32話 決着
東條のバルムンクで魔王を斬るとどうなるか、答えは死である。
魔王は自身の死後スキルで命を複製している。
バルムンクで斬られた場合、そのスキルの魔力ごと持っていかれるため本当の死を迎えることになる。
魔王の置かれている現状を整理すると、まず残っている神葬延火による固定ダメージ、そしてバルムンクの即死攻撃。
「やばいな……」
現時点ではこの上なく東條優勢である。
「いくぞ」
「……くるか」
先に仕掛けたのは東條だった。
バルムンクを構え魔王に向け突進する。
「くっ、破壊球!」
『キンッ』
間一髪のところで魔王は破壊球を使い、バルムンクを逸らす。
弾かれた東條はすぐさま体勢を変え魔王に斬りかかる。
「……」
『ズパッ』
「……ぬっ」
回避が遅れた魔王は少し斬られ、右腕から出血した。
「お前、ほんと容赦ないな」
「……ああ、容赦はした事ないな」
「わかった私も剣を抜こう、それで勝負になる」
『スッ』
魔王がそう言うと地面から黒い穴が現れ、中から真っ黒い長剣が出てきた。
「我が愛刀、極聖だ、お前らで言うところSSSレアくらいはある」
極星、影の固有スキルを持ち、適合者は自在に影を操ることができる。
魔王はこの力を使い、剣を影の中へ隠していたのだ。
「関係ない、その剣ごとお前を斬る」
「そうかまぁやってみろ」
東條はそう言って魔王へと斬りかかった。
その時、魔王の足元の影から人ようなものが出てきた。
『ススッ』
「なぁ東條、こいつ知ってるか?」
「と、東條さん……」
「溝口っ!」
魔王が溝口の頭を抱き抱えると、斬りかかろうとした東條は思わず足を止めた。
一体なぜここに溝口がいるのか、東條は咄嗟にそんなことを考えていた。
その隙を魔王は見逃さない。
『ズサッ』
「なっ、なんでだ」
東條の背後から現れた魔王はそのまま東條の腹を一突きした。
しかし、東條の眼前には魔王と溝口の姿がある。
これは一体どういうことだ、東條の思考がまたも不安と恐怖に支配されていく。
「くっはは、やっとまともな攻撃を喰らったな東條よ」
『ススッ』
背後から現れた魔王がそう話すと、眼前の魔王と溝口は姿が消えていった。
「影だよ東條、影」
「何、一体どういう……ゴフッ」
そうして東條は吐血した。
バルムンクを持つ手が震えている。
そもそも何故、自分に攻撃が通っているのか東條にはわからなかった。
本来、東條への攻撃は賢者の仙石で防がれ、当たらないはずである。
しかし魔王の持つ影はあらゆるスキルの防壁をすり抜ける特性があり、魔王の攻撃は東條の結界では防げない。
そして魔王の持つ極星の能力は、実態のある影の生成である。
その影を一度に魔王は20体まで生成可能であり、オリジナルの魔王はその間自由に20体の影を行ききでき、好きな個体をオリジナルとすることも可能。
また擬態能力もあり、溝口はその能力で作ったニセモノである。
これら全てがわからない東條はパニックになっていた。
「ふはは、教えるわけないだろ」
「た、助けてくれ、怖い、なんだこれは」
今まで無敵だった男は迫る敗北の恐怖に打ち負ける。
本来の東條であればこのくらいの攻撃を受けたとしても持っている別のアイテムで自身を治療して反撃する事ができるが、今の東條にはそれができない。
禍々しいオーラを放つ魔王に倒壊しそうな組合本部、何故か消えた溝口、当たらないはずの攻撃が当たる。
様々な心的ストレスにより、東條は今パニック発作を起こしていた。
「なんだその様は、本当にお前がランキング1位の男なのか?笑わせるな」
『ズサッ』
「ぐっ」
そうして魔王は極星で右足を刺した。
「やめてくれ、頼むやめてくれ」
「おいおい、今までお前に命乞いしてきた奴をお前は助けたか?答えはノーだ、そうだろ」
『ズサッ』
『ズサッ』
『ズサッ』
「いやだ、やめて、やめてくれぇぇ」
そうして東條は滅多刺しにされ、2人を囲んでいた神葬延火も静かには鎮火していった。




