112.5話 柴崎拓真と攻略者
ーー3年前
「柴崎さん、いやぁ今日も頑張りますねぇ」
「まぁね、俺には仕事くらいしか頑張る事ないからね」
そう言って後輩は帰り支度を整えてそそくさと帰っていった。
時刻は19時、軽微な残業をしている人達が帰るこの時間、俺はエナドリを片手にさらなる残業に臨もうとしていた。
地方の小さな交通会社の事務職、勤めてもう6、7年になる。
毎日仕事して帰って寝ての繰り返し。
退屈とかを感じなくはないが、すごく感じるわけでもなく、現状を変える気はない。
「あー、今日も俺1人か、まぁテレビでもつけるか」
『ポチ』
事務所には俺1人しかいないため、事務所にあるテレビを付けた。
付けるとダンジョンについての番組がやっていた。
『さてはじまりました、毎週ダンジョン、本日ご紹介するのは岩手で新しく発見されたダンジョンです、未攻略ダンジョンに挑むため、連日数多くの攻略者がここに訪れています』
ダンジョン、それは今から20年ほど前に世界各地にできた謎の遺跡。
中には不思議な生態系や、金品財宝それと数多の魔導書と呼ばれる魔法が封じ込められた本がある。
魔導書は売れば数百万から場合によっては億をも超えると聞いた。
正直別世界の話だが、ダンジョン攻略か、やってみたいな。
そんなことをふいに思った。
まぁでもなるのは大変だよな、きっと。
『ダンジョン攻略者は誰でもなれる!というかなりたいやつがいつでもなれる、それがダンジョン攻略者だ!』
『おっといきなりどうしました、特別ゲストの祭さん』
『いや、全国ネットだしとりあえず攻略者の募集しようかなと思って』
びっくりした、心の声を聞かれていたのかと思ったぞ。
祭十蔵、日本の攻略者の第一人者にして、現攻略者ランキング2位のレジェンド。
数多くのスポンサーを抱えており、収入面でも国内トップクラスの攻略者だ。
なりたいやつがなれるか、まぁそんなん若い奴限定だよな。
20代後半の俺には……。
『私が攻略者を目指したのは30歳の時です、その時はまだダンジョンに挑む者は少数で、しかも国からの援助も民間企業からの援助もなし!そんなんでも私はね、挑んだんですよ、だって行きたいから』
『ちょ、ちょっと祭さん?』
『だからそのテレビの前でやりたいけど、俺なんてなれないと思ってる30代男子!来いよダンジョンに』
うわっ、なんだこれ。
なんか身体の奥から熱のようなものが湧いてくるこの感じ。
やってみるかダンジョン攻略者。
そうして俺はダンジョン攻略者を目指した。




