52話 お見舞い
本部半壊騒動から2週間が経った。
組合役員の1人溝口忠信の死や、ランキング12位不動の戦死、ランキング2位の屋敷の行方不明、そしてランキング1位の東條の事実上の引退。
組合本部は主にこの4つの事案により混乱していた。
また職員も何名か行方不明となっており、その中には溝口唯も含まれている。
そんな混乱の中、神宮寺の入院している病院に向かう者が1人いた。
「ふぅ着いたな」
若織詩音、神宮寺とは幼馴染で5歳の頃からよく遊んでいた。
しかし2年前、インドで神宮寺が行方不明となって以来、神宮寺とは上手く接する事ができていない。
2年前、インドのダンジョンに当時S1攻略者でランキング20位の神宮寺が、1人で勝手に挑み勝手に行方不明となった事件があった。
その事件の2日前、神宮寺は若織にインドのダンジョンに挑む旨を話しており、その時若織も一緒に行くと伝えたが、彼は聞き入れることはなく、1人で行き半年間ほど行方不明となった。
その事件についての謝罪がまだない事に若織は怒っているのだ。
「……うーん、帰りたい……だがあの時のお礼を言いたいしな」
サタンにより連れ去られそうになっていた時、若織は神宮寺に助けられている。
その事について若織はまだ感謝を伝えていない。
正直、来たことを軽く後悔する事くらいには神宮寺に会いたくないが、ここまできたら覚悟を決めるしかない、若織は自分にそう言い聞かせて、病院へ入った。
『コンコン』
「入るぞ!」
神宮寺の病室は完全個室のVIP待遇。
一応神宮寺は、攻略者ランキング5位の高級取りなのでこれくらいは可能である。
「え、若織か」
「よ、よぉ」
部屋に入るとベッドで横になり足を組んでいる神宮寺がいた。
神宮寺は若織を見ると目を丸して驚いていた。
「どど、どうしたんだよ、急に」
「いや普通にお見舞いに来ただけだ!本当に」
そう言って若織はさっき買ったメロンを差し出した。
「お、おう、ありがと」
「ここに置いておくぞ」
そう言って若織は病室にある小さな机の上にメロンを置いた。
「容体はどうなんだ?」
「おう、もう完全回復済みだ、てか俺の場合不死鳥が召喚できればあとは勝手に治るからな」
神宮寺はそう言って右手をグーパーグーパーさせた。
不死鳥が神宮寺に関係なく出てこれることを神宮寺は知らない。
今回も消耗した体力や筋肉の損傷などは、ある程度不死鳥が回復させた状態で病院に搬送されている。
「そうか、やっぱり便利だな不死鳥の能力は……」
「おう」
そう若織は話すと自身の右腕に視線を落とした。
「私の場合はダメだった、傷は癒えたが右腕は完治せず障害が残るらしい、今も震えが止まらん」
若織は魔族レヴィアタンとの戦闘により右腕を損傷している。
その事は神宮寺も知っており、おそらく次の査定で若織はランキングも攻略者ランクも降格するだろう。
「そうか……悪りぃな俺の力は自分にはかなり強めの効果を発揮するが、他人を治すときは出力がめっちゃ低下して簡単な傷しか治せなくてな」
「いやいいんだ神宮寺、お前の世話になるつもりなかったから」
「お、おう……」
神宮寺は少し傷ついた。
「ま、まぁ元気そうで安心したよ、私は行くから」
そう言って若織は帰ろうとする。
ふとそのとき、若織の左手首に以前神宮寺があげたシュシュがあった。
「おい待てよ、そのシュシュ使ってんのか?」
「ま、まぁな最近また髪を伸ばしてて、これは料理をするときとか便利で、ありがとな」
そう言って小さく手を振り若織は神宮寺の病室を後にした。




