62話 提案
とある火曜の午後、俺は組合本部(仮)へ来ていた。
祭さんに話があると言われてきたけど、なんか怖いな。
どうせ面倒事を頼まれるに決まってる。
ああ、行きたくない。
「やぁ来てくれてありがとう、早速で悪いが来週から埼玉行ってくれ」
「やっぱりな……」
組合本部(仮)の会議室に着くと祭さんが1人で待っており、開口一番に面倒な事を言ってきた。
「はは、その様子だと想像はついていたようだな」
「ええ、まぁ流石に……それで今回の人員は?単独ですか?」
「話が早いな、大丈夫単独ではないお前の他に仙道ちゃんと神宮寺、あと槙島もいるぞ」
「槙島……」
仙道さんはいいが、槙島か。
あいつは正直言ってまだまだ信用できないことが多い。
まぁでも多分、だからこそなんだろうけど。
おそらく祭さんはこの埼玉のダンジョン調査で槙島の立ち位置が、攻略者側なのか鶏鳴狗盗側なのかをはっきりさせたいんだと思う。
だからってそれを俺と仙道さんにやらせるのか……はぁ帰りたい。
あとサラッと神宮寺もいるって言ってたよな。
ああ憂鬱だ。
「気持ちはわかる、あいつは怪しいおそらくまだ隠している事もあるだろう、だからーー」
「俺と仙道さんに見定めてほしいってことですよね」
「いいね話が早い、流石は柴崎くん」
そう言ってニコッと祭さんは笑った。
俺もランキング5位になって仕事が増えるだろうなとは思っていたけど、まさかこんな内部調査みたいな仕事をする事になるとはね。
「で、國枝さんはどうします?一応、俺のパーティーメンバーですが」
「ああ、國枝ちゃんかあの子はお留守番だ、新しく完成する本部に行ってもらう」
「了解です、本部もうできるんですね」
「ああ、色々あって資金調達が上手くいってな」
新しい本部は、前あった場所にそのまま作り直す形で進められており、ダンジョンアイテムと現代技術を掛け合わせて建造を行なっているため、物凄い速さで建築が進んでいる。
そうかもうできるのか、早いな。
にしても色々あったってなんだ?
「色々ってなんです?」
「ああそれはね、とある国と取引をしたんだ、鶏鳴狗盗の身柄をそちらに引き渡す事と引き換えに金を貰ったんだ」
「え、そんなこと勝手に決めていいんですか?」
「構わんだろう」
「構わんって……もしかして全員捕まえる気ですか?」
「当然だろう」
「……」
鶏鳴狗盗の構成員は一説には100名ほどいるとも、5人だけとも言われており正確な人数は誰にもわかっていない。
それもそのはず、鶏鳴狗盗は活動開始から今まで1人たりとも捕まっていないからだ。
「なんだ?不満なのか」
「不満というか、無理ですよ、ドイツがどんだけやったとおもってるんですか?」
2年ほど前、ドイツは鶏鳴狗盗を掃討するために自国内の有力な攻略者や、海外の攻略者を集めた事がある。
結果は惨敗。
なんでも誤情報が振り撒かれていたらしく、それに気がつくのに時間がかかり逃げられたらしい。
なんとも情けない話だが、鶏鳴狗盗関係はこの手の話が多い。
もはや内部に裏切り者がいるとしか……。
ちょっと待てよ、あの時日本から派遣した攻略者って……。
「ああドイツか、確かにあの国は鶏鳴狗盗に好き放題やられているよな」
「……祭さん、2年前の事覚えてます?」
「ああ、2年前の鶏鳴狗盗の掃討作戦か、あれは確か鶏鳴狗盗の居場所が誤情報だらけで、最終的に南極とかにいるとか言われてたやつか」
「はい、あれってウチからも派遣してますよね」
「ああそういえばそうだったな……槙島か」
「はい、それだけじゃない、槙島はあの当時ことある事に海外遠征に行っています」
「おいおい、お前味方を疑うのか?」
「いや疑うというか……」
「あいつは仮にもS2攻略者だ、今まで攻略者として頑張ってきたんだし、信用してやろう」
「はぁ」
祭さんはこう言ってるけど、元首領で積極的に海外の活動にも行っている、この2点だけで充分怪しい。
まぁでも怪しいだけで確定した証拠があるわけじゃない。
……警戒だけはしておこう。




