴狗盗は、毎回何かを盗む前に軽い打ち合わせを行う。
基本は全員参加だが、今回は屋敷がいない。
「あれ屋敷くんは?」
いつもはいるはずの屋敷の姿がなく、1人の男が槙島にそう訊ねた。
「彼は今、別の仕事で忙しくてね今回は不参加です」
「了解っす」
槙島がそう言うと男は特に言及することなく納得した。
元攻略者4人、元高校生1人、現攻略者1人、元殺し屋1人、現政府官僚1人。
これが現在の鶏鳴狗盗の面々の主な経歴。
鶏鳴狗盗には役割が決まっている。
実行役が3人、情報収集役が2人、回収役が1人、戦闘員が1人、司令塔が1人。
この中で例外なのは司令塔と戦闘員だけで、その他はローテンションしており、基本的に例外を除いて全員で各役割を回している。
「事前に伝えてるけど、今回狙うのはSSSレアダンジョンアイテム黄金卿の金鞭だ、今回の獲物は回収次第、ロシアに売り捌く予定だから、適合とかはしないように」
「ねね首領!ちょっといい?」
「うん大丈夫だよ、城戸ちゃんどうしたの?」
城戸麗奈、年齢は19歳。
蘭方の旧友で、現在戸籍上は故人扱いとなっている。
彼女もまた蘭方と同様にとある寄生型ダンジョンアイテムの適合者である。
今から1年ほど前、蘭方と彼女を合わせた高校生15名がダンジョン内で行方不目となる事件が起きた。
記録では生還者は蘭方のみとなっており、他の生還者はいない。
ちなみに蘭方はその事件で奇蹟の種の適合者となっており、その力でダンジョンから自力で脱出している。
しかしこの事件の生還者はもう1人いたのだ。
そうそれが城戸麗奈である。
だが彼女は生還すると同時に当時捜索隊として派遣されていた槙島により連れ去られ、洗脳を受け現在は狗盗の1人として活動している。
「今回はさ、何が報酬になるの?」
「今回は普通に金銭の分前と、あとは攻略者の持ち物かな?」
「おお!いいね、いいね!じゃあ今回も来るんだ攻略者!」
「うん来るよ、とびきり強い人達がね」
そう言ってニコッと槙島は城戸に笑顔を向けた。
鶏鳴狗盗のメンバーは、戦闘員役以外の入れ替わりは今まで一度もない。
何故なら戦闘員役は毎回槙島が洗脳した者が務めるためである、槙島の洗脳はかなり都合が良くできており、槙島の任意のタイミングで対象者を廃人にできてしまう、そして槙島の能力で廃人になった者は、3歳くらいまで幼児退行を起こしてしまい、会話をするのも困難となってしまう。
現在までに戦闘員は4人いたが、その全員が洗脳され壊れるまで使われた挙句、廃人にされ使い捨てられていた。
そうして城戸麗奈の役割は通算5人目の戦闘員である。
「やったー!楽しみ!今回も私、皆んなのためにめっちゃ頑張るね!」
「城戸さん、あんまり無茶しないでね」
城戸がそう言ってはしゃいでいると、短髪黒髪の細身の男が城戸にそう優しく伝えた。
「ありがとう、名取さん!いやいや戦争孤児だった私を育ててくれた皆んなには、恩があるし、それくらいするよ」
「そうかい、ありがとね」
そう言って名取は優しく微笑んだ。
名取宗太郎、元S2攻略者。
歳は柴崎よりも2歳上であり、槙島とは一番関係が古い。
「ううん、こちらこそですよ!」
そう言って城戸は頭を下げる。
城戸は洗脳により19歳までの記憶が改竄されており、自分は戦争孤児で名取に助けられてここにいると思っている。
しかし真実は、蘭方と同じ事件に巻き込まれダンジョンから自力で脱出したタイミングで槙島に誘拐されているのだ。
そして旧友である蘭方はこの事実をまだ知らない。




