17.5話 祭十蔵の攻略者ガイダンス
ーー3年前
「えー、皆さんこんにちは、祭です」
朝、8時半俺たちは都内にある組合所有の研修場のグラウンドにいた。
攻略者講習。
ダンジョン認定試験に合格し晴れて攻略者として認められた者たちは、組合が行っている研修にさんかしなければならない。
認定試験に受かり、7月から攻略者としてデビューする俺も研修に参加していた。
「よろしくお願いします!!」
「お、声が大きいねー、名前はなに?」
「柴崎拓真です!よろしくお願いします!」
「柴崎くんか、いいね、声が大きい人はね、良い攻略者になるよ~」
「ありがとうございます!!」
うわぁ生祭さんだ、テンション上がるなぁ。
「ちょっと祭さん!私も居るんですからね」
「おおすまんね火野くん」
もしかして隣の美女は火野桜子さんか!
攻略者ランキング10位通称、森の守護者。
SSSレアダンジョンアイテム神羅の錫杖の適合者である。
神羅の錫杖、固有スキル持ちのアイテムであり、スキルポイントを消費することで植物や木などを操ることが可能。
これに加えて火野さんは2つのSSレアダンジョンアイテムも所持している。
人気攻略者2人と一緒に研修ができるなんて……今日はついてるぞ。
「えー、まず君達に伝えたい事があります」
『ササッ』
祭さんがそう言うと、どこからともなく黒服の方があるが現れ何か大きな箱を持って来た。
「私がイメージキャラクターを務めております、スポドリの新商品が出ました、今日はそれを皆さんに無料配布します!1人一個までね!」
『おお!』
「そして今日限り、この無料ドリンクと一緒に定期購入してくれるとなんと、20%オフで買えちゃうぞ!3ヶ月限定ですが」
「うおおい!あんた何やってんだ!」
「どうした火野さん、そんなに大きい声出して?」
「なに研修の場で、ダイレクトマーケティング始めてんだよ自由人が」
「いやこれが一番売れるんだよ」
な、なんだろ、この見てはいけないものを見てるような……。
俺の中の祭さん像が少し歪んできている。
てかしれっと3ヶ月限定っていたよね。
ずっとじゃないのかよ。
「さぁて気を取り直して、研修を始めていこうか」
そう言って祭さん強引に空気を通販から研修へと戻した。
いやいや強引すぎるだろ。
「皆んなは、攻略者において必要なものはなにか知ってるか?強さ?賢さ?はたまた体力?さぁどれだと思う?」
「つ、強さでしょうか」
「お!いいね、いい線いってるよ、名前は?」
「せ、仙道です」
「仙道さんね覚えておこう、でもね残念、答えは間違いだ、次!」
「賢さですか?」
「おしい!それも違う、次!」
「体力!!」
「はは、そうだな強さも賢さも違うならあとは体力だよな、でもな不正解だ」
何言ってんだこの人、それじゃあ答えがないじゃないか。
あとなんで俺と仙道さんだけ名前を聞いたんだろう……。
「それじゃあ一体答えはなんなんですか?」
「ふふ、答えは……全部だよ」
『は?』
研修場にいた全員がポカンとした。
いやいや全部とか答えになってないんだが、てかそもそも問題にすらなっていない。
「いいかい、ダンジョン内で例えば強さと賢さは足りていた、でも体力が足りていなかった、さてどうなる?」
「し、失敗ですか?」
「おお正解だ!そう、失敗するんだ、そうして攻略者はダンジョン内で……死ぬんだ」
『……え?』
その言葉を聞いて、さっきまで賑やかだった研修場は殺伐とした静かさに包まれた。
「いいかい、皆んなは今日から攻略者になるんだ、普通に仕事をしていては見られない景色や、財宝、不思議な体験、全部できる!でもな、死も隣合わせなんだ、だから!強くなれ、どれか一つだけじゃない、全部だ全部極めろ、話は以上」
「は、話は以上って何もまだしてないですよ」
「お、柴崎くん、良い質問だね、良い質問をする者は良い攻略者になるよ」
そればっかだなこの人。
でも本当にこれで終わりなのか、早く終わるのはありがたいけど、終わり方がなんか嫌だ。
もっとこう何か希望的なものが欲しい。
「ありがとうございます、でもこれで終わりだなんて、なんかこうこれからの励みになるものとかが欲しいです」
「励みか……よしわかった、今からマラソンをしよう」
「え?」
「ここの研修場のグラウンドをぐるっと100周しよう、2時間以内に走り切れた人は、特別待遇でAランクからスタートにしてあげる」
「ちょっと、祭さんそれはさすがに……」
「火野くん、少し落ち着け、どうだこれは立派なチャンスだぞ、やるだろ皆?」
ここの研修場のグラウンドは一周約300メートルほどで大きくはない。
でも30キロを2時間以内か……できなくはない、ただ陸上未経験者にはキツイな。
俺は高校、大学時代陸上で長距離をやっていた。
おそらくできる、これはチャンスだ。
「はい!やります!やらせてください!」
「お、仙道くん、やっぱりいいね君、ほらほらどうした他の皆はやらないのー?」
「やります!」
「やってやるよ!」
そうして30キロマラソンが急遽始まった。
「おめでとう、合格だ」
「はぁはぁ、ありがとうございます」
「まさか、3人合格者が出るとはね」
この研修の参加者は計40人、残ったのは俺と仙道さん、そして20歳の屋敷くんだった。
「よし君たち、パーティを組みなさい」
『え?』
そうして俺の攻略者人生が始まった。




